保護犬の現状

さて、環境省の統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によれば平成30年度の犬の引取りおよび処分数は、引取り35,535頭のうち、飼い主への返還あるいは新しい飼い主への譲渡ができたものが28,032頭。殺処分になったものが7,687頭となっている。

じつは返還・譲渡数そのものは平成16年度が25,297頭で約2,700頭ほどしか増えてはいない。


『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(著:小林孝延/風鳴舎)

しかし平成16年度は全引取り数が181,167頭でそのうち殺処分が155,870頭と目を覆いたくなる数字であった。これが、ここまで減少したのは民間の保護団体の努力にほかならない。彼らによる引取りが圧倒的に増えたことで、保健所での引取りが減り、殺処分も劇的に減少したのである。

しかし、それでもまだまだ足りないのが現状。

ペット先進国であるドイツ・ベルリンの保護施設ティアハイムでは、譲渡率は9割を超えるというし、アメリカ・ポートランドではペットショップは保護団体と積極的に連携し、犬を飼う人のほぼすべての人が保護犬を選んでいるという実態からすれば、まだまだ日本は遅れていると言わざるを得ない。

しかも海外の場合は飼育できる経済力があるか、家族全員の承諾はとれているのかなど、非常に厳しい審査があり、途中で飼い犬を放棄することができないようになっていることが多いのだ。

日本ではクレジットカード1枚で衝動的に犬を買う人が後を絶たない。

そして、思ったより手が掛かる、お金がたいへんだ、鳴き声がうるさい、というような信じられないほど安易な理由で保健所に持ち込む人がいるのだ。

こうした実情を詳しく知るようになったのは保護犬のことに興味をもってからだが、知れば知るほど僕の中では飼うなら保護犬しかない、まるで使命感のようなものさえ芽生え始めていた。