3月29日に会見を開いた小林製薬の小林章浩社長(中央)

「紅麹(こうじ)コレステヘルプ」を摂取した人に腎疾患などの健康被害が相次いでいる問題で、小林製薬(大阪市)は3月29日に大阪市内で小林章浩社長が初めて記者会見を開き、謝罪した。被害が拡大するなか、厚生労働省などは30、31の両日、同社の工場を立ち入り調査したが、原因の特定には至っておらず、解明には時間を要する可能性がある。来年4月開催を控える大阪・関西万博には同社も協賛企業として名を連ねているが、盛り上げるような状況にあるのだろうか。

 約4時間半に及んだ同社の記者会見。

 小林章浩社長は、

「大変なご迷惑をおかけして申し訳ない」

 と頭を下げたが、原因については、

「まだわからないです。厚生労働省に情報を提供して究明したい。全容がわかるのがいつになるかはわからないです」

 という以外に言葉がなかった。

 会見時では、健康被害で入院したのは把握しているだけで114人おり、これまでに5人が死亡するなど、被害が広がっている。今後もどこまで被害が拡大するのか見えない状況が続く。

■大阪万博のプレミアムパートナー

 一方、大阪市に本社がある小林製薬は、来年4月開催の大阪・関西万博で、大阪府や市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」に「プレミアムパートナー」として協賛している。

 4月24日には万博関連のシンポジウムが開かれ、パネルディスカッションに小林製薬の部長が、大阪ヘルスケアパビリオンの総合プロデューサーを務める大阪大大学院の森下竜一寄付講座教授と登壇する予定だという。

 今回の被害が発覚する直前の3月15日、小林製薬のXを見ると、

〈大阪・関西万博開催まであと1年ちょっと! ワクワクしてきましたね #小林製薬は「大阪ヘルスケアパビリオン」にプレミアムパートナーとして協賛してます〉

 と1年後に迫った大阪・関西万博のPRをしている。

 大阪府のホームページによれば、5億円以上の協賛金額でプレミアムパートナーになることができ、

〈協賛ランクに応じて付与される呼称を、商品広告やプロモーション等で使用することができます〉

 とある。

 つまり、PR、販売促進のツールとして、万博、大阪ヘルスケアパビリオン、そのロゴなどの使用が可能というものだ。当然のことながら、パビリオンに企業ブースの展示もできる。

 吉村洋文府知事は26日の囲み会見で、小林製薬とパビリオンへの影響について聞かれると、

「大阪ヘルスケアパビリオンなどと直接関係するものではないと、現時点ではそう思います。(小林製薬には)紅麹の件については適切に対応してもらいたい」

 との考えを示した。今回の被害とはわけて考えるということのようだ。

謝罪する小林社長(左から2人目)ら小林製薬の幹部

 ただ、小林製薬の小林社長は29日の会見で、万博のスポンサーの件ついては、

「万博のことは意識しておりませんでした。持ち帰り議論したいです」

 と述べ、今後の方向性については言及していない。

 万博のキャッチコピーは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、今回の小林製薬の件は、健康被害が指摘されている問題だ。

 厚労省などは30、31日と連日、同社の大阪と和歌山の工場へ立ち入り検査した。今後の原因究明が待たれる。

■入社式は中止「入社をやめようか…」

 小林製薬は4月1日に大阪市内で予定していた入社式を中止した。

 入社辞退者は今のところいないようだが、新入社員の一人は、

「いくつか内定をもらったが、この会社がいいと思って選びました。まさかこんなことになるとは。信じられないです。ニュースを見ているとあまりに被害が大きくて、入社をやめようかとも思い始めています」

 と不安を口にした。

 また現役の社員は社内の様子についてこう語った。

「今、会社の中は電話、メールなど被害報告、相談でてんやわんやです。社員全員がこの問題に対応している状況です。サプリメント系統の商品はサンプル、お試し品としてタダ同然で配ったり、関連がある会社に無料で渡したりすることもあります。紅麹原料を卸している会社は世界中にあり、今も追跡ができていません。どこまで被害が広がるのか心配でたまらないです」

(AERA dot.編集部・今西憲之)