阪神・岡田彰布監督

 阪神の“2年目のジンクス”が心配になってきた。オープン戦で9連敗を喫した姿からは昨季の強さを感じさせない。「まだこの時期だから」という言い訳もできるが、開幕に向けて不安を覚える人も増えてきたという。

 昨季の阪神は攻守に隙のない戦いぶりで18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に輝いた。岡田彰布監督の掲げた「ARE=優勝」は新語・流行語大賞に輝くなどグラウンド内外で社会現象を巻き起こした。

 今季もオフの補強は必要最小限となったが、球団初となる連覇に向けて戦力的には他球団よりも頭一つ抜けている感もある。だが、昨年は上手く行き過ぎたところもあっただけに、今年は真価が問われるシーズンにもなりそうだ。

「今季も優勝候補に挙げている人は多い。しかしキャンプ、オープン戦と進むにつれ何か違和感を感じるようにもなった。オープン戦は結果を度外視しているとはいえ内容が悪過ぎる」(阪神担当記者)

 オープン戦ではここまで9試合戦ってまさかの全敗。10日の試合では本拠地・甲子園に4万人の観客が集まったが宿敵・巨人を相手に4対5と競り負けた。昨年まで抜群の安定感を誇った投手陣が12球団ワーストの44失点という部分も不安だが、失策もワーストの13と守りが乱れているのは非常に気になるところ。
 
 昨年も6年連続リーグワーストとなる85失策を記録したが、中野拓夢の二塁コンバートなど守備に関しては新たな挑戦もあり仕方ない部分もあった。

「昨季は捕手2人制を含め、守備に関しては新たな形を作り始めた。今季は磨き上げてレベルを高くしなければならないのに先が思いやられる。追われる立場のチームが進化しなければ、あっという間に他球団に抜かれてしまう」(阪神OB)

 野手も主力として昨季の日本一に大きく貢献した選手たちの調子が上向いてこないのも不安を掻き立てる。

「主軸の大山悠輔や佐藤輝明の調子がイマイチ上がらない。ノイジーも右肘痛になるなどコンディションが整っていない選手もいる。優勝したことでオフが忙しかったこともあるだろうが今のままでは不安が多い」(在阪テレビ局スポーツ担当)

 阪神は2リーグ制となって以降ここまで連覇はない。昨年は6度目のリーグ制覇となったが、過去5度の連覇への“挑戦”では、苦戦したシーズンも目立つ。

“闘将”星野仙一監督が率いた2003年にリーグ制覇を果たしたチームも、翌年に指揮官が岡田監督に代わるなどチームに変化はあった影響はあるとはいえ、Bクラスの4位に低迷。前年は2位の中日に14.5ゲーム差をつける圧倒的な強さを見せていただけに、悪い意味で予想を裏切る形となった。

 昨年も2位・広島に11.5ゲーム差をつけ、クライマックスシリーズのファイナルステージでも3連勝で日本シリーズへ勝ち進むなど2003年と同じく盤石の戦いぶりだった。

「阪神は勝ち慣れしていない選手ばかりだけに、昨年の日本一で燃え尽きたり調子に乗るのが怖い。岡田監督自身が最も心配している部分であり言動が厳しくなっているのはそのためだろう」(阪神担当記者)

 オープン戦での苦戦を予期していたかのように今季はキャンプから岡田監督の“苦言”が目立っていた。

 特に厳しかったのは抑え投手候補の湯浅京己に対して。2月11日の紅白戦後には「初球から球速ばっかり見とったもんな。だから、落ち着いて投げぇって。後ろは喜怒哀楽出したらアカンてなあ」と強烈なダメ出し。2月23日の巨人とのオープン戦後に二軍通告した際も「いろんな面でやり直さなアカンのちゃう」と怒りを露わにした。

 また今季から先発に挑戦している及川雅貴に関しても、3月3日の日本ハム戦(札幌)で3回5失点と乱れると即座に二軍行きを通告。「ギャップが大き過ぎる。コントロールも悪なる、球威もなくなる、そのへんはやっぱりクリアせんと、なかなか一軍ではな、長いイニングしんどいよな」と厳しい言葉を発した。

「湯浅は藤川球児氏のような絶対的存在になれると信じている。及川には左腕のエースになれるだけの球威があると考え先発転向させた。厳しく接したのは当人たちとともにチームを戒めるため。日本一になり今まで以上にチヤホヤされることで勘違いさせないようにするためだろう」(阪神OB)

「阪神は日本一になったことで注目度が高まった。マスコミだけでなく広告起用したい企業も多い。接待を含めて近寄ってくるタニマチ筋も少なくない。そういった誘惑に負けないことが大事なのを岡田監督は身をもって知っている」(在阪テレビ局スポーツ担当)

 2年目のジンクスとは、結果を出した者が現状で止まってしまうことで起きる。ここまでを見ていると阪神に危険な兆候も現れ始めている。黄金時代を築くためにも、選手に厳しく接する「鬼の岡田」がしばらく続きそうな気配がある。

「以前と同じ失敗を繰り返すかどうかは今季次第。岡田監督に全てがかかっている」(阪神OB)

 アレンパ(=2連覇)は簡単ではない。岡田監督の責任ももちろん重大だが、阪神関係者やファンの誰もが冷静になることも求められている。日本一になったことはすでに過去のこと、新たなシーズンは間もなく始まろうとしているのだ。