■要約



MonotaRO<3064>は、大阪府大阪市※に本社を置く、間接資材のインターネット通販会社である。間接資材は、製造工程で使用される研磨剤やドリル、軍手など品目が多種にわたり、業種により個別性が高い。間接資材の市場規模は5〜10兆円で、主な販売チャネルは訪問工具商・金物屋・自動車部品商などであり、特にインターネット通販チャネルの成長性は高い。同業他社には、アスクル<2678>、ミスミグループ本社<9962>、アマゾンジャパン(同)などがある。



※2023年11月、本社を兵庫県尼崎市から大阪市北区「JPタワー大阪」に移転した。今後、業務効率化と生産性向上をさらに推し進めるとともに、社員相互のコミュニケーションを活性化させ、さらなる成長を図ることを目的とした移転である。そのため、1フロアが約4,000m2の広さを生かし、一人ひとりの社員がクリエイティブなアイデアを自由に出し合い、セレンディピティを高めて協創を生み出せるようなスペースと打合せブースを多く設けている。





同社のビジネスモデルの特徴は、同一の価格で間接資材を販売するという点である。不透明な価格での購入を強いられることが多かった中小企業を中心に支持を受け、ニッチ市場における専門通販業者として確固たる地位を確立した。近年は大企業との連携による購買管理システム事業も急成長しており、売上構成比は3割を超える。2024年3月末現在で9,350千口座の顧客に対して2,300万点を超えるアイテムを取り扱い、55.9万点を自社センターから出荷する。ロングテールの圧倒的な品揃え、コストパフォーマンスに優れるPB商品(33.1万点)、サイトでの商品推薦や短いリードタイムなど、同社の間接資材プラットフォームは他社と差別化されており、2ケタ以上の高い成長を継続している。加えて、ROE27.5%(2023年12月期)、自己資本比率69.8%(2024年3月末)と、収益性・安全性ともに際立つ業績である。同社を率いるのは、2024年1月に新たに代表執行役社長に就任した田村咲耶(たむらさくや)氏である。田村社長は、サプライチェーンマネジメント部門でキャリアをスタートし、新型コロナウイルス感染症拡大時の対応や猪名川DCの計画・運用などにおいて成果を上げ、マーケティング、カスタマーエクスペリエンス(CX)マネジメント、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)などの経験を積んできた。10年以上にわたり同社の成長をけん引してきた前 代表執行役社長の鈴木雅哉(すずきまさや)氏は、代表執行役会長として経営全般・海外分野などを担当している。



1. 2024年12月期第1四半期の単体業績

2024年12月期第1四半期単体業績は、売上高は前年同期比11.2%増の66,288百万円、営業利益は同12.3%増の9,305百万円、四半期純利益は同11.3%増の6,488百万円となり、売上高・各利益ともに2ケタ増となった。期初計画比では、売上高でほぼ計画どおり、各利益では計画を上回った。主力の事業者向けネット通販事業及び購買管理システム事業(大企業連携)の売上高は、ほぼ計画どおり推移した。事業者向けネット通販事業では、注文単価の上昇が増収の原動力となった。顧客数は前期末比244千口座増と計画未達ながらも堅調に増加した。購買管理システム事業(大企業連携)単独では、注文顧客数増により引き続き前年同期比30.4%増と高い成長となり、全社売上高に対する構成比で30%を超えた。



2. 2024年12月期の連結業績見通し

2024年12月期の連結業績は、売上高は前期比12.7%増の286,570百万円、営業利益は同14.4%増の35,820百万円、経常利益は同13.6%増の35,835百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同15.1%増の25,096百万円と、売上高・各利益ともに期初計画どおり10%増を超える成長を見込んでいる。



売上高に関しては、前期の増収率並みの予想で依然として高い成長を見込む。ネット通販事業・新規に関しては、前期からやや目標は下がるが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)がより高い法人は獲得数を増加させる計画である。顧客の購買拡大を目的にパーソナライズ化や統合マーケティングを推進するなど、施策の精緻化を推進する。購買管理システム事業(大企業連携)に関しては、引き続き高成長を見込む。2024年12月期第1四半期を終えて、通期の売上高計画に対する進捗率は24.1%(前年同期は24.4%)と前期並みである。



売上総利益率は、大企業連携売上比率の上昇などを理由にやや下降に転じる予想である。販管費率は、箱当たりの売上の増加などにより改善を見込む。結果として、営業利益率12.5%(前期比0.2ポイント増)を予想する。通期の営業利益計画に対する第1四半期の進捗率は24.8%(前年同期は25.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益計画に対する進捗率は24.9%(前年同期は26.1%)といずれも順調に推移する。円安など外部環境の不透明さはあるものの、大企業連携の高成長や猪名川DCの生産性向上など改善策が奏功しており、順調に第1四半期を滑り出したと弊社では考えている。前期に手応えをつかんだ新しいマーケティング手法の効果は予算に織り込んでおらず、期中に効果が顕在化する可能性がある。



■Key Points

・2024年12月期第1四半期は、売上高・各利益ともに前年同期比10%増を超える成長。大企業連携売上高の構成比が3割を超える

・2024年12月期第1四半期時点の売上高・営業利益の進捗率は順調で、通期では売上高2,865億円、営業利益358億円を見込む

・新しいマーケティング手法の効果は予算に織り込んでおらず、期中に効果が顕在化する可能性



(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)