電動化の流れが加速するなか、ステランティス傘下のフィアットが動画で新コンセプト・シリーズを発表した。第1弾は2024年7月に発表される見込みで、ハイト系コンパクトの名車であるパンダにインスパイアされた現代の新シリーズとなる。また、その後3年間で毎年ニューモデルを発表するという。

単一のグローバル・プラットフォームを採用

新型モデルは単一のグローバル・プラットフォームが採用され、国や地域を問わず生産を可能としている。モデルによって80%以上のパーツを共有化する「マルチエナジー」プラットフォームにより、電気自動車=バッテリーEV(BEV)、ハイブリッド、内燃機関のICEの展開が可能としている。

新シリーズは、ユニークなデザインと大胆な個性を備えたクルマを生み出してきたフィアットならではの親しみやすさ、独創性を解釈したモデルになるという。パッケージングの進化(高効率化)をはじめ、環境負荷の大きい素材を廃止、リサイクル素材や新モジュラー・インテリアを採用する。

パンダ似の新型シティ・カー

動画の一番手で登場した新型シティ・カーは、現行のパンダよりも大きく「メガ・パンダ」のようなエクステリアを持ち、そのデザインは、ブランド発祥の地であるトリノの象徴的な建物で、有名な屋上テストコースがあるリンゴットからインスピレーションを得ている。デザイナーはフィアットの新しいデザイン言語を生み出す際にリンゴットの特徴から発想したと語っている。

2番目に披露されたのは、南米市場をリードするフィアットらしいピックアップのコンセプト。LCV(ライト・コマーシャル。ヴィークル)の機能性や積載性に加えて、SUVの快適性を与えるとともに、都市でも使えるサイズとすることで、カーライフをさらに豊かにする想いが込められている。

フィアット・ティーポの後継車

最近流行のファストバックも設定される。ブラジル向けの「フィアット・ファストバック」、中東とアフリカ向けの「フィアット・ティーポ」の後継車で、引き続き同地域を中心に、世界でのシェア拡大を目指している。ほかのシリーズと同様に、モジュール式プラットフォームをベースにスポーティなテイストが与えられた。空力性能も重視されたシルエットは一般的なSUVよりも高効率で、モダンで若々しい雰囲気を漂わせている。

世界的に流行しているSUVももちろん控えている。「メガ・パンダ」のような広々としたキャビンやラゲッジを備えるSUVで、乗降性に優れるなど、ファミリー層のドライブに向く設計が施された。このSUVコンセプトは、安全性や多用途性、デザインなどでユーザーニーズを満たし、世界中のファミリーに新しい選択肢として提案することになる。

キャンピングカーもラインアップ

動画の最後に登場したコンセプトはキャンピングカー。フィアットといえば「デュカト」・ベースのキャンピングカーが日本でも多数発売されている。こちらはそれよりももっとコンパクトなはずで、新しい「ドルチェ・ヴィータ・スタイル」を謳い、人と人、人や自然を結びつける究極のユーティリティカーとして提案されたものだ。同コンセプトは1980年代のパンダの高い機能性にオマージュを捧げている。SUVのような高い機能性を備えることで、信頼できる相棒として、狭い都市部で重宝されたかつてのパンダの精神が受け継がれている。

いずれのタイプもコンセプトカーらしいデザインやディテールだが、新型車にどれくらい残されるのかも興味深い。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)