預金の金利は、ここ30年ほど下がり続けています。昔のように増やすことが期待できないことから、銀行にお金を預けるのをためらう人もいるでしょう。預ける手間や引き出す際の手数料などを考え、タンス預金をする人は少なくありません。   ところで、ある程度まとまった金額をタンス預金するのは相続税対策になるのでしょうか。今回は、相続税の概要と一般的に考えられるタンス預金の目的について解説していきます。

タンス預金は相続税対策になる?

国税庁は、相続税の課税対象として土地、建物、有価証券、預貯金、現金などをあげています。このほか、金銭に見積もることができるすべての財産が課税対象になると明記しています。つまり、タンス預金も課税対象であり、相続税対策とはいえません。
 
中には、記録が残らない現金なら相続税から逃れられると考える人もいるでしょう。しかし、財産を相続または贈与されたときは申告が必要です。ただし、相続税は基礎控除額「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えた部分に課税されます。
 
タンス預金300万円を相続することがあっても、資産総額が基礎控除額を超えていなければ課税されることはないでしょう。
 
生前贈与として受け取ったときも、課税されるのは年間で110万円を超えた部分です。今回のように300万円のタンス預金(現金)を1回で全額もらった場合、110万円を除く190万円に贈与税が課税されます。3年かけて100万円ずつもらうなら、贈与税はかかりません。
 

万が一のためのタンス預金。一般的に考えられる目的は?

では、タンス預金をする一般的な目的にはどういったものがあるか解説していきます。
 
・高齢者の場合は自分の葬儀費用として
高齢者の場合、自分の葬儀に備えて費用を用意しておく人は珍しくありません。現金も相続税の対象ですが、葬儀などにかかる費用は控除されます。法律で認められている葬儀費用とは、お寺や葬儀会社への支払い、お通夜の費用などです。
 
墓碑にかかった費用や香典返しの購入費は対象外ですが、故人を弔うためのお金と考えれば十分ではないでしょうか。自分の葬儀費用として生命保険に加入している人もいますが、保険金が下りるまでには手続きが必要です。
 
万が一というのは、自分の葬儀で家族が困ることがないよう備えている可能性が高いといえます。なお、生命保険金は「みなし相続財産」になり、相続税の対象です。
 
・預金が引き出せないときの生活費
銀行のシステムトラブルやキャッシュカードの紛失など、何らかの理由で預金が引き出せないこともないとはいえません。生活費や急な出費が必要になったとき、銀行から現金が引き出せないのは困るでしょう。
 
このようなとき、心強いのがタンス預金です。カードやキャッシュレス決済が利用できる場所は増えていますが、どのような場面でも使えるとは限りません。現金しか対応していない場所もありますし、亡くなった後のご祝儀やお香典といった交際費などはおのずと現金が必要になります。
 

タンス預金は相続税対策にはならない

中には、相続税対策としてタンス預金をしている人もいるでしょう。しかし、現金も相続税の対象であり、税金対策にはなりません。それより、万が一葬儀が必要になったときや入院を余儀なくされたときの緊急費用としてタンス預金をしていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
 
葬儀費用は、相続税の対象から外れます。高齢者の場合、葬儀費用などを想定して家族が困らないよう備えている可能性があります。
 

出典

金融庁 預金金利の推移
国税庁 相続税のあらまし
国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー