●MF:パイティム・カサミ(スイス)

 若くして才能を披露して高く評価された選手が、そのままスター選手として活躍し続ける保証はない。怪我やプレッシャーに苦しみコンディションを落とす選手がいれば、ピッチ外での問題で活躍の場を失っていく選手も多い。今回は大きな期待を背負いながらも、大舞台から姿を消したヨーロッパ人選手を紹介する。

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生年月日:1992年6月2日
主な在籍クラブ:フラム、オリンピアコス、バーゼル
現所属:サンプドリア(イタリア)

 元スイス代表MFパイティム・カサミが“天才“だったことは間違いない。2014年のFIFAプスカシュ賞にノミネートされたフラム時代に決めた衝撃的なボレーシュートが彼の優れた才能を証明している。

 カサミは14歳からプレーしたグラスホッパーからリバプールへのローン移籍を経て、16歳で迎えた2009年冬にラツィオに引き抜かれた。同年10月から行われたU-17ワールドカップで、中心選手としてスイス代表を優勝に導くなど、若くしてその才能に注目が集まっていた。

 一方で彼のキャリアは素行不良が原因で伸び悩んでいる。ラツィオでも練習を無断欠席したことでトップチームのトレーニングから外され、わずか1年足らずで母国スイスのベッリンツォーナへと放出された。そのベッリンツォーナでも無断欠席を繰り返したことで契約解除となり、2010年夏に再びイタリアへと戻る形でパレルモと契約している。

 キャリア当初で練習の無断欠席を繰り返した神童は、年齢を重ねた後も問題行動を繰り返す。オリンピアコス時代には相手サポーターを不用意に煽ったことで罰金の処分を受け、検察官にも起訴されて懲役8ヶ月の判決が下った。その間にユベントスとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)戦で決勝点を決めてローマやレバークーゼンなども獲得に興味を示していたが、彼の問題行動でそれらの移籍が実現しなかった。

 その後、ノッティンガム・フォレストやシオン、バーゼルなどでのプレーを経て昨夏にセリエBに降格したサンプドリアに加入。アンドレア・ピルロ監督からゲームキャプテンを任されるなど厚い信頼を得ており、チームは昇格プレーオフ圏内を目指して奮闘中だ。現在31歳とまだ老け込む年齢ではない。チームを昇格に導き、もう一度キャリアに花を咲かせることができるだろうか。

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