“ミズハラが出てきた!”

 このひと月余り、日米スポーツ界の話題を独占し続ける「水原一平」事件。その発覚後、一切表に出ていなかった容疑者の近影を独占で捉えたのが、彼がうつろな表情で振り向いた一枚である。各国メディアがこぞって掲載することとなったスクープショットを撮影した女性パパラッチが、“奇跡の一枚”の撮影秘話を語った。【前後編の後編】

 ***

 前編では、スクープ写真を撮影したジゼル・グテーレス氏が、水原一平容疑者(39)の弁護士の“陽動作戦”を見破り、裏口に張り込んだ際の様子を紹介した。

 なぜ彼女だけが、陽動作戦に引っかからなかったのか。そのあたりは前編に譲るとして、ともあれ連邦裁判所の関連施設の裏口から出た水原容疑者をキャッチすることにジゼル氏は成功。

 水原容疑者の姿を確認したジゼル氏は、すぐさま「車を追おう」と判断。いつもコンビを組む相棒、ガブリエル・ヌーニェス氏に連絡したという。

「メインエントランスにいたら、興奮したジゼルから連絡が来たんだ」

 と、ガブリエル氏が振り返る。

「“ミズハラが出てきた! 車で移動しようとしている”と。オレは“本当か! 見間違いじゃないか”って確認したら、彼女は“絶対にそうだ”と言う。で、オレらは急いで車に乗り込み、彼を追いかけた。その間、15分ほど。彼らの車はビバリーヒルズにあるオフィスビルのような建物の駐車場に入っていったよ」

「人生で最も急いでいる瞬間に見えた」

 そこで車から降りてきたのは……紛うかたなき水原一平容疑者本人であった。

 ジゼル氏が言うには、

「オフィスビルに入るところでシャッターを切りました。撮れたのは2枚。1枚は運転手や建物のドアマンと一緒に、ミズハラの頭だけが写り込んでいる写真。もう1枚がこちらを振り向いている写真です。車の中から撮ったので、彼はこちらの存在には気付いていなかったと思いますね」

 下車した際の水原容疑者からは、極めて不安そうな様子がうかがわれたという。

「キョロキョロと左右を見回しながら、ものすごい急ぎ足で中へ入っていきました。写真ではミズハラがカメラの方を向いていますが、私が声をかけたわけではない。本当に落ち着かず、動揺して振り向いて……。そうですね、まるで彼の状況は、人生で最も急いでいる瞬間であるかのように見えたんです」

 撮影の後、写真を確認した際には、

「ヤバい!って感じでした。あれだけたくさんのメディアが集まっていたのに、ミズハラを撮れたのは私たちだけです。売り上げはまだ出ていませんが、こうやって取材も来ますし、フォトグラファーが何より欲しているのは独占写真ですから……。本当に素晴らしい瞬間でした。あの時のことはこれからずっと私の記憶に残ると思います」

「パパラッチ経験をもとに作戦を考えています」

 その水原容疑者は、この5月9日にも罪状認否のため、再び連邦裁判所に出廷するという。

 ジゼル氏は言う。

「その時? もちろん行きますよ。次回もいい写真を撮るべく、これまでのパパラッチ経験をもとに、作戦を考えています。何をするか? それは内緒。でも、きっと皆さんを驚かせるような写真が撮れると思いますよ」

 当面、水原容疑者はアメリカの捜査当局の厳しい追及を受けるだけではなく、現地の腕利きジャーナリストたちからマークされ続けることになるのも間違いなさそうだ。

 前編では、ジゼル氏は水原容疑者サイドの“陽動作戦”を見破り、裏口に張り込んだ際の緊迫した瞬間について報じている。

「週刊新潮」2024年5月2・9日号 掲載