●リバプール監督後任はX・アロンソではなく…

 リバプールに数多くのタイトルをもたらしたユルゲン・クロップ監督が、2023/24シーズン限りでクラブを離れることになった。すでに後任候補には何人かの名が挙がっているが、なかでも有力視されているのがポルトガル人のルベン・アモリムだ。アモリムとは、果たしてどんな人物なのか。そして彼がリバプールに来た場合、日本代表MF遠藤航に居場所はあるのだろうか。(文:内藤秀明)

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 3月29日、リバプールファンに激震が走った。移籍情報に精通しているファブリツィオ・ロマーノ記者が、「リバプールはもうシャビ・アロンソを待つことはないだろう。バイエルンはシャビが正式な決断を下すまで待つ構えだが、アロンソは2025年6月までレバークーゼンに留まると見られている」とXでポストしたからだ。

 今年1月、ユルゲン・クロップの今夏での退任が決まって以降、多くのリバプールファンが、現在レバークーゼンで旋風を巻き起こしているX・アロンソがドイツ人監督の後任になると信じていたのではないか。いや実際のところ、クロップロスから目を背けるために、そんな理想的な人事が確実に起こると信じたかっただけなのかもしれない。確かに、スティーブ・ジェラードの監督キャリアが第一線からドロップアウトして以降、トップレベルのOB監督は、若く知的なスペイン人監督しか残っていない。彼に希望を託すのは自然な流れだ。

 ただリバプールファンはそこまで悲観的にならなくてもいいはずだ。現時点で後任の有力候補とされているルベン・アモリムは、イギリス北西部でのプレー経験こそないが、X・アロンソにも負けない名将だ。

 では仮に、アモリムがリバプールの監督になったとして、どのような戦術でどのような選手起用をするのだろうか。そしてサッカー日本代表MF遠藤航はどのような使われ方をするのか。

●ルベン・アモリムとはどんな人物か?

 ルベン・アモリムは、ベンフィカなどポルトガル国内で選手キャリアを積み上げた人物だ。中盤としてプレーしてきた39歳は、現在スポルティングCPの監督として、国内で優勝争いをしている。

 元々、2018年に当時3部のカーザ・ピアで監督キャリアをスタートしたアモリムは、2019年の12月にブラガのトップチームの監督に就任すると、シーズン途中の翌年3月に名門スポルティングCPの監督に異動するというスピード出世を成し遂げている。

 加えてフルシーズン初年度となる2020/21シーズンには長らくリーグタイトルから遠のいていた名門に19年ぶりにリーグ優勝をもたらすという快挙まで成し遂げていた。当時まだ36歳のことである。

 その後はリーグタイトルを獲得できていないが、常に上位を維持している。欧州の舞台でも2021/22シーズンには、UEFAヨーロッパリーグ(EL)でベスト4に進出するなどの成果を残した。

 そんな若き名将の戦い方は、3-4-3を基軸に強度の高い守備とダイレクトなサッカーが特徴的である。

『Opta Analys』によると3月7日時点でのダイレクトアタックの数はリーグトップの57回という数字を残している。このダイレクトアタックとは、50%以上がバックパスではなく相手ゴールに向かうパスで、かつ自陣から始まったパスワークで相手ボックス内まで辿り着いた回数を指すスタッツだ。これが高ければ高いほど、自陣から縦への意識が強いパスワークで、決定機を演出していることを意味する。

 例えばウイングバックからの横パスをボランチがダイレクトで縦パスを入れると、ストライカーが前線でキープしてシャドウに繋ぎ、もう一人のボランチが追い越していき、そこにパスが出る。そんなサッカーをアモリムは志向している。このエネルギッシュなサッカーは、どこかクロップリバプールを彷彿とさせる。

 そんなサッカーにおいて日本代表MF遠藤航はどう使われるのか。3-4-3のボランチは主に二つの役割に分かれる。

●遠藤航に居場所はあるのか?

 一つはアンカーとしてゲームをコントロールする役割、もう一つは最終ラインの裏のスペースにも飛び込んでいくようなボックス・トゥ・ボックスの役割だ。後者は日本代表MF守田英正が務めているので、日本サッカーファンにはどういうものかを想像しやすいのではないだろうか。

 リバプールのスカッドでストレートにこの役割の選手たちを選ぶとするなら、前者はアルゼンチン代表MFアレクシス・マック・アリスター、後者はハンガリー代表MFドミニク・ショボスライが適任か。

 こう考えると遠藤は今のように中盤の絶対的なスタメンではなくなる可能性はある。ただし遠藤のプレータイムが一気に減るとも考えにくい。例えば強豪と戦うために守備強度を上げたい場合、遠藤をマック・アリスターのポジションに当てはめることになるはずだ。その際はこれまでよりも縦パスを当てる意識が求められるだろうが、知性溢れる日本代表MFなら適応する可能性は十分ある。

 何よりこのシステムであれば、遠藤は3バックの一角で起用される可能性がある。来季のリバプールは、オランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイク、イングランド代表DFジョー・ゴメス、イングランドU-21代表ジャレル・クアンサー、フランス代表DFイブラヒマ・コナテら、即戦力のCBが4人しかいない。 3バックをするには明らかに人員不足だ。

 もちろん補強の可能性はあるが、2人も3人も一気に補強できるほど潤沢な予算は今のリバプールにはない。遠藤を3バックの右や真ん中で使う機会は必ずある。

 現在の遠藤は4-3-3のアンカーとして守備職人っぷりを世界中に見せつけている。これはこれで間違いなく素晴らしい成果である。しかしポルトガル人監督がイングランド北部の港町に来ることになれば、守備的なポジションでのマルチロールとしてさらなる進化を遂げるのではないか。それはフランクフルトで長谷部誠が既に歩んだ道のりに近いことを考えると、遠藤にとっても十分可能性のある未来だ。

(文:内藤秀明)

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