これがランボルギーニ・ウラカン・テクニカに乗った自動車評論家の本音!「このサウンドだけでイケる 内燃エンジンばんざい!」by 嶋田智之
「640psの後輪駆動というのも、えらく刺激的」嶋田智之
うわっ! なんてサウンドなんだ……と鳥肌がたった。この独特のリズムで複雑なハーモニーを聴かせるV10サウンドはこれまで何度も耳にしているが、やたらと刺激的。官能的・扇情的に感じてしまったのは、ひさびさだったからというより、BEVやダウンサイジング系に代表される無音・静音の時代に、知らず知らず耳と心が慣らされてしまっていたからなのかも。いや、このサウンドだけでイケる。内燃エンジンばんざい!
640psの後輪駆動というのも、えらく刺激的でいい。もうこれ以上速くなくていいと思えるだけの加速力とスピード。加減を少し誤っただけで冷えた路面をあっさり見捨てそうになるパワーとトルク。けれど峠のレベルでもダウンフォースがしっかり効いて、めちゃめちゃスリリングではあるけど、過剰な怖さのようなものは微塵もない。その加減が絶妙。このうえない。だからこのうえない快感。素晴らしく楽しいのだ。
年齢から来るものなのか、いつしか速さの追求に若い頃ほど興味が持てなくなってたけど、はっきりと思い出させられた。まずいな……これは本当に楽しい。
「最も楽しいウラカン」藤野太一
試乗車に向かうと、すでに同乗予定のEPC会員のIさんがしげしげとボディを眺めている。ウラカンに乗るのは初めてという。助手席に乗り込むと「着座位置が低い、いつもとぜんぜん違う」と興奮が伝わってくる。
ドライビング・モードはベースのストラーダで走りだす。「意外に音は静かだし乗り心地もいいですね」というように7段DCTの変速マナーも極めてスムーズで、デビューから約10年が経過するだけあって熟成の感ありだ。
ターンパイクに入り、モードをスポルトへ。まるで別物のようにV10エンジンのエグゾースト・ノートが一気に高まり、アシがギュッと引き締まる。「ロールすることなく、路面にはりつくように走る。これぞ本物のスーパーカーですよね」とIさんもとても楽しそうだ。
テクニカは最終型にしてもっとも楽しいウラカンに違いない。帰り際「実はわたしエンジニアでして……」。なんとある国産メーカーのあのスポーツカーやらEVの開発に従事してきたと話す。こんなにクルマ好きな開発者がいるのだから、ガイシャに負けじともっと元気になるクルマの登場に期待したい。
写真=小林俊樹(メイン)/茂呂幸正(サブ、リア)
(ENGINE2024年4月号)