2023(令和5)年度時点で福島県内の公立小中高校に通う外国籍の子どもは311人で、このうち3分の1超の113人が日本語を十分に理解できず支援を必要としていた。過去最多となったが、個々の子どもへの対応は県国際交流協会やボランティアに頼っているのが現状で、外国籍の子どもの学びを保障する体制づくりが追い付いていない。県立高の外国人特別枠の受験条件が実態に合っていないとして改善を訴える声もあり、支援団体は9日、県教委に出願資格の拡大を求める。


 県内で学ぶ外国籍の子どもと、日本語の支援が必要な子どもの数の推移は【グラフ】の通り。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生で一時、減少したが近年は増加傾向にある。コロナ禍が落ち着き、日本で働く外国人が家族を呼び寄せやすくなったことなどが背景にある。

 県教委によると、近年は東南アジアからの来県などで母語が多様化し、日本語の指導が難しくなっているという。県教委は新たな支援策の必要性を認識しているが、県国際交流協会や市町村教委に委ねているのが実態だ。協会は市町村教委の依頼を受け学校に支援員を派遣しているが指導は1回当たり2時間で、授業を理解できるまで日本語能力を伸ばせていないという。授業についていけずに学習意欲を失い、不登校につながる事例もある。

 影響は高校入試にも表れている。県教委は「来日3年以内」を条件に外国人生徒の特別選抜の定員枠を県立高7校に設けている。今春は10人が志願したが合格者は5人だった。県内六つの支援団体は「3年以内」の条件は厳しすぎるとし、外国から来た生徒の進学の道が閉ざされないよう「来日6年以内」にすべきだと訴える。9日に県教委に要望書を提出する予定だ。

 いわき市国際交流協会は市教委の依頼を受け各校にボランティアを派遣している。ボランティア有志による「おひさま日本語教室」の石川知子代表は「子どもの母語や日本語の能力はさまざまで、限られた時間と人数で指導するのは限界がある」と実情を明かす。教室に通う女子高生(17)は中国から来日して1年余りになるが、漢字の読み方の違いが学力向上の妨げになっているという。「日常的な日本語を話せても国語や社会の科目を理解するのに苦労する」と話す。

 他県では環境整備に向けた取り組みが進む。青森県では日本語支援の必要がある子どもが転入した際、関係者が連携して指導計画を作る仕組みを導入した。弘前大大学院教育学研究科の吉田美穂教授らがNPO法人を組織し、教育委員会や学校などとネットワークを構築して指導者育成や子ども同士の交流の場づくりなども進めている。吉田教授は授業や試験で使われる学習言語の取得には5〜7年かかると指摘。「子どもの学びを保障し、日本人の子どもたちも多様性を感じながら育つことができる環境が必要だ」と語る。