ブンデスリーガ初優勝のレバークーゼン、フィジカル全盛時代に証明したもの

 レバークーゼンのブンデスリーガ優勝が決まった。第29節でブレーメンを5-0で破り、無敗のまま優勝が決定(25勝4分の無敗優勝はドイツ史上初の快挙)。クラブ創設120年で初のリーグタイトル獲得だった。

 シャビ・アロンソ監督は選手時代に名手として知られていたが、監督としても素晴らしい手腕を発揮している。

 戦術的に目立つのはビルドアップでの距離感の近さ。近い距離感のテンポの良いパスワークで相手を釣り出し、縦パスを入れると一気にスピードアップする。いわゆる「擬似カウンター」の仕組みなのだが、特筆すべきは攻め込みの速さ、スムーズさだ。

 パスは主に人から人へ、つながっていく。得点シーンはいとも簡単にパスがつながってシュートに至っているものが多く、特別に何かしているとか、飛びぬけてスピード感があるというわけではない。

 例えば、スペースへパスが出て、FWが俊足を飛ばして追い付いて突破するような「速さ」ではないのだ。また、このような攻め込みは速いように見えて、実はそんなに速くもない。ボールがスペースへ出されてからFWが追い付くまで、状況的には何も変化がないからだ。守備側は次への予測が容易で、FWがボールに追い付くまでにそれなりの準備ができる。

 一方、レバークーゼンのように人から人へ正確なパスがつながっている攻撃は、ボールが誰のものでもないプレーの空白が短い。守備側はその都度、新たな予測と対応を迫られる。パスが渡ったその先がどうなるのかは、ある程度の予測はできるとしても、攻撃側が予想外のプレーをしてくる可能性は常にある。短い時間に人から人へボールが動くたびに、守備側は新たな予測が必要になり、対応のための時間はほとんど与えられない。結果としてずっと後手にならざるを得ない。

 つまり、レバークーゼンの攻め込みは相対的に「速い」わけだ。

 速度としての速さというより、サッカーの実体としての速さである。ツボにハマった時のレバークーゼンの攻め込みは、無駄なくダイレクトに相手ゴールへ向かっていく。「人から人へ」と書いたが、おそらくもっとピンポイントの意識でパスをつないでいるのではないか。「人」と言うより「右足」、あるいは「右足の数センチ前」というようにパスの時に意識する単位が違う気がする。その正確さが、速さの源になっている。

 走る速さではなく、プレーの速さだ。ボールを正確に扱うことが、結局のところ一番速い。フィジカル的な要素が際立つ近年のサッカーだが、やはりボールゲームなのだということをレバークーゼンは気づかせてくれる。ビルツのような逸材もいるとはいえ、1人のスーパースターに頼らなくてもスーパーなチームはできることも証明した。

 選手時代のシャビ・アロンソはピンポイントのロングパスが特徴だった。選手としての経験が生かされているのだろう。

FOOTBALL ZONE編集部