新型コロナウイルス対策として、国が企業などに支給した雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の不正受給の発覚が相次いでいる。岐阜労働局によると、2023年度に判明した県内の不正受給件数は前年度の4・2倍の25件、不正受給額は4億1562万円に上り、件数、金額ともに過去最多だった。コロナ対策の特例措置は終了しているが、労働局はさかのぼって調査しており、不正受給件数はさらに増える見込み。

 岐阜労働局によると、20年4月〜24年3月に発覚した不正受給の件数は44件、金額は6億7467万円。従業員が働いていたのに「休業した」と偽るケースが最も多く、雇用をしていない人を「雇っている」と装う申請も判明した。国がスピーディーな支給をするために手続きを簡素化したことを受け、全国的に悪用するノウハウが広まったとみられる。

 全国の労働局は昨年4月以降、不正受給額が100万円以上の場合は自主申告で返金したケースを除き事業所名を公表している。県内ではこれまで14件を公表。主な業種では、飲食業が3件、美容業と縫製業、金属製品製造業がいずれも2件だった。

 東京商工リサーチのまとめでは、24年2月までに、全国で事業所名を公表されたのは1040件。このうち、同社の企業データベースに登録されていた776社を業種別に分けると、飲食業が107社と最も多く、建設業が100社、人材派遣や業務請負を含む他のサービス業が74社と続いた。コロナ禍で打撃を受けた対面サービスを主体とする業種が目立った。

 都道府県別では、東京、大阪、愛知の順に多く、岐阜は群馬や長野、和歌山とほぼ同数となっている。

 厚生労働省によると、全国で発覚した不正受給は23年12月末時点で2666件となり、不正受給額は約532億5千万円に上る。県内では今年1月に約750万円の不正受給をしたとして会社役員ら3人が詐欺容疑で逮捕されたほか、他県では社会保険労務士が関与した不正受給も明らかになっている。

 岐阜労働局の担当者は「不正受給は極めて遺憾。コロナ禍であっても許されることではない。厳正に対処していきたい」と話している。

 【雇用調整助成金】 企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が補塡(ほてん)する制度。パートやアルバイトら雇用保険未加入者には緊急雇用安定助成金が同様の形で支払われる。20年4月〜23年3月は、コロナ禍の営業自粛や人流抑制で業績悪化に苦しむ事業者の雇用を下支えするために特例措置を設け、要件を緩和し助成率を引き上げたほか、書類を減らすなどして手続きを簡素化した。県内では雇用調整、緊急雇用安定の各助成金を3年間で約14万6千件、総額約857億円を支給決定した。