円安、物価高で遠出せずに過ごしている人も少なくないゴールデンウイーク。まとまった時間にこそ、投資や資産運用についての本を読んで過ごしてみてはどうだろうか。2024年に発売された注目の投資本を毎日紹介する(文中価格は紙版、税込み)。

2006年(2005年度分)から廃止された「長者番付」は、高額納税者の名簿を公示するもので、高額納税者番付とも呼ばれた。その最後の長者番付で日本人1位となったのが、本書の著者で、当時、投資顧問会社の部長であった清原達郎氏だ。報道によれば、所得税額は36億9200万円で、年収は推定で100億円とされた。

番付のトップ10位には、ユニクロ(ファーストリテイリング <9983> )の柳井正氏(3位)、ディーエイチシーの吉田嘉明氏(6位)、アイフル <8515> の福田吉孝氏(8位)ら経営者(当時)がランクインする中で、清原氏は”サラリーマン”でありながら初めて1位になったことで話題となった。

■清原氏は今後の日本株がどうなると見ているのか?

『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(清原達郎著、講談社、1980円)

ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー証券などを経て1998年にタワー投資顧問に移った清原氏は、当時、同社の運用部長。運用するヘッジファンド「タワーK1ファンド」の戦略は割安小型株のロングとショート(信用取引、空売り)というもの。既に2023年に運用を終了、清原氏も退社しているが、同ファンドの最終的なパフォーマンスは90倍を超えたという。

本書では、氏が現役時代にどのような考えで投資したか、ITバブルやリーマンショック、アベノミクス、コロナショックなどの局面をどのような戦略で乗り切ったのかなどが振り返られている。長年にわたって活躍し続け、浮沈はあったものの、最終的にはしっかりと大きな利益を出した氏の、おかしいものをおかしいと忖度(そんたく)なくズバリ言い切るその姿勢には、説得力はもとより爽快さすら覚える読者も少なくないだろう。

そんな清原氏は、個人投資家に対しては、大型株のETF、割安な小型株への投資を勧める。本書でも「大型株は自分でリサーチして得るものは少ない」として「ETFに任せるのが合理的」と述べている。小型株については「大多数の投資家の判断に強いバイアスがかかっていれば投資のチャンス」とするが、割高な銘柄も少なくないことへの注意も促している。

長年、日本株市場を見てきた清原氏は、今後の日本株について、10年ほどを見通した上で、日本経済の実質GDP成長率はよくてゼロ%、また人口が減り続けて超高齢社会となるものの、外国人労働者は増えずに労働人口も減り続けると厳しい見立てを披露している。

さらに、昨今、好調な相場についても、急速に上がったきたことから、下げる可能性があることを示唆する。ただし、相場が下がったからといってパニックになって売ることはよくないと話し、買った銘柄が下がったら基本的に、もっと買うか、そのままにしておくことを勧めている。

過去数十年の日本株をめぐる状況を振り返り、さらにはこれからの投資方針を考える上で、株式投資の初心者にとっても、読んでおきたい、参考になる一冊といえる。

文/編集・dメニューマネー編集部