"富岡魂"で五輪に挑む。バドミントンのパリ五輪代表に選ばれた女子シングルスの大堀彩(27)=トナミ運輸、会津若松市出身=と男子ダブルスの保木卓朗(28)、小林優吾(28)組(トナミ運輸)、混合ダブルスの渡辺勇大(26)、東野有紗(27)組(BIPROGY)。富岡高卒で中学、高校を本県で過ごした5人は「富岡魂で頑張り、みんなでいい成績を出したい」と思いを募らせた。
 大堀、初舞台は「集大成」
 「バドミントン人生の集大成を見せる」。初めての五輪切符を手にした大堀は晴れやかな表情で、気持ちを高ぶらせた。
 ここ数年「引退」も考えた。東京五輪出場を逃した後の2021年、グレードの高い国際大会に優先派遣されるA代表からB代表に降格。「もうこれ以上頑張っても報われないんじゃないかと。やる意味を見失いかけた」
 A代表に復帰し、昨年5月に始まったパリ五輪選考レースでも思うように勝てなかった。世界との差は縮まらず、国内を見ても若い世代が台頭するプレッシャーも感じた。「実力に限界を感じてしまった」。だからこそ変化を模索する日々だった。
 転機は、昨年10月のアジア大会。女子のエース山口茜がけがで団体戦の準決勝を急きょ欠場し、大堀に第1試合のシングルスが託された。「3、4番手で、第1シングルスを任されたことなんてなかった。今まで感じたことのない責任感を大舞台で知った」と覚悟が芽生えた。
 この試合は敗れたが、個人戦では東京五輪2位の台湾の選手を破る金星を挙げ、銅メダルを獲得。五輪選考レースでも結果が出始め、元世界女王の奥原希望との代表争いを制した。
 高校卒業から約10年。「苦しいことしかなかった」という中で、あがいて光を見いだし、子どもの頃からずっと憧れてきた五輪にようやくたどり着いた。
 「本当に挫折を何度も何度も味わった。ただ、ここまで来た以上は、結果の出ない私を支えてくれた皆さんへの感謝の気持ちを、コートの中で最大限発揮したい」。苦難を味わってきた大堀らしい言葉で、夢舞台への意気込みを語った。(佐藤智哉)
 ワタガシ、今度こそ「金」
 混合ダブルスの渡辺、東野は、銅メダルを獲得した東京五輪に続く、2大会連続の表彰台を目指す。狙うメダルは前回よりも輝く色だ。渡辺は「金メダルを獲得できるように頑張りたい」と決意を口にした。
 渡辺は男子ダブルスでも東京五輪に出場したが、パリに向けては、混合ダブルスに絞り練習を積んできた。「2人の会話も増えた。単純に練習も倍になったと考えればプラスなことばかりだ」と渡辺。2度目の五輪へ、手応えは十分だ。
 新型コロナウイルス禍で無観客だった東京五輪とは環境が一変し、パリでは観客の応援も復活する。東野は「(試合会場に)家族が来られたり、観客が入れたりするのもすごく楽しみ。東京五輪は悔しい思いをした中で、楽しんで自分たちらしいプレーをしたい」と万全の準備を整える。
 ホキコバ、高め合う「絆」
 男子ダブルスの「ホキコバ」こと保木と小林は"コンビ愛"をうかがわせる掛け合いで記者会見の会場を和やかな雰囲気に包んだ。意気込みを聞かれた保木が「チャンスボールをつくって、世界一の小林のスマッシュを見てもらいたい」と語れば、小林が「保木のスピーディーな前衛と巧みなサービスを見てほしい」と応じ、互いに顔をほころばせた。
 富岡高1年からペアを組んでいる。2019年の世界選手権では2位となったが、好不調の波があり東京五輪は日本勢3番手で出場を逃した。
 そんな2人に東京五輪後変化が起きた。日本勢1、2番手で東京五輪に出場した2組がペアを解消。「ホキコバ」が日本の男子ダブルスで1番手のペアとなり、立場が2人を成長に導いた。
 当初は「男子ダブルスが穴だ」と交流サイト(SNS)で書かれるなど、バドミントンファンからの風当たりが強かった。周りのざわめきに「見返してやろう」と話し合い、結束力を高めた。21年12月の世界選手権で日本勢初の優勝を果たして名実ともにエースに上り詰め、パリ五輪選考レースも結果を残し続けた。
 五輪では男子ダブルスで日本がメダルを獲得したことはない。保木は「日本史上初をもう一つ増やしたい」と力を込めた。