『オフィス』系は、コロナ禍後のオフィス回帰の動きが追い風だという。

 新NISA(少額投資非課税制度)では配当利回りが高い「高配当株」が人気だ。だが年初以降の株価上昇で利回りは一時期に比べて全体的に下がっている。そんな中、高い利回りが期待できるのが国内の不動産投資信託(Jリート)。株式市場に比べると値上がりするのが出遅れ、株式の配当金にあたる分配金の利回りは平均で4%台と高い水準にある。新NISAで狙うなら、どんな点に注目すればいいか。お勧めの銘柄とともに、専門家に聞いた。

 Jリートは、投資家から集めたお金や金融機関からの借入金を使って不動産に投資し、対象の物件から得られる賃料などの利益や売却益を投資家に分配する仕組みだ。投資の対象となる物件は、オフィスのほか、住宅や商業施設、物流施設、ホテル、さらにはいろいろな種類の物件に複合的に投資するタイプなどそれぞれ異なり、値動きや分配金の変化の仕方も違いがある。

■利益の大部分が分配金に

 専門サイト「JAPAN-REIT.COM」を運営するなどJリートに詳しいアイビー総研代表の関大介さんは言う。

「Jリートには賃料や売却益など不動産から得られる利益の9割以上を投資家に分配すると法人税が実質的に免除されるルールがあり、利益の大部分が分配金に回される仕組みです。そのため利回りが高い点が最大の特徴。しかも、分配金の原資は投資物件から得られる賃料が中心で、個別株などよりもずっと安定しています。個別株の配当金は、その銘柄の業績やその時々の配当方針によって左右されたりしますから」

 Jリートは新NISAの「成長投資枠」で買うことができる。新NISAを使って投資すれば値上がり益だけでなく、株式の配当金にあたる分配金に税金がかからない。

 関さんは続ける。

「新NISAを通じて、値上がり益を狙った投資とは別に、安定的な収益が期待できる分も確保したいと考える投資家にとって向いていると言えるでしょう。特に今はJリート全体の値動きを示す『東証REIT指数』が1800ポイント前後で推移し、2000ポイント超の水準をつけた数年前より依然として安い水準にあります。加えて、業績面では過去最高水準にある銘柄も少なくありません。投資するのにはよいタイミングです」

 では、今ならどんな銘柄が狙い目か。Jリートは5月15日時点で58銘柄ある。前述のように、投資対象の不動産物件によっていろいろなタイプがある。

■eコマース(電子商取引)需要は拡大

 このうち関さんは、個人投資家にとって、いま注目なのは「物流施設」系の物件に投資するリートだという。

「日本ではこれから人口減少が進みますが、ネット通販などのeコマース(電子商取引)需要は拡大しそうです。中長期的にはテナント需要は高い状態が続くと考えられています。このため今後も安定的な賃料が期待できます。また、ここ2年間は、米国の金利高という『外部要因』によって外資系のスポンサーの銘柄が多い物流系のリートは資金が流出し、多くが値下がりしました。リートの投資先の物件収益低迷などの『内部要因』で値下がりしたわけではありませんから、割安感のある銘柄が多い」

 下の表に示した関さんの注目銘柄のうち、「三井不動産ロジスティクスパーク投資法人」「アドバンス・ロジスティクス投資法人」「SOSiLA物流リート投資法人」が、物流施設系のリートにあたる。

 三つはいずれも分配金利回りが4%を超える。

 続いて注目されるのが「オフィス」系のリートだ。

「『オフィス』系は、足元の価格水準が比較的低く、割安感が強い点がポイントです。コロナ禍後のオフィス回帰の動きが追い風になっています。ただし、今後、首都圏を中心に新しい大型オフィスの供給が相次ぐのは気がかり。これから景気が上向いていくと考えれば問題はありませんが、悪化すれば値下がりするリスクも出てきます。買うべきかどうかは、それぞれの投資家の景気の見方しだいになってきます」(関さん)

 オフィス系の注目銘柄は「日本ビルファンド投資法人」「グローバル・ワン不動産投資法人」。どちらも多くの人が知っているような有名ビルを抱え、時価総額も大きい。

■賃料収入が減る可能性

 オフィスの大量供給の影響を避けたいのなら、大型ビルよりも中小型ビルに多く投資する銘柄を選ぶ手もある。オフィスの供給が増えれば、投資先のビルからテナント(入居企業)が別の拠点に移ってしまい、賃料収入が減る可能性があるからだ。

 例えば「いちごオフィスリート投資法人」は、主に首都圏の中規模ビルに投資する。このため今後、大型ビルの供給が増えても、そうしたリスクは比較的抑えられそうだという。

 このほか、オフィスだけでなく、賃貸住宅もメーンに位置づける「総合型」のタイプの「平和不動産リート投資法人」や、九州地方のオフィスや商業施設に的を絞って投資する「福岡リート投資法人」なども挙げている。

  個別の銘柄を選ぶのが難しければ、東証REIT指数に連動するタイプの上場投資信託(ETF)や、Jリートを組み入れた投資信託を買う方法もある。東証REIT指数に連動するタイプのETFは、株式市場で言えば日経平均株価や東証株価指数のように、リートの市場全体の相場観にもとづいて投資できる。

 また、こうしたETFを買う利点の一つに、「分配金の受け取り時期をならす効果が期待できる」(関さん)ことも挙げられるという。

■分配金がもらえる時期に偏り

 リートは年2回、本決算があり、分配金は決算を受けて投資家に払われる。決算時期は「1月・7月」や「2月・8月」のパターンが過半を占め、分配金がもらえる時期に偏りが生じがちだ。一方、指数に連動するタイプのETFは、分配金がもらえるのが年1回だったり4回だったりさまざまで、個別銘柄に多いタイミングではない時期にもらえるものもある。

 いずれにせよ、高い利回りを確保したいのだったらJリートは有効な選択肢だ。物価の値上がりが続く中、インフレに強いとされる不動産関連の資産としての魅力もある。関さんのサイトをはじめ、投資法人や証券会社の取引サイトなども参考にしながら、自分の考えに合った銘柄があったら検討してみよう。

※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。

(AERA dot.編集部・池田正史)