●FW:ルベン・ファン・ボメル(U21オランダ代表)

優れた才能を持った若きサッカー選手の中には、レジェンドプレーヤーを父親に持つ選手が稀にいる。父親を彷彿とさせる選手もいれば、父親とは全く異なるポジションを主戦場にしている選手もいるなど、その特徴は様々だ。今回はサッカー界に名を残した偉大な父を持つ2世選手を紹介する。(情報は4月13日時点の『transfermarkt』を参照)
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生年月日:2004年8月3日
所属クラブ:AZアルクマール(オランダ)
父親:マルク・ファン・ボメル

 オランダには、同国のレジェンドプレイヤーたちを唸らせている2世タレントがいる。

 AZアルクマール(オランダ)でプレーするルベン・ファン・ボメルは、元オランダ代表MFマルク・ファン・ボメルの息子。アグレッシブなタックルを持ち味とする守備的MFであった父親とは異なり、現在19歳のルベンは左ウィングを主戦場としている。

 マーストリヒト(オランダ2部)でプロデビューを果たしたルベンは、昨季リーグ戦31試合で15ゴール3アシストというプロ1年目ながら圧巻の数字を叩き出した。この活躍が認められて昨夏にAZへの完全移籍を果たし、今季は同クラブでリーグ戦24試合に出場し、4ゴール1アシストを記録している。

 目を引くのが、ウィングの選手ながら身長191㎝とサイズがあり、右足から放たれるシュートの威力が凄まじいことだ。長いストライドを活かして相手DFを突き放し、カットインからゴールネットを揺らすプレーを得意としている。このあたりの魅力は父親譲りなのかも知れない。マルクも身長が高く、ポジション的にゴール数こそ少ないものの、エリア外からのミドルシュートに定評があった。

 一方で、伸び代があるのが逆足である左足の使用頻度。ドリブルやシュートはほとんど右足で、相手チームにとってさらに危険な選手になるためには、もっと左足を使わなければならない。

 このような課題は残るが、既にルベンが受けている評価は高い。ファン・ボメル2世について、元オランダ代表FWピエール・ファン・ホーイドンク氏は「彼はすべてをコントロールしている。速いし、フィニッシュも繊細だ」と絶賛しており、ファン・デル・ファールト氏も「私は彼の大ファンだ」と発言したと現地メディア『NOS』は伝えている。今から彼に注目しておいて損はないだろう。

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●FW:エティエンヌ・エトー(U23カメルーン代表)
生年月日:2002年8月18日
所属クラブ:ゴジャド・ビシャルバ(スペイン)
父親:サミュエル・エトー

 元カメルーン代表FWサミュエル・エトーは、アフリカ最高の選手の1人だ。爆発的なスピードで駆け上がってゴールネットを揺らす彼の姿を私たちは何度見たことだろう。

 その息子エティエンヌ・エトーも、父親と同じく優れたストライカーになるかもしれない。現在21歳のエティエンヌは、ラージョ・マハダオンダ(スペイン3部)のリザーブチームであるゴジャド・ビシャルバに在籍。ここから頭角を現していくことが期待されている。

 彼の魅力は、キック精度の高さにある。2021年2月にモーリタニアで開催されたアフリカU20ネイションズカップでは、U20カメルーン代表デビューとなったモザンビーク戦で2ゴール。前半開始早々にフリーキックからゴールを奪うと、前半終了間際にもゴールネットを揺らして、チームの勝利に貢献した。まだまだ成長すべき点はあるが、強烈なミドルシュートや味方への正確なグラウンダーパスなど、自慢のキック精度が生かされた場面が多くあった印象だ。

 加えて、身長189㎝と恵まれた体格を有しているため足が速く、エアバトルにも強い。スペインの地でさらに成長することが出来れば、スケールの大きいフォワードになる可能性も十二分にある。父を超えるポテンシャルを秘めた有望選手だ。

●FW:アンドリ・グジョンセン(アイスランド代表)
生年月日:2002年1月29日
所属クラブ:リンビー(デンマーク)
父親:エイドゥル・グジョンセン

 アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)とも比較される、才能豊かな2世サッカー選手をご存知だろうか。

 その選手の名前は、アンドリ・グジョンセン。2000年代初頭にチェルシーやバルセロナなどで活躍した元アイスランド代表MF エイドゥル・グジョンセンの息子である。レアル・マドリード(スペイン)のリザーブチームであるカスティージャ出身のアンドリは、世代別アイスランド代表への招集を経て、2021年9月に19歳の若さでA代表デビューを果たした。

 2022年夏にエル・ブランコを離れて、ノルショーピング(スウェーデン)への完全移籍を果たした同選手は、昨夏に今季終了までリンビー(デンマーク)へレンタル移籍されることが発表された。この移籍に対してクラブのフットボールマネージャーは「アンドリは信じられないほど才能がある選手で、我々は過去数回の移籍市場で獲得を試みてきた。今、私たちは遂に成功した」(リンビー公式サイト)と、大きな喜びと期待を隠さなかった。

 そのプレースタイルは、純粋なストライカータイプだ。カスティージャ時代には「ミニ・ハーランド」と呼ばれることも少なくなかった。身長185㎝の高さを生かしたダイナミックなプレーが魅力的で、左右両足、そして頭を自由に使ってゴールネットを揺らすことができる。今季はリンビーでリーグ戦20試合に出場し、9ゴール(右足4・左足2・ヘディング3)を記録中だ。

 また、その大柄な体格からは想像しにくいが「しなやかさ」も持ち合わせている。そのためポストプレーを苦手としておらず、選手が密集したエリアでボールを受けても巧みなボディコントロールでボールを守り、鮮やかな足捌きで味方選手にボールを供給する。まだまだ荒削りな部分は残るものの、現代FWに必要な素質をバランスよく兼ね備えていると言えるだろう。

 若きストライカーは、この武者修行を通してさらに評価を上げるかもしれない。「グジョンセン」と言えば、アンドリ・グジョンセン。そんな時代が来ることを楽しみに待とう。

●FW:シャキール・ファン・ペルシ(U17オランダ代表)
生年月日:2006年11月16日
所属クラブ:フェイエノールトU19(オランダ)
父親:ロビン・ファン・ペルシ

 後方から放たれたロングボールに反応して裏へ抜け出し、華麗なダイビングヘッド。オランダ代表FWロビン・ファン・ペルシがFIFAワールドカップ・ブラジル大会で決めたゴールは、サッカー史に残る最も美しい瞬間の1つだ。

 そのゴールを再現することに成功したのが、他でもない、息子のシャキール・ファン・ペルシだ。2022年10月、シャキールがフェイエノールトU17のトレーニング中に決めたゴールが父親のゴールにそっくりだとSNS上で話題になった。

 現在17歳のシャキールは、元々マンチェスター・シティ(イングランド)のアカデミー出身。2015年に父親の移籍に合わせてフェネルバフチェ(トルコ)の下部組織に加入すると、その2年後にフェイエノールトの下部組織に籍を移した。2022年5月には15歳の若さでフェイエノールトと2025年夏までのプロ契約を締結し、「10歳からこのクラブでプレーしているので、本当に特別な日になった」とコメントを残している。

 注目したいのは、父親譲りのシュートの上手さだ。ゴール前では若さを感じさせない落ち着きぶりを見せ、ゴールキーパーの動きや足の位置を見て正確なフィニッシュを行うことができる。今季はフェイエノールトU19のメンバーとして、公式戦13試合に出場し4ゴールを奪っている。

 シャキールが偉大な父親と同じく、4年に1度の祭典で主人公となる日は来るのだろうか。彼の動向は今のうちから追っておきたい。

●FW:リアム・デラップ(U21イングランド代表)
生年月日:2003年2月8日
所属クラブ:ハル・シティ(イングランド2部)
父親:ロリー・デラップ

 かつて「人間発射台」の異名で知られたロングスローの名手ロリー・デラップの息子、リアム・デラップは大きな期待を受ける2世タレント選手である。

 マンチェスター・シティ(イングランド)の下部組織で育ったリアムは、今季からハル・シティ(イングランド2部)でプレーしている。センターフォワードを主戦場としており、今季はここまでリーグ戦26試合に出場して7ゴール2アシストを記録中だ。

 このU21イングランド代表FWの強みは、推進力あふれるドリブルにある。相手DFをかわしてサイドを駆け上がり、クロスから味方のゴールを演出することも出来れば、中に切り込んで自らゴールを狙うことも出来る。守備への貢献の低さが問題視されることもあるが、彼のドリブル技術は間違いなくハル・シティの攻撃に欠かせないものとなっている。

『The Sun』によれば、チームを率いるリアム・ロセニア監督は若きタレントの成長をさらに促進するために、アーリング・ハーランドやアンディ・コールなどの動画を見せているそうだ。一流選手のゴール前における動きを確認することで、フィニッシュワークに絡める機会がさらに増えるかもしれない。ゴールもチャンスメイクもできる万能型ストライカーが、トップレベルの舞台で躍動する日はそう遠くはないだろう。

 ちなみに、残念ながらリアムは父親のようにロングスローを武器にはしていない。その理由を『Stoke on Trent Live』は、「口うるさい親のせいだ」としている。同メディアによれば、リアムがシティの下部組織でプレーしていた時、選手の親の1人が、リアムのスローインが試合を台無しにしていると発言したそうだ。それ以来、彼がスローインを担当することは少なくなってしまった。

●GK:フィリップ・スタンコビッチ(セルビア代表)
生年月日:2002年2月25日
所属クラブ:サンプドリア(イタリア2部)
父親:デヤン・スタンコビッチ

 フィリップ・スタンコビッチは、成長が期待される若きゴールキーパーだ。

 元セルビア代表MFデヤン・スタンコビッチを父親に持つフィリップは、父親が活躍したインテル(イタリア)のアカデミー出身。2021年にFCフォレンダム(オランダ)へのレンタル移籍を経験し、同クラブの1部昇格に貢献すると、今季からはサンプドリア(イタリア)へレンタル移籍をしている。

 そのサンプドリアではフォレンダム時代に続いて正GKを任されており、ここまでリーグ戦31試合に出場して5度のクリーンシートを達成している。力強いセービングが魅力的なフィリップが、神がかったパフォーマンスを見せたのが第4節クレモネーゼ戦だ。1-1のドローで終わったこの試合で、フィリップは驚異の9セーブを披露(データサイト『Sofa Score』参照)。パス成功率は98%を記録し、チームが勝ち点1を持ち帰るのに大きく貢献したと言えるだろう。

 夢は、インテルの守護神になること。昨夏に日本で開催された『Inter Milan JAPAN TOUR 2023』でインテルでのトップチームデビューを果たした際には、「最高の気分だ。これは夢だ。私はインテルとともに、そしてインテルを見て育った。デビューできて良かった」(インテル公式サイト)と喜びを隠さなかった。

 ちなみに、インテルU19で主将を務めるDFアレクサンダル・スタンコビッチはフィリップの弟である。スタンコビッチ兄弟はネラッズーロ(インテルの愛称)の未来だ。

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