万博会場“夢洲”のいま

 開催を1年後に控えた大阪・関西万博会場、夢洲(ゆめしま)。現在、1周約2キロの万博のシンボル「リング」こそ8割がた完成しているというが、それ以外の周辺一帯はほとんど更地同然で、完成予想図にはほど遠い状態というほかないのである。

 本来ならすでに施設の建設が始まっているはずだが、資材の高騰や人手不足から業者との契約が難航。参加国が自前で建設するタイプのパビリオンのうち、着工しているのは4月8日時点で約50カ国中わずか12カ国、約20カ国はまだ業者すら決まっていない。会場中心部にある森の左右に仮設住宅のような建物が並ぶだけで、大半は荒れ地のようなありさまだ。

 完成時には海水で満たされる予定のリング内部の南側部分のほとんどはまだ陸地のままだが、大阪港湾局によると、現在は表層部分を固める作業中で、5月までには造成工事が終わる予定だという。

“危機的な遅れ”に関係者も焦り

 現在の夢洲の進捗は、一時は開催危機に直面した愛知万博(2005年)と比べてもかなり遅れていると、建築関係者は言う。

「愛知万博は自然保護の観点から会場が変更されたにもかかわらず、開催1年前には予定通り造成工事をほぼ終え、展示工事を始めている民間参加社もありました。大阪はかなり遅れているといってもいい」

 建築エコノミストの森山高至氏によると、もはや危機的な遅れだという。

「海外の独自パビリオンは自国で設計・デザインしています。ところが、その設計は地盤がしっかりしている土地が前提なので、埋立地には適していなかった。基礎工事のやり直しなどが必要となり、予算を大幅にオーバーしてしまいました。それで現時点でも工事会社との契約がまとまっていないんです。関係者は今、開催に間に合うのかどうか、本気でビビり始めています」

 開催まで残すところ1年。果たして完成予想図通りの“夢洲”を見ることはかなうのだろうか。

撮影・福田正紀

「週刊新潮」2024年4月18日号 掲載