放送作家の鈴木おさむさん

 鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、鈴木さんが木村拓哉さんへ、このコラムで番組への出演オファーをする。

 * * *

木村拓哉様

 お元気してますでしょうか? 最後にお会いしてから6年近く経ちますでしょうか?

 ご存じと思いますが、3月31日で32年やってきた放送作家を辞めることにしました。

 同学年のあなたと初めて出会ったのは、22歳のころ。東京FMのスタジオでした。

 僕は同じ年の男性アイドルと仕事するのにナメられてはいけないと思い、最初に会ったときに、「俺、『夢がMORIMORI』、嫌いなんだよね」と超イタい発言したら、あなたは、笑いながら、「俺も」と言って右手を差し出してくれました。あの握手から全てが始まりました。

 東京FMのラジオ番組「木村拓哉のWhat's UP SMAP!」の作家として、かなりやんちゃな番組を作りました。自分と同世代の男性も振り向かせてやろうと必死になりすぎて、そのイキすぎた内容にマネージャーさんにブチギレされたこともありました。だけど、そういうときも、常に笑ってくれてました。

 あのラジオをきっかけに、「SMAP×SMAP」に僕も参加させてもらい、グループともお仕事をさせてもらうことになりました。

 スマスマのコントも、女性だけでなく大人の男性も振り向かせたいと、一緒に話して沢山のものを一緒に作りました。

 同じ年だったので、木村拓哉が同じ年の一般の方々も含めた色んな人と話す番組「同学年」も作りましたが、あの企画を話したときに、「同学年」という「学年にこだわるセンス」に、共感と共に、やっぱり、すげーな!と感じるしかなかった。

 22歳で出会って、20年以上本当に一緒に色んな物作りをさせてもらいました。グループ解散後も、木村拓哉らしく生きていくその生き様、勝手に意識しています。

 そんな、あなたに、今日、一つ、公開オファーをさせて頂きます。

 僕が東京FMで毎週、金曜日にやっている東京FMのラジオ「JUMP UP MELODIES」という番組があります。お昼1時から3時まで毎週生放送をしています。

 この番組は放送作家を辞めた4月以降も素人のおじさんとして、続けさせて頂くのですが、3月は、僕がここまで放送作家をやってきて、ゆかりの深い方達に登場して頂くことになっています。

 今日は3月1日。その一発目は、女優の水野美紀さんと放送作家の先輩の高須光聖さん。

 来週はタカアンドトシと、僕が初めてこの業界に入ったときに仕事をした槇原敬之さんが来てくれます。

 僕が放送作家として出演する最後の放送は3月29日になります。1時台は、色々とお仕事をさせていただいたあの芸人さんが来てくれます。後半の2時台は、勝手に空けてありまして。

 最初からここは「木村拓哉」にオファーをしたいなと思っていたのですが、4月から始まるドラマを撮影中だろうし、絶対無理だろうと思っています。

 だけど、絶対無理と思ってるなかで、ただオファーしないのも、ちょっと違うんじゃないかと思って、今、ここで公開オファーをします。

 僕がマネージャーだったらいきなりこんなところに書かれて「ふざけるな!」とキレます。それが普通です。

 ですが、あなたとお仕事をしてきた20年以上。常に1%の奇跡を信じて仕事をしてきました。だから、最後の最後に、普通だったらありえませんが1%の奇跡を信じて、ここに書いてみようと。

 会って直接感謝を伝えたいなと思っています。そんなんだったら、自分から現場に挨拶に来いよと思うのも百も承知ですが。ですが、ここまで来たら、自分らしく、エンターテイメントにするべきかなと。

 改めて言いますが、かなり掟破りだし、ドラマもやってるだろうし、絶対無理だと思っています。

 だけど、こうやって書くことから、ダメでも何か物語が生まれるんじゃないかと。

 3月31日までは放送作家らしく生きたいなと。無礼を承知で、このエッセイに書いています。お許しください。

 でも。やっぱり。

「ライフ イズ エンターテイメント」かなと。

 残り1カ月。放送作家の自分らしく振り切って生きようと思います。

 2024年 3月1日 鈴木おさむ

■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。著書も多数あり、パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)、2月に舞台上演する「芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜」(太田出版)など。漫画原作では、「ティラノ部長」、「お化けと風鈴」、「インフル怨サー。〜顔を焼かれた私が復讐を誓った日〜」、「愛の掛け惨」など。32年間続けた放送作家を3月31日で辞めることを発表。初めてのビジネス書「仕事の辞め方」が好評発売中

2022年11月6日に岐阜市で開かれた「ぎふ信長まつり」の信長公騎馬武者行列に参加し、織田信長に扮したときの木村拓哉さん
歓声に手をあげてこたえる木村拓哉さん