去年の陸上世界選手権女子やり投げで金メダルを獲得しパリ五輪代表に内定した北口榛花(26)が今月5日、今季2戦目にあたる茨城県での大会で優勝を果たした。初戦は中国で行われたダイヤモンドリーグで、やはり優勝。今や押しも押されもせぬ金メダル候補である。

 そんな北口が800万円もらえそうな“新制度”が物議を醸している。

「先ごろWA(世界陸連)が、パリ五輪から金メダル獲得選手に賞金5万ドル(約780万円)を贈ると発表したのです」

 とスポーツ紙デスク。

「国際競技団体が五輪に賞金を設定するのは史上初。陸上種目は48あるため、男女合わせて総額は約500万ドルで、財源はIOCからWAに支給される分配金だそうです」

「五輪の権威を著しく失墜させる恐れが」

 各国が選手に報奨金を出すことは珍しくない。日本でも、日本オリンピック委員会(JOC)が金メダリストに500万円を贈っている。シンガポールはその額1億円を超えるのだとか。

 各国の競技団体が支給することもある。たとえば日本陸連は、東京五輪の金メダリストに2000万円を贈ることになっていた。もっとも、財政上の理由から、パリ大会は300万円に減額されてしまったが。他に、所属企業やスポンサーがボーナスを出すこともある。

 今回のWAの決定は、これらの賞金とどう違うのか。

「五輪は国家の対抗戦ですから、国ごとに賞金を出すことに問題はない。しかし、選手に一律に賞金を出すWAのやり方は、プライスレスのはずのメダルを値踏みするようなもので、五輪の権威を著しく失墜させる恐れがあります」

 実際、WAの決定に対し、夏季五輪国際競技連盟連合が反対する声明を発表。国際体操連盟など各競技団体もWAには追随しない姿勢を明らかにした。

なぜWAは賞金を出すことに?

 なぜWAは賞金を出すことにしたのか。

「ボストンマラソンや東京マラソン、あるいはダイヤモンドリーグなど陸上の主要国際大会では賞金が出るのが当たり前になりました。だから五輪も選手のモチベーションを上げるために必要だというのですが……」

 しかし、いくら他大会の賞金が高額になっても、選手たちの最大目標が五輪であることに変わりはない。

「プロスポーツとして確立していて、トッププロが五輪に出ないこともあるゴルフやテニス、あるいは逆に超マイナーな競技が注目度アップを狙って策定するなら分かるんですけどね」

 もっとも、金獲得が現実的な日本人の陸上選手は北口くらいなのだが。

「週刊新潮」2024年5月16日号 掲載