北陸新幹線の福井県内開業から1カ月。福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)は、新幹線延伸後の意識を探る読者アンケートを行い、450人から回答があった。「県内開業後、あなたのまちや暮らしの変化を実感していますか」との設問では「実感がある」は52%、「実感はない」は48%と、ほぼ半々の結果だった。

 「実感がある」と答えた人に具体的な変化の内容を選択肢から選んでもらったところ、「駅周辺がにぎやかになった」が最も多く、次いで「観光客が増えた」「商業施設の客が増えた」が続き、駅周辺での関連イベントなどによる“開業効果”が実感につながっている傾向がうかがえた。

 ただし、少数ながら「関西に行く頻度が減った」「中京方面に行く頻度が減った」の選択肢を選んだ人がいた。自由記述では「乗り換えが大変」「関西・中京への移動が不便になった」との回答もあり、新幹線開業に伴う負の側面を実感している人は少なくなかった。

 一方、「実感はない」と回答した人は、新幹線駅から離れていることなどを理由に挙げた。

 アンケートは多様な意見を探る目的で、紙面やふく特のLINE(ライン)などを通じて5〜9日に実施。県内外の10〜80代の男女から回答があった。

■デメリットも実感、冷めた意見も

 北陸新幹線に関するふく特のアンケートで「開業による変化」を実感した理由を尋ねると、メリットを挙げて前向きな意見が出そろった半面、乗り換えによる不便さや混雑する駐車場事情など、実際に直面したデメリットに対する不満の声が入り交じる結果となった。

 前向きな変化を実感している人は、駅周辺の活性化に加え、移動時間の短縮、乗り換えなしで首都圏に着く利便性の向上を理由に挙げた。「自宅から新幹線が見える」と景観の変化を指摘する人が複数いたほか、「メディアで福井が取り上げられるケースが増えた」「高揚感を感じる」などと開業ムードに対する受け止めも目立った。新幹線延伸で福井県が身近になり、就職活動の選択肢になったという県外出身者もいた。

 デメリットによる変化を実感した理由では、「関西・中京に向かうのが不便になった」「帰省が大変。乗り換えの時間が短く緊張した」「鯖江駅に特急が来なくなった」など、敦賀以北のJR在来線特急の廃止、敦賀駅での乗り換えなどに意見が集まった。新幹線駅の駐車場が満車となっている実情を挙げる人も少なくなかった。ホテルや飲食店の値上げ、新幹線沿線での振動・騒音を指摘する人も複数いた。

 「実感はない」の理由は、新幹線沿線から離れた地域からの冷めた意見が目立つ。嶺南西部や奥越をはじめ、新幹線開業前は在来線特急が通っていた鯖江、武生駅がある丹南からは「おおい、高浜地域からは全く変わらない」「鯖江市は蚊帳の外な感じ」といった声が寄せられた。「移動手段はやはり車」「日常で鉄道を使うことがない」と車社会の現状を改めて指摘する意見もあった。