今や、最も売れるメルセデス・ベンツにまで成長したGLCにクーペが追加された。流麗なデザインは先代譲りだが、進化した走りはどのようなものだったのだろうか。モータージャーナリストの森口将之がリポートする。


新型感は薄い?

2023年11月に初めてのモデルチェンジを行ったメルセデス・ベンツCクラス・ベースのクーペSUV、GLCクーペに初めて触れることができた。ところが実車を前にしても、いわゆる新型感は薄かった。



よく見ると、顔つきは先に新型に切り替わったクーペではないGLC同様、凹凸が抑えられてシームレスになり、サイドは控えめなブリスター・フェンダー風のラインが入れられ、リアはコンビランプが最近のトレンドでもある左右一体になった。ただパッケージングは先代に近いので、変わっていないという印象を抱いてしまった。

ボディ・サイズも全長×全幅×全高=4765×1890×1605mm、ホイールベース2890mmと、先代と比べると全長が25mm、ホイールベースが15mm伸びただけだ。



大きく変わったのはインテリアだ。メーターは薄い角形ディスプレイに置き換えられ、センターのディスプレイは縦長になった。どちらも最近のメルセデスでお馴染みのインターフェイスだ。ただしスペースは以前と大差なく、後席は身長170cmの僕が座ると頭上空間がギリギリで、ドアの開口部も狭い。最近は美しさと広さを両立したクーペSUVが増えているので気になった。

先代ではAMGを含めたガソリン車もあったラインナップは、GLC220d 4マチック・クーペだけになった。ただし、197ps/440Nmの2.0リッター直4ディーゼル・ターボ・エンジンはマイルド・ハイブリッド化されるとともに、排気量は1949ccから1992ccに拡大し、燃料噴射圧力の引き上げなどを行っている。9段ATを介しての加速は十分以上であり、レスポンスは鋭すぎず鈍すぎず絶妙だった。



試乗車は合わせて200万円を超えるオプションが装着されており、AMGラインパッケージの「スポーティサウンド」もそのひとつ。ディーゼル特有の音はそれなりに聞こえるものの、しっとりしたサウンドなので耳障りではない。

AMGラインパッケージには20インチのホイール/タイヤも含まれており、ドライバーズパッケージとして4輪操舵とエア・サスペンションも装備している。

そのためもあって、しっとりした乗り心地をもたらしながら正確な身のこなしを実現しており、重さ2tを超える背の高いSUVとしては、快適性能と運動性能のバランスはこれ以上ないのでは? と思えるほどだった。

先代ではここまで感心することはなかったので、見た目はともかく中身は確実に進化していると言っていいだろう。

文=森口将之 写真=茂呂幸正



(ENGINE2024年6月号)