宛名が空欄の領収書にハンコを押して処理か

 自民党派閥の裏金問題処理に追われる総理を尻目に、茂木敏充幹事長(68)は次の総裁選に出馬せんと野望を滾(たぎ)らせている。だがそんな茂木氏の政治資金管理団体の少額領収書を精査すると、政治資金処理に関するある疑惑が明らかに。【前後編の後編】

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 前編では「ランチにしか見えない支出」が3年間で400件以上もある件について報じた。だがしかし、問題はそれだけにとどまらない。3年間総計410枚の少額領収書のうち、実に155枚の宛名が各店舗での手書きではなく、「茂木敏充政策研究会」という同一のハンコを押されたものなのだ。

 社会部デスクが言う。

「2022年11月、週刊文春が寺田稔元総務相(66)に関して、政党支部と後援会にまつわる身内への資金の還流と脱税疑惑を報じました。その報道の一環で“領収書偽造疑惑”も報じられ、最終的に寺田氏は辞任に追い込まれました。茂木氏側が各店舗から宛名が空欄のまま領収書を得て、それにハンコを押して処理していたのなら、同様の疑惑となりかねません」

各店舗が証言

 実際に茂木氏の資金管理団体「茂木敏充政策研究会」のハンコが押されている領収書の発行元である複数の都内飲食店を訪ねた。ある喫茶店の従業員に聞くと、

「茂木さんは、付き人を2、3人連れて来られます。頼むメニューは『カレーライス』や『ドライカレー』など。うちのカレーはレトルトで、メニューの中では一番安い。庶民的なひとですよ」

 と言う。そこで、件の領収書のコピーを見せると、

「このハンコは、うちで押したものではない。うちが宛名を空欄で渡した領収書に、後で誰かがハンコを押したんでしょう。昼時なんてバタバタしているので、普段から宛名は空欄で渡していますから」

 そう証言する。また、港区内のあるカレーチェーン店の店長も、

「宛名が空欄の領収書をうちがお渡しした後に、お客様がハンコを押されている」

 と言えば、同区内の別のカレー店の店長も次のように話を裏付ける。

「われわれは基本的に、領収書は手書きで書きます。店側でお客様のハンコを用意して、こういうふうに押すはずがない。それに、これを見ると但し書きの『飲食代』という文字もハンコで押していますよね」

 このように各店舗が、宛名等に関して自店舗で記入したものではないと口をそろえるのである。

「政治資金規正法違反の虚偽記載に当たる恐れ」

 そこで一連の疑惑について、茂木事務所に尋ねたが、

「ご指摘の領収書の宛名について政治資金規正法では、『支出の目的』『金額』及び『年月日』の3事項を記載した『領収書その他の支出を証する書面』を徴収する義務が課されていると承知しています。いずれにしても、政治資金規正法に則り、適正に対応をしています」

 しかし、政治資金問題に詳しい上脇博之神戸学院大学教授はまず、09年から22年の間で、「茂木敏充政策研究会」から政治団体「茂木敏充後援会総連合会」に総額4億4590万円の資金が移動している問題について、

「茂木氏の事務所は明細を明らかにできない問題のある支出について、使途公開基準の緩い後援会で処理するために、資金管理団体から多額の資金を移していた可能性があります」

 と指摘。そして、領収書の“宛名問題”についても、

「総務省の『国会議員関係政治団体の収支報告の手引』には、領収書の宛名に“国会議員関係政治団体の正式名称を発行者において記載してもらうよう助言することが適当”だと記されている。宛名を自分たちで記載しているならば、総務省の指針に抵触していると言わざるを得ません」

 さらに、

「自分たちで領収書の宛名を入れてもいいのならば、プライベートでの食事代を政治団体の経費として付け替えることも簡単にできますよね。私的に食事をした場合、本来支払い義務があるのは本人のはず。それなのに政治団体で支払いをしたと書いていた場合は、政治資金規正法違反の虚偽記載に当たる恐れが出てきます」

「麻生氏は最近、上川陽子外相推し」

 茂木氏は党ナンバー2の幹事長の立場にありながら、先日開催された政治倫理審査会の出席者に関する調整を怠って、岸田文雄総理(66)の怒りを買ったといわれている。それでも、茂木氏が平静を装えるのは、

「自民党最大の実力者、麻生氏を後ろ盾としているからでしょう。もっとも、麻生氏は最近、上川陽子外相(71)推しにシフトしているともいわれる。茂木氏が自身の政治資金に関する問題にうまくケリをつけることが、ポスト岸田レース出馬の最低条件になるでしょう」(政治部デスク)

 麻生副総裁にすがって、次の総裁選への出馬を周囲に表明し、公然と岸田総理に反旗を翻した茂木氏。その“政治とカネ”の問題は彼の抱える爆弾となるか――。前編では「ランチにしか見えない支出」が3年間で400件以上もある件について報じている。

「週刊新潮」2024年3月21日号 掲載