少子高齢化の影響により厚生年金保険料や健康保険料・介護保険料などの社会保険料の負担が年々高まってきています。   社会保険料は多くの方にとって非常に身近で金額の大きい支出ですが、その負担額はどのように計算されているのでしょうか。また、賃金の多い人はどれくらいの負担を行っているのでしょうか? 解説していきます。

社会保険料の負担は収入・雇用形態によって異なる

厚生年金保険料や健康保険料・介護保険料などの社会保険料は、給与明細を見ると天引きされる金額が大きく、毎年のように増額されているため、負担を感じやすい方が多い支出です。
 
社会保険料の負担は、雇用形態やサラリーマンであっても勤め先の規模・職種によって加入している社会保険制度によって異なります。
 
例えば、個人事業主などで国民年金に加入している場合、保険料負担は収入にかかわらず一定ですが、厚生年金に加入している方や各種健康保険などは基本的に収入が多い方ほど社会保険料負担が大きくなる傾向があります。
 

社会保険料負担はなぜ増加?

社会保険制度は、現役世代の支払った保険料によって維持されているため、人口や景気動向の影響を受けます。好景気で平均賃金が増加していて現役世代が多くいる場合、社会保険料は少なく手厚い保障を受けることができます。
 
しかし、不景気で賃金が上がらなかったり少子高齢化により社会保険料を負担する現役世代が少なく給付金を受け取る高齢者が多い人口構造に移行すると、社会保険料負担が大きくなったり給付水準が低下する可能性があります。
 

厚生年金と健康保険(協会けんぽ)の保険料算出方法は?

代表的な社会保険料である厚生年金保険料や健康保険料は、給与などの報酬を基にした「標準報酬額」を用いて算出されます。標準報酬額はサラリーマンの場合は4月から6月の給与で計算されるのが通常です。
 
ベースアップなどにより収入が一定以上増加した場合は随時改定などにより標準報酬額が見直される場合がありますが、基本的に給与額の多少の増減では標準報酬額は変わりません。
 
この標準報酬額は、計算を簡便にするため、毎月の報酬を1000円未満は切り捨てた上で区切りの良い数字で区分しているため、給与額とは必ずしも一致しません。
 
例えば、給与が23万円〜25万円未満の場合、標準報酬額は24万円に該当します。これに都道府県ごとに個別に定める保険料率を乗じて負担すべき保険料の額を算出し、これを労使折半で納付します。
 

高給取りの方は社会保険料をどの程度負担している?

標準報酬額は、厚生年金は最高32等級の65万円で給与が63万5000円以上の方が該当し、社会保険料の従業員負担額は東京都の場合で5万9475円になります。
 
次に健康保険(協会けんぽ)の標準報酬額は最高50等級の139万円で給与が135万5000円以上で負担額は最高8万481円になります。負担額はかなり違いますが、高給取りの方でも収入に占める社会保険料の負担割合は同程度になるように調整されています。
 

まとめ

少子高齢化の影響により、厚生年金や健康保険をはじめとした各種社会保険の保険料負担が年々高まってきています。社会保険料の負担は高給取りであっても同程度の負担割合になるよう調整されています。
 
しかし、社会保険料は所得税などとは異なり収入に対して一定の負担が生じるため、負担を感じたとしても負担を軽減する方法はほとんどありませんが、代表的な軽減方法として、4月から6月の給与が標準報酬額の基となるため、残業を少なくして収入を抑えておくことが挙げられます。
 
社会保険料の負担と給付内容は今後悪化していくと予想されていますが、どの程度悪化するかは予想に幅がある状態です。老後に資金不足にならないよう、社会保険料の負担増加や給付水準の低下を見越して資金計画を立てていくようにしましょう。
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表