高橋礼で始まり高橋礼で終わった

 前回の今コラムで「今週はヤクルトと2試合、東京ドームで広島3連戦、5チームと一巡する。借金を返して貯金といってほしい」と記したが、まさにこの通りになった。

 7日のDeNA戦から6連勝、貯金「4」で首位・中日にゲーム差なしの2位に浮上した。投手陣、特に先発陣の頑張りによるものだった。これに野手陣が応えた。振り返ると高橋礼で始まり高橋礼で終わった6連勝だった。

 アンダースローから低め低めに丁寧に投げ込む。緩急をつける。ストレートと変化球の球速差が40キロもある。そりゃ、打者は戸惑う。

 しかも制球力がいい。ストライク先行で打者を早めに追い込む。14日の広島戦では7回を被安打2で1失点、無四球だった。

阿部監督の指令が浸透

 昨シーズン、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎投手が12勝2敗と大活躍して日本一に貢献した。

 大竹は現役ドラフト、高橋はトレードで加入した。そのいきさつは違うけど、高橋には同じような雰囲気を感じる。しばらくは7回を1、2失点でまとめる投球をしてくれるのではないか。貴重な戦力となった。

 巨人のここまでの9勝のうち無失点勝利は5度、チーム防御率は中日に次ぐ2位の1.88、先発が同1.78だ。これに救援陣が同2.06で昨年が3.81だったから大きな進歩だ。

 阿部慎之助監督は「困ったらど真ん中に投げろ」と指令を出してきたが、これが徐々に浸透しているのか。

 与四球数31はリーグ2番目に少ない。昨年は四球から崩れていく試合を何度見てきたことか。これなら安定した試合が望める。

いまはまだ1軍半の選手

 打線はどうやら1番・萩尾匡也、2番・佐々木俊輔、3番・門脇誠で当分の間はこの起用を続けていくようだ。

 門脇は「仮の3番」だ。バントもすれば、エンドランも仕掛ける。2番兼任だ。いまのところはこの1番〜3番が機能して、チームもいいムードできている。

 だが、私の目から見ればいまの萩尾と佐々木は1軍半の選手だ。萩尾にしても年間2割7、8分、12本塁打くらい打ってこそ、1番に定着する。もちろん、四球も取らなければならない。

 二人とも頑張ってはいるが、一シーズン通してコンビを組むことは難しいだろう。いずれうまく機能しなくなることが考えられる。

 その時、阿部監督がどのような手を打つのか。まあ、柔軟なマネジメントをすると思うのだが。

打線の強化となれば…

 いまはとにかく投手陣の踏ん張りで好位置に浮上してきた。それだけに打線の編成に目が行ってしまう。

 打線の強化となれば、捕手はやはり大城卓三だろう。阿部監督は13、14日の広島戦で大城をスタメンから外し、岸田行倫、小林誠司を起用した。

 12日の広島初戦で戸郷翔征とコンビを組んだ際に戸郷が5回を9奪三振ながら、被安打8で4失点だった。

 この時のリードに不満があったのか。でも大竹のリードが悪かったとは思わない。ピッチングするのは投手だ。

 戸郷、いつものような躍動感がなく、球が高め高めに浮いていた。それまで投手陣が無失点か1失点でしのいだ試合でなければ勝てなかった。打撃陣の奮起もあって逆転勝ちしたが、これを問題としたのだろう。

 だが、大城が打線にいる、いないでは厚みが違う。岸田、小林ではいかにも弱い。特に小林がたまに打てば大きなニュースになる。これはどうか。

 小林は今後、菅野智之の相棒として起用されていくだろうが、打撃面を考えれば正捕手はやはり大城だと思う。打力が違う。

大城に言いたいこと

 大城はもっとオーソドックスなリードをした方がいい。投球の基本は打者を早めに追い込んでボール球を振らせて、勝負する。カウントを内角で取るのはダメだ。

 試合前に、どんな球だったらストライクを取っていけるか、投手と事前に相談してもいい。外角低めを忘れてはならないが。

 もう一つ付け加えるなら、何度も言っていることだがもっと低くミットを構える。岸田と比べるとよく分かる。高い。もっともっと工夫してほしい。

 4番が活躍するチームは強い。岡本和真が好調だ。いまのところ三冠だ。打席に立つ姿を見ると打てそうな雰囲気を出している。

 相手投手は一発を警戒して逃げる。くさい球、釣り球を投げる。でも岡本はボール球を振らずに甘い球をじっくりと待っている。

 調子を崩すとボール球を追いかけることが多くなるけど、これさえなければ心配は不要だと思う。

 今年の岡本、相当やるとみている。

今週は6連戦

 さて、セ・リーグの順位だが中日が首位に立っている。もともと投手陣はいい。これまでは打てなさ過ぎたが中田翔の加入が打線のいい刺激になっている。抑えには絶対の守護神、ライデル・マルティネスがいる。投打が好循環している。

 昨年の覇者・阪神は4位だが、いまは投打ともにエンジンがかかっていない。いずれ出てくるだろう。

 ヤクルトは主砲・村上宗隆の不振が大きかった。打つべき人が打てば勝てる。14日のDeNA戦では2番に入って1号本塁打を放った。気分転換だろう。試合も勝った。

 DeNAは先発陣が弱いと思っていたが、奮闘している。広島は外国人選手の離脱があった。チーム力も落ちている。

 巨人、今週は阪神、広島とビジターで6連戦、来週のいまごろ「5割に戻った」なんて話をしていなければいいが。(成績などは15日現在)

柴田 勲(しばた・いさお) 1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部