練習はしているのに一向にゴルフが上手くならないという人も多いのではないでしょうか。その原因は、練習の内容にあります。近年、PGAツアープレーヤーを含むエリートゴルファーのレベルが上がっていることを耳にしたことがあると思いますが、その要因は弾道の可視化にあると言われています。「打球を知ること」がスウィングを進化させ、ゴルフ上達のポイントであることがわかってきました。

プロが日常的にやっている数ヤードの誤差にこだわる練習

練習は本番のように、本番は練習のように……。今ではほぼ見なくなった土の打席。上級者は練習マットを使わず、土の上に直にボールを置いて打っていました。これは、人工芝によるソールの横滑りを容認せず、きっちりとインパクトする感覚を覚えるためでした。コースを想定した「仮想ラウンド」も上級者の定番です。試合で回るコースレイアウトを想像しながら球を打つことで、本番と練習を近づける工夫をしたものです。

しかし、一番の問題はボールです。レンジボールと本番球では飛距離も違えば、球の高さも変わります。練習場内に設置されている距離の看板も、レンジボールに合わせてあるため、目安にすぎません。100ヤードの距離を練習したとしても、それは「だいたい100ヤード」といった曖昧な練習だったため、本番と連動する正確な距離感を身につけることはできませんでした。

今、練習場は大きく変わっており、打席から放った打球を数値化してくれる練習場が増えています。神奈川県横浜市にある「港南ゴルフセンター」もそのひとつ。4月1日から「トラックマンレンジ」となり、打球データを打ったその場で確認できるようになりました。

トラックマンレンジで計測できる項目は8つ。「キャリー」「トータル」「ボールスピード」「最高到達点」「打出角」「左右打出角」「キャリーサイド」「ピンから(の距離)」。これらがわかることで、今まで曖昧だったスウィングと打球の関係が明確になります。

誰もが一番知りたいのは、ドライバーの飛距離でしょう。「キャリー」「トータル」「ボールスピード」を見れば、自分がどれぐらい飛ばせているかがわかります。「えっ、180ヤードしかキャリーしていないの?」と、その数字に愕然とするかもしれませんが、それよりも、「練習は本番のように…」をテーマにすれば、「左右打出角」と「キャリーサイド」(左右の曲がり具合)が役立ちます。

フェアウェイの幅を30ヤード、ラフの幅は左右それぞれ15ヤードと想定した場合、ホール幅は60ヤードになります。打球のブレが左右15ヤード以内ならフェアウェイ、15ヤード以上ならラフ、30ヤードを超えたらOBになります。飛距離が出ることも大事ですが、本番では狙った幅の中にどれだけ正確に打てるかです。曲がり幅を知ることはゴルフ上達の重要なポイントになります。

西村コーチが教える練習法

ジュニアからプロ予備軍まで幅広い層のゴルファーを指導する西村至央ゴルフコーチ(ミライズゴルフアカデミー主宰)は、トラックマンレンジ活用のポイントは、「9番アイアンの打ち出し角」と、「100ヤード以内のキャリーの精度」だと言います。

「7番アイアンで練習する人がほとんどだと思いますが、昔から9番アイアンの飛距離の2倍がドライバーの飛距離と言われるので、9番アイアンを練習することで自身の飛距離目標もわかります。また、9番アイアンの適正飛距離を打つには打ち出し角が24〜26度以内にする必要があります」(西村)

9番アイアンの打ち出し角が30度以上ある場合は、ハンドファーストのインパクトが出来ていないことになります。35度の人がいきなり24度にすることは難しいが、目標値に向けたスウィング作りができるのが、トラックマンレンジの特徴になります。

「アドレスのカタチから腰を左に回した状態がインパクトになります。ゴルフのスウィングは前傾と回転でできています。前傾と回転ができれば打ち出し角24度ができます。上体が伸び上がると手元が浮き、ロフトが増えてしまいます。股関節と胸が下を向いた状態で前傾を作るのが目標ですが、最初はアドレスからインパクトまで胸を下に向ける意識でやってみてください」(西村)

100ヤードはゴルフの「ヘソ」とも言われる重要な基準点。「これなくして距離感は生まれません。何番アイアンで、何パーセントの力感で打ったらちょうど100ヤードキャリーになるのかを知ることが大切です」(西村)

50ヤード、70ヤードも重要で、キャリー手前3ヤード、奥2ヤードの誤差に留める練習をすることで劇的にスコアアップにつながることは間違いありません。

「クラブを振る力感、スピード感は100ヤード以内のコントロールショットで覚えることができます。これはドライバーの飛距離アップにもつながります」(西村)

左右のブレ(キャリーサイド)も修正ポイントを知ることができる。右手前にショートすることが多い場合は、「振り遅れ」が原因で、左に引っかけてオーバーする球が出る場合は、「打ち急ぎ」が原因となっているケースが多い。

「トップからの切り返しが重要で、手が早くてもダメ、体が起き上がってもダメ、手のカタチをできるだけ変えないまま腰の回転に合わせて、アドレスのカタチに戻すように振るようにしてください」(西村)

トラックマンレンジは、「レンジボールモード」と「コースボールモード」の選択ができます。コースボールモードは、風や打席階数に左右されることなく、そのスウィングで生み出される打球データを表示してくれるので、正確な距離感を覚えることができます。

「この練習はプロが日常的やっている練習です。練習の80%は100ヤード以内のコントロールショットと言っていいでしょう」(西村)

トラックマンレンジおすすめ練習法動画はこちら

取材協力/港南ゴルフセンター