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 子どもに生まれつきあざがあると、場所や大きさによっては気になるものです。あざといってもさまざまな種類があり、経過や治療効果などは大きく異なります。あざの種類やそれぞれの特徴について専門家に聞きました。

■あざの色が違うのはなぜ?

 “あざ”というと、打撲による内出血なども含まれますが、先天的なあざは医学的には「母斑(ぼはん)」と呼ばれます。通常の皮膚の色とは異なる色調の変化を指し、色によって「赤・青・茶・黒」の大きく4種類に分けられます(※まれに白もあります)。

 青・茶・黒のあざは、いずれも皮膚の中にある黒っぽい色素「メラニン」が透けて見えている状態です。メラニンが原因であることは同じなのに、色が違って見えるのはなぜでしょうか。日本医科大学武蔵小杉病院形成外科で「血管腫・あざ外来」を担当する西本あか奈医師はこう説明します。

「海の色が場所によって違って見えるのは、海の深さなどによるものです。青・茶・黒のあざもメラニン色素が皮膚のどれくらい深い位置にあるかによって、見た目の色が変わってきます。茶あざは皮膚の比較的浅い位置にメラニンがあり、青あざは深い位置にあります。一方、黒あざは生まれつきあるホクロのことで、メラニンを作り出す細胞が、浅い位置から深い位置まで、ひと続きにあるケースが多いです」

図版/日本医科大学武蔵小杉病院提供

 一方、赤あざは、「血管腫(けっかんしゅ)」と呼ばれ、毛細血管が部分的に著しく増えた状態です。大きく分けて皮膚がいちごの表面のようにモコモコと赤く盛り上がった「乳児血管腫(いちご状血管腫)」と赤くて平坦な「単純性血管腫」があります。乳児血管腫の場合は、出生時にはなく、生後数日から数週間で出現するという特徴もあります。

 メラニンや毛細血管が部分的に増える原因は、明らかになっていません。人種によっても頻度が異なり、日本人は青あざが多く、薄いものまで含めるとほとんどの日本人にあるとも言われています。一方乳児血管腫は欧米の乳児は5〜10%にあると言われていますが、日本の乳児の場合は1%程度です。

「妊娠中の生活に問題があったのではないか、遺伝なのではないかといったことを気にされる保護者もいますが、そうしたケースはほとんどないと考えていいでしょう」(西本医師)

■病気の可能性があるあざとは?

 生まれつきあざがある場合、保護者としてはまず、それが病的なものではないかということが心配になるものです。

「あざの大半が皮膚表面のトラブルであって、病気がある可能性は極めて低いです。ただし、あざの数が多い、あるいは範囲が広い場合は注意したほうがいいでしょう。例えば赤あざが顔半分にあるといったケースは、脳や目の異常を疑ってMRI検査などで確認する必要があります。また、5mm以上の茶あざが全身に6個以上ある場合は、将来的にさまざまな合併症が出てくる「神経線維腫症(しんけいせんいしゅしょう)Ⅰ型」という病気の可能性があります」(西本医師)

 病気の可能性がなければ、放置しても問題ないわけですが、あざが目立つ場所にあると、気になるものです。成長にともなって自然に消えるのか、治療しなければ消えないのか、治療するならどのタイミングがいいのかといったことは、あざの種類によって異なります。

■成長にともなって自然にきえるものは

 まず成長に伴って自然に消えるのが、色調の薄いお尻の青あざ「蒙古斑(もうこはん)」と乳児血管腫です。蒙古斑は、10歳くらいまでに消失するケースがほとんどなので、治療は必要ありません。

 乳児血管腫は、生後数日から数週間で出現して急速に大きくなっていき、6〜12カ月後にピークを迎えます。その後は5〜10歳ごろまでに自然に消えていくのが一般的です。特に最初にうちは赤色が鮮やかで大きくなっていくため、保護者は驚いて乳幼児健診や小児科などで相談するケースが多いようです。そこで「自然に消える」という説明を受けると安心できますが、西本医師は「消え方の程度には差があることを知ってほしい」と強調します。

生まれつきの主なあざの種類と経過(図版/日本医科大学武蔵小杉病院提供)

「確かに赤みは消えることが多いのですが、例えば皮膚の盛り上がりが大きいと、皮膚表面が引き延ばされているので、赤みが消えたあとも皮膚のたるみだけが残ってしまうことがあります。これをなくすには、皮膚を切除する手術を受けるしかありません。しかしピークを迎える前、生後数カ月で治療をすれば、あとに残らないようにできる可能性が高くなります。盛り上がりが大きい、衣類で隠れない目立つ場所にあるといった場合は、早めに乳児血管腫の治療経験が豊富な病院で診てもらうことをおすすめします」

■消えないあざは保険で治療可能

 一方、単純性血管腫やおしり以外のところにできる色調の濃い青あざ「異所性(いしょせい)蒙古斑」、おでこやその周辺などにできる点状の青あざ「太田母斑」、茶あざ(扁平母斑:へんぺいぼはん)は、成長しても消失しない可能性が高いあざです。多くはレーザー治療が効果的で、保険診療が可能です。ただし、扁平母斑の場合は効かないこともあります。

「異所性蒙古斑は、乳児の早い段階でレーザー治療をするほど、よく効きます。ただしほかのあざにも言えることですが、成長につれて皮膚が伸びると色も薄くなっていきます。このため、成長したときの色味がどの程度になるのかということも考慮して、治療の必要性を判断することが大事です」(西本医師)

 また、太田母斑や単純性血管腫は、治療をしたとしても再発する可能性が大きいと言われています。扁平母斑も再発する可能性があります。

 成長するとどの程度薄くなるのか、どのタイミングで治療を受けるべきかについて、西本医師は「子どものあざを専門的に診ている医師に相談してほしい」と言います。あざの治療は形成外科や皮膚科の領域ですが、子どもの場合はレーザー治療中に体を固定したり、成長による変化を見極めたりする必要があります。

「小児科などで紹介してもらうほか、インターネットで『子ども あざ 保険 住まいの地区名』で検索してみてください」(西本医師)

(取材・文/中寺暁子)