ゴルフ場では時折、コース内に侵入した「カラス」が、プレーヤーの使用しているボールやカートに乗せてある食べ物をくわえて、飛び去ってしまうことがあります。そういった被害を防ぐために、ゴルフ場が取っている対策とは、どんなものなのでしょうか。

農業用のカラス除けをゴルフ場でも活用

 カラスは、人間にとって非常に身近な動物です。市街地でも早朝にごみ袋を漁ったり、辺りに響き渡るほどの大きな鳴き声で仲間とコミュニケーションを取ったりする光景がよく見られます。

カラスの被害に遭ったことがある人も多いのでは… 写真:AC
カラスの被害に遭ったことがある人も多いのでは… 写真:AC

 自然の中にあるゴルフ場内にも、多くのカラスが出没しており、時にはフェアウェイに落ちているボールをくわえて持ち去ってしまうなど、プレー中のゴルファーが迷惑を被ることがあります。

 そのため、カラス対策に力を入れるゴルフ場が増えています。「イヤガラス」、「コワガラス」と呼ばれる製品が対策に使われることが多く、SNSでは「あまりに奇抜な光景に驚いた」と投稿されるなど、話題になっています。これらの製品は、どんな仕組みでカラスを追い払っているのでしょう。「イヤガラス」や「コワガラス」の製造・販売を行うプラスチック製品の総合メーカー「ミツギロン」の営業担当者は以下のように話します。

「『イヤガラス』ならびに『コワガラス』は元々、カラスによる農作物への被害を軽減するための商品として開発されました。かつて農家の方々は、害鳥対策として本物のカラスの死骸を吊るすことで、鳥を寄せ付けにくくするという方法を取っていましたが、このアイデアが開発のヒントになりました」

「2種類とも見た目はよく似ていますが、『イヤガラス』の方が天然の羽毛をカラスの形をしたプラスチックに貼り付けた『リアルタイプ』となっています。一方、『コワガラス』はプラスチックに直接黒い塗料を吹きかけたタイプで、リアルな『イヤガラス』の見た目が怖い人向けの製品です」

「どちらもつるし方によって寄せ付けにくくする鳥の種類が異なります。頭を上にして、木に止まっているように置いた場合はハトやスズメといった小さな鳥に恐怖心を与える効果があります。対して、逆さまにした状態でつり下げておくとカラスが『自分の仲間が捕らえられて、見せしめにされている』と勘違いをして、危険を感じて近づかなくなります。どちらも農家の方々から農作物に対して効果があったという声を聞いていますので、ゴルフ場においても十分効果を発揮できているのではと思います」

「原因はハッキリとは分かっていませんが、カラスはキラキラと光るものを好む習性があるといわれます。ゴルフボールの表面には、「ディンプル」と呼ばれる多数の窪みがあり、それに光が反射するため、カラスが好んでくわえてしまうようです。特に蛍光色のカラーボールは光の反射具合が強くなり、持っていかれやすい傾向があります」

自分でもできる対策には何がある?

 ゴルフ場ではこのようなカラス対策が実施されていますが、ゴルファーひとりひとりが簡単にできる対策にはどのようなものがあるのでしょう。

 ボールと同じくらいカラスのターゲットにされやすいのが、ゴルファーが持ち込むティーやマーカーなどの小物類、カギや財布、携帯電話といった貴重品、そしてお菓子などの軽食類です。カラスは口にくわえられる大きさのものなら何でも狙ってきますので、バッグの外にそれらのものを出しっぱなしにしていると、カラスに「どうぞ盗ってください」と言っているようなもので、ちょっとした隙に持ち去られてしまいます。

 そのため、小さく些細なものであってもしっかりバッグに入れ、中の様子が見えないように口をしっかり閉めることが重要です。また、貴重品はコース内に持ち込まず、クラブハウス内の貴重品ロッカーなどに預けておいた方がいいでしょう。

 ほかにも、カラスは無人のカートに忍び寄る傾向がありますので、なるべく誰か一人がカートの近くに待機することも大切です。パッティングなどで、どうしても全員が離れなければいけない場合は、カートに向かって大きな声を出すなど、常に警戒していることを知らせるのも一つの手です。ただし、声を出す際は、他の組のプレーヤーの迷惑にならないように注意しましょう。

 また、全国でゴルフ場運営を行う株式会社東急リゾーツ&ステイの広報担当者は、「ゴルフ場側から事前に、カラスが出没しやすいホールで注意するように呼びかけてもらっています。他にも、カートに備え付けられているカゴには、小物類や軽食類などが持ち去られないようにふたを付けるといった対応を取っています」と話します。

 ゴルフは「あるがままの状態」でプレーするスポーツですが、カラスのイタズラを放置してしまったら、せっかくのラウンドも台無しです。ゴルフをとことん楽しむためにも、しっかりとカラス対策を行うようにしましょう。

ピーコックブルー