ウンチクを身につけることで日頃の装いや服選びはもっと楽しくなるはずだ。カジュアルな服は、着た時の雰囲気がある程度サマになっていればそれで十分だが、トラディショナルな服は、正しい知識をもって正しく着ることが大前提。ボタンダウンシャツに代表される「シャツ」もまた、ジャケットや様々なアウターに差し込むインナーとしても、それ一枚で主役としても。さらには、タイドアップでも、ノータイでも。ディテールやパターンの違いによる奥深い世界が広がっているのである。

3万3000円/インディビジュアライズドシャツ(ユーソニアングッズストアTEL03-5410-1776)

1.袖

①カフ ②ガントレットボタン ③剣ボロ

スムーズな着脱を助ける機能ディテールが施されるとともに、着る者が自身のファッション感や遊び心といったものを表現できる場所が袖。よく見れば、剣ボロのデザインも様々だ。

シングル

折り返しのない一重仕立てのカフス。カフスに縫い留められたボタンを使って開け閉めを行う。

ダブル

カフスが折り返って二重になっているタイプ。カフリンクスとともに魅せるドレッシーな仕様。

2.襟の派生

薄着になる春夏シーズンにおいては、これらのシャツの襟型こそがスタイリングの方向性を指し示すコミュニケーションツールとなってくれるのだ。

ボタンダウン

言わずと知れたブルックス ブラザーズ発祥の仕様。ポロ競技から着想された。

クレリック

身頃に使われた生地色とは異なり、襟に白い生地を配すのがクレリックデザイン。

オープンカラー

前身頃の合わせの上部が折り返って開いた状態に。夏場に着るシャツに多い意匠。

スタンドカラー

その名のとおり、立ち襟の総称。バンド(帯状)カラーもスタンドカラーの1種。

3.スリット

特に自身の体にフィットするサイズのシャツは、着用時にサイドの縫い目に負荷がかかる。スリットで負担を軽減。

4.ガゼット

裾の両サイド、フロントとバックの合わせ部分の補強布。ワークシャツでは、ここにおいてミミがアピール。

5.襟の形状

見た目の雰囲気を大きく左右する襟型こそが、シャツの顔と言える。合わせるタイやスタイル全体のムードを考慮しながら、いくつかの種類を保有しておきたい。

ラウンド

襟の先端部分を尖らせずに、丸みを持たせた襟型。柔らかい雰囲気を醸し出せるのが特長で、オーダーシャツでも人気あり。

ウイング

フォーマルシャツに用いられる襟型で、襟先だけを前に小さく折り返した立ち襟のこと。フランス語ではコルカッセと呼称。

ホリゾンタル

「水平の」という意味を持つホリゾンタルが指し示すとおり、両襟の開きがほぼ水平になっている。ノータイでも品格あり。

ワイド

両方の襟によって生まれる角度が広いものを言う。その開きの角度は、およそ100〜140度。ウインザーカラーとも呼ぶ。

セミワイド

ご覧のとおり、襟の開きの角度がレギュラーとワイドの中間にある襟型。90度を少し超えて100度くらいまでの角度。

レギュラー

襟先までの長さはおよそ6.5〜7.5cm。開きは75〜90度。クセがない見栄えで、様々なシャツに標準的に用いられる襟型。

6.柄

英国の東インド会社が〝マドラス地方の薄手の綿織物にタータンチェックを投下〟して生まれたマドラスチェックなど、アメトラな着こなしに欠かせない柄をピック。

キャンディストライプ

ボタンダウンシャツに使われるオックスフォード地でお馴染み。赤、黄、緑、青など、キャンディ調の明るい色が映える。

ロンドンストライプ

トラッドスタイルには欠かせない定番ストライプのひとつ。地と色の幅が等間隔になっていて、3〜5㎜くらいのもの。

ボールドストライプ

ボールドは、太いという意味。本来は1.5㎝幅以上の極太ストライプを指すが、現在では太めのストライプを指して言う。

ギンガムチェック

主に白を基調にして青や赤など一色のみを使った格子が、縦横とも同じ太さで小ぶりに配される。フレンチシックな印象も。

タッターソール

白やベージュなどの明るい地色に2色(多くは赤と青)の細い縞が交差したチェック柄。爽やかで小粋なムードがウリだ。

マドラスチェック

1920年代にブルックスブラザーズがこの柄のシャツやジャケットを作って大ヒット。以来、優等生の夏の装いとして定着。

7.ダブルカフス

袖のなかでも袖口=カフスは周囲からの視線が集まりやすい場所だ。すなわち、ここが洒落者の楽しみどころと言えよう。

カフリンクス

ダブルカフスを留める小物。装飾要素の乏しい紳士の装いにおいて格別な存在。

8.前立ての形状

前立てとは、左右の身頃の合わせ部分を指す。表前立て=プラケットフロント、裏前立て=フレンチフロント、比翼=フライフロント、被り=プルオーバーに大別される。

裏前立て

シャツの前端を外側ではなく内側に折り込んで、すっきりとドレッシーな印象に。

表前立て

ボタンダウンシャツと言えば、こちら。前端を折り返した帯状のデザインが特徴。

プルオーバー

ボタンが裾まであしらわれない、被りのデザイン。スモックなどの作業着に多い。

比翼

前立てを二重にしてボタンを見えなくしたデザイン。フォーマルなシャツに多い。

9.台襟

襟を支える土台になり、シャキッとした襟のフォルムの基礎部分になってくれる。襟と身頃の間に帯状で施される。

10.背面

シャツの背面には機能的な工夫が盛り込まれる。ロッカールームで便利なループや着心地をよくするためのプリーツだ。

ボックスプリーツ

ボタンダウンシャツでお馴染み。背中の中央部分にボックス型のプリーツが走る。

サイドプリーツ

腕の動きに合わせて可動域を確保するプリーツがバックヨーク下部の両サイドに。

ハンガーループ

フックに吊るすためのループがバックヨークの下部に。アイビーなディテールだ。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年5月号 Vol.204」)

著者:2nd 編集部