今年もプロ野球のシーズンが到来した。巨人の開幕戦では、阿部慎之助・新監督の初陣を観戦する長嶋茂雄・終身名誉監督(88)の姿が場内ビジョンに映し出されたが、実はミスター、昨春、人知れず財団法人を設立していたという。その狙いは……。
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長嶋氏の現在の“住まい”が、港区内の大学病院であるのは知られたところ。
2022年9月、自宅で転倒した際に脳出血を起こし、救急車で搬送された。以来1年半入院したままであるが、その間、東京ドームのイベントに現れたり、時折、メディアのインタビューに答えたりしているところから見ても、病状は深刻というわけではなさそうだ。
外に出ることは結構ある
長嶋家の関係者によれば、
「田園調布の自宅に戻ることは可能ですが、戻っても一人暮らしですから、むしろ24時間看護師がいる病院の方が安心。実際、食事に行ったり、知り合いと会ったりなど、外に出ることは結構ありますよ」
同氏の動向をウォッチし続ける、元スポーツニッポン記者でスポーツジャーナリストの吉見健明氏も言う。
「病院には毎朝、運転手が訪れて夕方近くまで滞在し、お世話をしています。土日には泊まることもあるようですね。20年前に脳梗塞で倒れた時から担当している理学療法士も、週に1、2度は訪れていますから、院内でリハビリもきちんと行っているんでしょう」
件の財団が設立されたのは、そんな入院生活の最中である昨年5月16日のことだった。
元番記者も…
財団の名称はそのものずばり、「長嶋茂雄一般財団法人」という。
登記簿を見ると、所在地は大田区田園調布の自宅、設立の目的は「野球を主体に広くスポーツ全般への競技の普及、振興」うんぬんとあり、そのために、競技力向上や、健康増進を図ることなどを目的とした事業を行うと記されている。
代表理事はミスターご本人で、他に理事3人、評議員3人が名を連ねているが、その中にK氏という人物がいる。
前出・吉見氏によれば、
「元報知新聞の長嶋番で、最も信頼されている人物です。退職後も、長嶋さん周りの仕事をしてきた」
というから、ミスターにとって重要な財団であることが分かるのだ。
登記簿通りならミスターの名を冠した野球イベントなどを開催すると推測されるが、現在のところ、そうした事業を行った形跡はない。
一茂氏が父の記念品を勝手に売却したことも
なぜ財団が設立されたのか。K氏に尋ねると、
「(長嶋氏の個人事務所である)オフィスエヌに聞いてください」
と言うのみ。
「財団法人とは、資金や物の活用を目的とした法人です」
とは税理士の浦野広明氏である。
「長嶋さんは、金銭はもちろんトロフィーなど価値あるものをたくさん保有している。それを財団に拠出することで、自身の財産を有効に管理、活用し、将来にわたって散逸を防ぐという目的もあるのでは」(同)
実際、過去には長男の一茂氏が父の記念品を勝手に売却したなんて苦い出来事もある。
オフィスエヌにも設立の趣旨を聞いてみたが、回答はなかった。
浦野氏は、財団の設立にはまた別のメリットもあると言う。
「こちらに拠出や遺贈をすれば、その分、結果として相続の対象となる財産が減り、相続税対策にもなり得ます」
この2月には米寿を迎えたミスター。「終活」も抜かりなしといったところか。
「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載