今季がプロ入り4年目の阪神・佐藤輝明

 阪神・佐藤輝明は球史に残る大打者になれるかの分岐点にいる。2020年のドラフトで“目玉”となり4球団競合の末に名門チームに入団した左の大砲は今季こそ真のブレイクを果たせるのだろうか……。

「終わってしまうか、終わらんかやろ」「もっとええ選手であかんようになったの、いっぱいおるやんか」

 これは昨シーズン7月に岡田彰布監督が不振にあえいでいた佐藤に対して発したコメントだ。ポテンシャルはドラフトの指名球団数が示すように球界屈指なのは間違いないが、昨季は二軍に降格するなど、いまいち殻を破り切れない佐藤へのもどかしさを感じるものだった。

 今シーズン4年目を迎えた佐藤はプロ入り1年目から3年連続で20本塁打以上を放ち、昨季はチームトップの92打点を挙げて日本一に貢献したことを考えても全く期待に応えられていないわけではない。ただ、ルーキーイヤーの2021年に1試合3本塁打を記録するなど、幻想を抱かせていたが、プロ入りからの3シーズンの成績を見ると想像の範囲内に収まってしまっている。

「打率が極端に低くても本塁打30本、打点100以上なら文句は出ない。しかし全ての数字がイマイチの状況で止まっている。今のままでは長打力のある良い打者という評価で終わり、相手チームに脅威を与える存在になりきれていない」(阪神OB)

 身長は187cmと大型で50mも6.0秒と日本人離れした身体能力を誇る。阪神OB・掛布雅之氏から「清原和博氏や松井秀喜氏に匹敵する素材」と称された豪打も当然魅力だが、守備力も決して低くなく3拍子揃った大砲として才能開花が毎シーズン期待されているが、ここまではブレイクしたと言えるほどの結果は出ていない。

「低めの球にはめっぽう強い。しかし内角寄りの高めには振り負けるとともに、低めの変化球を追いかけてしまう。プロ1年目から傾向が変わっていないので、コントロールミスをしなければ、現状打ち取るのは難しくない打者となってしまっている」(在京球団スコアラー)

「1年目のオープン戦までは自信満々に見えた。しかし弱点を徹底的に攻められて結果が出なくなると、悩みが表情にも少しずつ出るようになった。調子に乗りやすい性格で結果が出ている時は良いが、悩み始めるとスランプに陥ってしまうタイプなのが成績にも出ています」(阪神担当記者)

 昨季は先述した岡田監督の“ゲキ”が功を奏したのか、夏場以降は成績が向上。シーズンの重要時期でもある8月、9月はともに打率が3割を超え、本塁打も2カ月合わせて10本放った。

 だが、今季はシーズン開幕から昨シーズン終盤の勢いを失っている。4月21日の中日戦では決勝スリーランを放ち存在感は見せたが、ここまで21試合の出場で打率.218(78打数17安打)、3本塁打、14打点は物足りないとも言えるだろう。

「プロ入り当初は怖いもの知らずの部分もあった。しかし3年が経過して現実も分かり始めたのだろうか。今のままでは結果が出せないと気付いて試行錯誤も始めたようだ。結果が出始めれば性格的に乗っていけるとは思うのだが……」(阪神OB)

 昨年12月には米シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」を訪問。自身の打撃をデータ的に解析、グリップの位置を下げるなど新打撃フォームに取り組み始めた。

「優勝旅行を早めに切り上げてシアトルへ足を運んだ。『現状を打破しないと野球選手として終わる』というのは本人が1番わかっている。何よりも打ちまくっていたアマチュア時代の打撃が楽しくて仕方なかった時に戻りたいはず」(阪神担当記者)

 調子が良い時は表情も明るく、はしゃぐ姿を多く見かけた。頭にバンダナを巻き、一世風靡した本塁打を打った後の「虎メダル」授与式にも積極的に関わった。

「かつてのイケイケだったテルに戻って欲しい。そのためには結果を出して周囲に文句を言わせないようにすることが大事。地元・兵庫出身の生え抜きが4番を打つところも見たい」(阪神OB)

 野球スタイルの変化に伴い、主軸打者の打順の役割も昔とは異なっている。しかし、「4番サード・佐藤」が甲子園で当たり前の光景になることを待ち望んでいる人も多い。そして球界を代表する打者に成長すれば、「メジャー挑戦」という可能性も出てくるはずだ。

「体が大きくスピードがあるのは糸井嘉男(元阪神)を彷彿させる。長打力は佐藤が上だけにメジャー側からの評価も決して低くないはず。本人も『目指すべき場所』と語っており夢は大きく膨らむ」(阪神担当記者)

 糸井は「メジャーで活躍できるプレイヤーの1人」と言われていたが現役引退まで渡米することはなかった。ポジションは違うものの潜在能力の高さは佐藤も引けを取らないだけに、NPBで今以上の成績を残せば、日本の大砲が海を渡る日も必ず訪れるはずだ。

 シーズン開幕前の3月15日、中日とのオープン戦の好機に空振り三振に終わった佐藤に対し、「三振は何も起きない。空振りは。それだけのことや」と岡田監督は苦言を呈した。だが、指揮官が度々厳しいコメントを佐藤に発するのは期待の裏返しでもあるだろう。これから黄金期の到来も予感させる阪神だが、そのためには佐藤の飛躍は欠かせないはず。今季こそ、“メジャー級”とも評される長打力を遺憾なく発揮し、球界の話題の中心となるようなパフォーマンスを見せて欲しいものだ。