就職する前、年金はあまり自分に関係ないと思っていた人でも、社会人になって保険料を納めるようになると、学生時代に払っていなかった国民年金保険料が気になる人も多いのではないでしょうか。   特に学生時代に「学生納付特例制度」を利用して納付猶予を申請していないと、そのまま短期間で未納扱いになってしまい、将来もらえる年金額が減少するなどデメリットは少なくありません。   そこで本記事では、学生時代の国民年金保険料を納めていない場合、将来もらえる年金額がどのくらい減少するかを解説します。さらに「学生納付特例制度」を利用していない人が、将来もらえる年金を減らさないための対策もご紹介しますので、参考にしてください。

2年間保険料が未納の場合、年金額にはどの程度影響があるのか

国民年金の保険料は納付期限から2年以内に納めないと時効により納付不可能となり、年金額に反映されないだけでなく受給資格期間にも算入されません。学生時代に「学生納付特例制度」を申請していれば追納期間は10年に延びますが、手続きしていなければ、納付期限から2年以内に納付しない限り、そのまま未納になってしまいます。
 
国民年金の加入義務は20歳から生じるため、4年生大学であれば、20歳から社会人になるまでの2年間が未納になりがちです。それではこの2年間の未納で年金受給額はどう変化するのでしょうか。
 
令和6年度の老齢基礎年金は満額で月額6万8000円、年額に直すと81万6000円です。この満額を受給するためには、20歳から60歳までの40年間保険料を納めなければなりません。しかし、2年間の未納で納付期間が38年となるため、老齢基礎年金の受給月額は6万8000円×38年/40年=6万4600円となり、年額に直すと77万5200円です。
 
つまり、満額の場合に比べ、年間だと受給額は81万6000円−77万5200円=4万800円減少します。もし、65歳から90歳まで25年間年金を受給すると仮定すれば、受給総額の減少は4万800円×25年=102万円となり100万円を超えてしまいます。
 

老齢基礎年金を満額受給したいときはどうする方法は?

社会人1年目であれば、まだ時効を迎えていない月の保険料も多く、今からでも支払って未納期間を少なくできます。厳密には、保険料の納付が時効になるのは納付月の翌月末から2年経過時点です。例えば、2023年10月の保険料であれば、2023年11月末から2年間となり、2025年12月1日以降は納付できません。
 
したがって、それまでの間は保険料の納付が可能です。しかし、社会人1年目で就職したばかりでは給与の手取りも少なく、未納分まで支払う余裕がないという人も多いでしょう。そのような場合は国民年金の任意加入制度の利用が可能です。
 
任意加入制度とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たせなかった人や、納付済期間が40年未満で老齢基礎年金を満額受給できない人などが、65歳を上限に60歳以降も国民年金に加入して納付済期間を延ばし、年金受給額を増やせる制度です。
 
この任意加入制度を利用するための、おもな条件は以下のとおりです。
 

・日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていない人
・20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満の人
・厚生年金保険、共済組合等に加入していない人

 
例えば、未納期間と同じ2年間を任意加入すると、令和6年度の国民年金保険料で計算して「月額1万6980円×24ヶ月=40万7520円」の支払いが必要です。しかし、90歳まで25年間年金を受給したと仮定した場合、100万円以上受給額が増えることを考えると、制度を利用するメリットは小さくありません。
 

まとめ

国民年金保険料は「学生納付特例制度」などの利用で納付猶予を受けていない場合、2年で時効を迎え、それ以降は保険料を納付できません。未納になってしまうと将来の年金額が減少してしまいますが、国民年金の任意加入制度の利用で減少を回避することは可能です。
 
本記事でも説明したように、就職したばかりの社会人1年目では、未納分まで納付する余裕はないかもしれませんが、まずは未納になるデメリットを正しく理解した上で、どのような方法を選択するか検討してみましょう。
 

出典

日本年金機構 任意加入制度
 
執筆者:松尾知真
FP2級