県立千葉高等学校

 2024年の中学入試、首都圏の公立中高一貫校では、志願者数が大きく減少しました。とはいえ倍率は4〜5倍と依然と高く、学校によっては8〜9倍のところもあり、厳しい入試は続いています。多くの学校では、募集時の男女枠が撤廃され、男女合同枠の募集へと切り替えが進んでいます。公立中高一貫校の入試を振り返ります。

 首都圏1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)における公立中高一貫校の志願者は、年々減少しているが、2024年は減り幅が大きく、23年の1万5464人から1万4344人と1000人以上の減少となった。ちなみに23年は22年より500人ほど減少している。

 東京都の11校は、都立立川国際中等教育学校を除いて、すべての学校で減少した。特に減り幅が大きかったのが都立三鷹中等教育学校だ。23年の924人から155人減の769人だった。その理由を栄光ゼミナールの公立中高一貫校受検担当者は次のように話す。

「立川国際に志願者が戻ってきたからです。同校は23年度に大きく減少したぶん、24年はゆり戻しが生じて35人増え、529人になりました。三鷹は、地理的な関係から立川国際と競合するため、その影響を受けたと思われます」

 今年は千代田区立九段中等教育学校が、男女枠を撤廃し合同枠での募集に変更した。来年度からは都立の10校もすべて男女枠を廃止し、合同枠に移行する。

※ 男女別募集人員は、インフルエンザ等学校感染症罹患者等に対する追検査の募集人員を男女別に減じた人員。データ/各自治体発表資料から
※ 男女別募集人員は、インフルエンザ等学校感染症罹患者等に対する追検査の募集人員を男女別に減じた人員。データ/各自治体発表資料から

 神奈川も5校すべてが減少した。特に県立相模原中等教育学校と市立横浜南高等学校附属中学校が大幅に減少し、それぞれ102人減の880人、175人減の690人となった。

「両校とも、もともと志願者が多かった学校なのでより減少が目立ちました。相模原は減少したといっても、5.5倍と相変わらず高倍率です」(同)

データ/各自治体発表資料から

■首都圏で唯一、埼玉が志願者増加

 千葉も3校ともに減少。千葉市立稲毛国際中等教育学校が100人以上減らし、747人。23年まで男女で定員枠を設けていた県立千葉中学校と県立東葛飾中学校も今年撤廃し、男女合同枠になった。

データ/各自治体発表資料から

 首都圏のなかで、唯一志願者を増やしたのが埼玉だ。4校合計で2107人から2154人に増加。川口市立高等学校附属中学校以外は、3校ともに増加した。

「埼玉が増えた原因の一つは、入試日程です。東京と神奈川は2月3日と決まっていますが、埼玉は決まっておらず、1月の2週目の土日に実施されます。今年はそれが1月13、14日にあたり、私立中学の解禁日である10日とずれたため、併願する生徒が多かったと思われます。来年は1月11、12日にあたるため、私立・国立中第一志望で、公立中高一貫校を併願する志願者が減りそうです」(同)

  埼玉は県立伊奈学園中学校を除く3校は、男女別枠で募集している。来年度は東京が撤廃するので、男女別枠は埼玉の3校のみとなる。

データ/各自治体発表資料から

■私立との併願受験が増えている

 全体的に志願者数は減り競争は落ちついているものの、易しくなったわけではないという。

「私立の平均倍率が2倍から3倍ですから、4〜6倍の公立中高一貫校はやはりまだ高い。東葛飾やさいたま市立浦和中学校のように9倍の学校もあり、人気がなくなったわけではありません。志願者が減っているのは、おためしで受けても合格が難しいことが浸透し、準備を積んできた受検者層だけが受けるようになったからだと思われます。受検者全体のレベルは上がっています」

 公立中高一貫校の志願者が減る一方で、私立と併願する受検生は増えているという。

「塾に通っている公立中高一貫校を受検する生徒は、8〜9割が私立を併願しているようです。公立中高一貫校は検査日が1日だけですから、本番に慣れるためにも適性検査型の入試を行っている私立を腕試しとして受けているようです」

 また、難関の公立中高一貫校では、私立を第一志望とする生徒が併願しているケースも多い。当日の欠席者や、合格しても手続きをしない離脱者を見ればその傾向がわかる。たとえば都立小石川中等教育学校は検査当日の欠席者が68人、離脱者が87人で東京最多。私立に合格したため、適性検査を受けなかったことがうかがえる。

 近年、公立中高一貫校を受検するほとんどの生徒が塾で対策をしている。

 だが、私立と比較すると思考力、表現力が試される問題の傾向があるので、たとえば親子でニュースを見て話し合う時間を作ったり、読書や作文などの記述の練習をしたりするのもおすすめだ。

「適性検査は、『偏差値が高いから合格する』という試験ではありません。学校ごとに問題のタイプが違うので、過去問にはしっかり取り組みましょう」(同)

(文/柿崎明子)