1971年の国内野生絶滅から復活の取り組みが続く国の特別天然記念物コウノトリの雌雄2羽が今月初旬、岐阜県山県市に飛来した。2005年に兵庫県で放鳥が始まった国内繁殖のコウノトリは、今年1月末時点で369羽まで増え、日本海側を中心に12府県で繁殖が確認されている。目撃例の多い県内でも将来的な繁殖、定着の可能性が指摘されている。

 今月7日、「河川水辺の国勢調査アドバイザー」の梶浦敬一さん(81)=岐阜市=が、山県市郊外でたまたま見かけ、写真に収めた。水を張った田んぼで餌を探す姿に「春らしくて、ほのぼのとした」。まもなく飛び去ったという。

 兵庫県立コウノトリの郷公園(同県豊岡市)によると、足輪から京都府京丹後市生まれの3歳の雌と福井県越前市生まれの2歳の雄「きなこくん」と判明。2羽は今月3日に滋賀県長浜市で観察されていた。繁殖期にあたるこの時期は、巣を構えて産卵するつがいと、繁殖行動に至らず移動を続けるカップルがそれぞれおり、今回は後者とみられるという。

 梶浦さんが県内で確認したのは、13年に揖斐郡揖斐川町で撮影して以降、今回で8回目。同公園の布野隆之主任研究員(48)は「岐阜県は報告の頻度が高くなっており、そのうち繁殖する個体が出てくるのではないか」と指摘する。見かけたら驚かせないよう150メートル以上の十分な距離を保って観察するよう呼びかけている。

 日本野鳥の会岐阜によると、昨年夏にも西濃地方で複数の報告があるなど最近の飛来頻度は「把握が追いつかないぐらい」という。ただ、冬になると姿を消しており、「冬場は餌のカエルが冬眠してドジョウなどを食べるので、冬も水を張った田んぼのような餌場がないと繁殖は難しいのではないか」とみている。