広島VS湘南で起こったワンシーンに注目

 スポーツチャンネル「DAZN」による、今シーズンの審判に関する新番組「Jリーグ審判レポート」が配信され、ファウルによるPKの有無が議論された。

 取り上げられたのは4月7日のJ1リーグ第7節、サンフレッチェ広島と湘南ベルマーレの試合の前半14分、湘南のFWルキアンがペナルティーエリア内に入って広島DF中野就斗との接触で転倒した場面だった。ここでは、中野の手が背後からルキアンにかかり、足の接触もあるように見える。上田益也レフェリーはノーファウルと判断し、西村雄一VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入もなかった。

 日本サッカー協会(JFA)の廣瀬格審判インストラクターは、判定の理由について「1つはルキアン選手の動き、右足をどう見るか」と、中野が追いかけてくる側に右足を踏み込んでいるように見える部分を挙げ、ゲスト出演した元日本代表DF太田宏介氏に意見を求めた。太田氏は「シュートを打つよりも、中野選手の前に入ろうとする右足」とコメントした。

 そのうえで太田氏は「映像を見ると、中野選手の左手がルキアン選手の右手に引っ掛かっているように見えるし、この後に足の接触もある」とした一方で、「ただ、ルキアン選手の立場からすると相手DFの前に身体を入れて入った時点で、(手が)掛かっている肩への圧力はそんなに感じていないと思う。足も、あんまり当たっている、引っ掛かっている感触はないと思う」と話した。

 また、廣瀬インストラクターはルキアンの右足がイニシエート(接触を誘発する行為)に該当するかについて「確かに右足の動きは不自然にも見えるが、一方でボールをコントロールすることで保持し続けようとする一連の動きにも見える。これがイニシエートかは、なかなか白黒がつけられないもの」と話した。

 そして「攻撃側の動きだけを見てしまうとPKに見えてしまうので、守備側選手の動きも見て総合的に判断することが求められる。ルキアン選手の右足も正当なプレーとみることができるし、中野選手がそこに走るのも正当なプレー。その正当なプレーの中で接触が起きたのでノーファウルとしたレフェリーの判断は間違いないと思う。ただ、ここで中野選手にタックル、ボールに向かって足を出す行為があるとまた違ってくる」と解説していた。

 この場面のVARルームの音声も公開され、主審のノーファウルの判断のあとに4画面でチェックしている西村VARによる「両方だよね、これどうするかだね。右足、ルキアンが出しているのもあるからね」として、「チェック、コンプリート(判定変更なし)」の交信。そして「ルキアンもコースに足を出していることによって、15(中野)との接触になっています」とレフェリーにコメント。「(中野の)手はかかるけど下で(ルキアンが)右足も出しているからね」という音声も入っていた。

FOOTBALL ZONE編集部