車の運転ができない人にとっては、外出の際に運転ができる家族はかなり頼りになる存在です。しかし、いつも運転してくれて当たり前といった態度ではいつか関係性にヒビが入ってしまいます。
今回はそんな車の運転に関する家族トラブルを経験した、私の知人Mさんに聞いたお話です。

運転手扱いをされる日々

Mさんは当時、友人の紹介で出会った旦那さんと結婚したばかりでした。

見た目がイケメンで性格の優しい旦那さんは、非の打ち所がない男性だと思っていたMさん。

しかし結婚してみるとすぐに、旦那さんが重度のマザコンであることがわかったのでした。

「じゃあ、次は母さんの病院。その後はデパート行ってくれ」
休日になると旦那さんはMさんに車の運転をさせ、同居しているお義母さんの用事の送迎をさせるのでした。
「……はい、わかりました」
「本当によかったわ、運転できるお嫁さん見つけてくれて」
「結婚相手の最低条件だったからな」
「さすが〇〇ちゃん(旦那さん)ね! 見る目があるわ!」
毎週呼び出されるので休日にゆっくり過ごすこともできず、うんざりしていたMさんでしたが、断ることもできずに黙々と運転をします。

「じゃあ、Mはここで待っててくれ。用事が終わったら連絡するからすぐ来てくれよ。さあ行こう、母さん」
旦那さんは、事故をしてケガをしたら大変だから、という理由でお義母さんに反対されたため、運転免許を持っていません。

そのため毎週Mさんをまるで運転手のように扱うのでした。

旦那と義母に報復!

休日の度に呼び出されることが何年も続き、たまりかねたMさんは仕事に使う資格の学校に通うため、送迎は隔週にして欲しいと旦那さんとお義母さんに頼みました。
「何言ってるんだよ、資格なんかより母さんの用事を優先してくれよ」
「〇〇ちゃんったらそんなこと言わないの。資格が取れたらまた元通りに運転してくれるならいいわよ」
「わかりました……」

それから3か月後、資格の取れたMさんは旦那さんに「もうお義母さんの送迎できるわよ」と告げたのでした。

一旦会社に寄ってから車で家に帰って来ると告げ、Mさんは家を出ました。
「着きましたよ」
そして家に戻り、電話で旦那さんとお義母さんを呼び出したMさん。

「お、お前なんだその格好!」
玄関から出てきた旦那さんは、Mさんの格好と車を見てびっくり。なんとMさんはタクシー会社の制服を着て、タクシーの運転席に乗って待っていたのです。
「あなた、私が何の資格を取るのか全然興味なかったものね。実はタクシーの運転手になれる免許を取って、先月からタクシー運転手として働いてるのよ」
「はあ!?」
「さ、お客様。今日は貸し切りですので行き先をどうぞ。もちろんお代は頂きます」
「なんで家族なのにお金払わなきゃいけないのよ! あなた、うちの嫁でしょ?」
「家族? 笑わせないでくださいよ、お義母さん。私の運転免許が狙いだったくせに。私のこと、運転手としか思ってなかったんでしょ? だから本物の運転手になったんですよ!」
Mさんはきっぱりと言い捨て、タクシーのドアを開けました。

「もう時間がないわ、とりあえず乗りましょう……」
今日の予定である美容院の予約時間が迫っていたため、お義母さんは渋々Mさんのタクシーに乗り込みました。

車を動かすたびにMさんが必ずメーターをセットするため、根負けしたお義母さんは全てタクシー料金を支払ってくれたとのことです。

その後何か車で出かける用事があるたびに旦那さんとお義母さんはMさんの顔色をうかがい、なんとか自家用車を出してくれるよう丁重に頼むようになりました。

ただMさんは旦那さんのマザコンに我慢ができず、結局は別の道を歩むことになったそうです。

車の運転ができずに不便なのはわかりますが、自分の都合で人を便利に使っていい理由にはなりませんよね。いつかはしっぺ返しが来るものだと学んだ出来事でした。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子