浪江町の「かもめミライ水産」が町内の北産業団地に建設していたサバの陸上養殖実証施設「陸上養殖イノベーションセンター」が完成した。23日、関係者向けの事業計画説明会と内覧会が開かれ、養殖する生食用のマサバのブランドを「福の鯖(さば)」と銘打ち、来春の初出荷を目指すと発表。大沢公伸社長は「持続可能な水産業を確立し、浪江の新たな特産品として復興に貢献したい」と語った。
 かもめミライ水産はプラント大手の日揮(横浜市)、いわき魚類(いわき市)の出資により2021年8月に設立した。北産業団地の敷地7800平方メートルに二つの養殖棟、管理棟、排水処理設備などを整備。太陽光パネルも設置し、センターの電力の一部を賄う。養殖棟にはサバを養殖する水槽を計18システム備え、管理棟には魚を出荷するための作業場も設けた。地元から正社員5人、パート社員2人を雇用した。
 養殖技術は浪江町の水道水に塩を添加した人工海水を浄化しながら循環利用する「完全閉鎖循環式」を採用し、規模は東日本最大級。6月中旬にも養殖を始め、来年春に初出荷する。27年に最大生産量の年間60トンを見込む。28年から国内で大規模な生産展開、32年からは海外展開を視野に入れる。人工知能(AI)で飼育環境を制御するシステムの開発、生産コストの低減、市場開拓などの事業を進めながら、アニサキスなど寄生虫の心配がない生食用サバの生産を確立させる。
 ブランド「福の鯖」は福島産のサバ、食べた人が幸福になるサバとして名付け、商標登録した。サバの生食文化は西日本では根付く一方、東日本では食中毒などを背景に浸透していない。大沢社長は「東日本の皆さんに生食用のサバを提供し、新しい価値を届けたい」と語る。吉田栄光町長は「浪江町の水産業の発展に大きく貢献するものと期待している」と述べた。