幼少期からラグビーを始めて、5つのポジションの経験がある庵奥翔太選手。8年前からは最前列でスクラムを組む“プロップ”としてチームを支えている。「今もスクラムを日々勉強中」とさらなる成長を目指す庵奥選手は、チームNO.1の厚い胸板の持ち主。ラグビー以外の場所でも役に立っているそう!

―ポジションは一番後ろから一番前にチェンジ
ポジションは、今は一番前にいるプロップですけど、6歳でラグビーを始めてから中学まではバックスの選手でした。一番後ろのフルバックやスタンドオフだったので、キックやパスをしたり、ボールを持って駆け抜けたり、司令塔の役割もしていたんです。

高校の時はナンバーエイトで、攻撃と守備のチームの中心となるポジションでした。そのおかげでプロップの選手にしてはキックやパスのスキル、持久力が少しはある方だと思います。

プロップになったのは高校3年の夏。監督の指示でロックに変わったあと、最終的にプロップのポジションになったんです。新しいポジションにすぐには慣れることができなくて、大阪大会の決勝、高校最後の試合は出られずベンチでした。めちゃめちゃ悔しかったですね。それで「大学は1年から出たるわ!」って決意しました。

大学からは本格的にプロップを任されるようになりました。プロップは他のポジションとまったく違います。相手チームの選手を押し込む“スクラム”競技と、グラウンド全体を使って攻守をする“ラグビー”、2つのスポーツを同時にしているような感じです(笑)。なので、トレーニングも一から自分なりに頑張りました。

高校の時は腕や胸とか自分の好きな部位しか筋トレをしてなかったんですけど、大学に入ってからは、プロップに必要な首や肩、下半身も鍛えなおしました。同じポジションの先輩に鍛え方を聞いたり、トレーニングを一緒にやったりもしました。自分がわからないことを聞いて学ぶのは大切ですよね。

―新しいことを学ぶときはとことんポジティブに
ポジションが変わった時は、悩んだり戸惑ったりスクラムを学ぶことに必死で、ラグビーを楽しめなかったこともあります。練習をしていてもしんどいんですよね。そして、だんだんとしんどい練習を“させられてる”っていう気になる。

その思考だと、絶対にうまくならないですよね。今の環境を楽しまないと前に進まないんじゃないかって思い直したんです。だから、新しいポジションをもっと楽しもう、もっと深く知ろうって。「この技術も身につけるようになったら、プレーの幅も広がる。新しいラグビーの楽しみ方が見つけられるんじゃないかな」ってポジティブに考えることにしました。

今も「どういう風にしたらもっと強く組めるかな」と試合の映像を見たり、チームの同じポジションの選手たちと研究したりとスクラムを勉強する日々は続いていますが、ラグビーを楽しめています。

―相手チームの顔色を読んで勢いをつける
小さい頃から人の顔色を見て感情を読み取ることが割と得意なんですけど、スクラムを組んでいる時にそれが役に立ってます。相手の顔を見て「この選手、疲れてるな?」って感じたら「ここから崩していければ!」とか「もっと踏ん張れば押し切れるかも」と、よりパワーが出ますね。もちろん、僕は相手に読まれないようにしないといけないですけどね(笑)。

試合で勝っていても、スクラムで負けるとチームの勢いが弱くなったり士気が下がったりすることがあるんですよね。逆に、試合で負けてたらスクラムを頑張れば立て直せるかもしれないって思って、相手に畳み掛けることも。「ここで踏ん張らなければ」って、常にチームのために体を張らなければいけないポジションです。

小学校の頃の水泳やラグビーのコーチが怖かったから、顔色をうかがうことが自然に身についていったのかもしれない(笑)。

―チームNO.1を誇る胸板や強靭な体は満員電車でも役立つ
会社業務をする時は、オフィスまで電車に乗って通ってます。その時に、スクラムで鍛えた体が役に立っています。通勤や帰宅ラッシュ中は車内がギュウギュウになるので、前からも後ろからも人の体がバンバン当たってくるじゃないですか。

それでも人に押しつぶされることはないですし、流れに負けることもないです。体に幅があるので思った以上に人の圧がかかることがありますが、「ここで体がブレたら負けだ」と思って耐えてます(笑)。体幹を鍛える練習にもなっているかもしれません。

胸板は小さい頃から厚いんですよね。3歳から小学3年までやっていた水泳のおかげでもあるかも。あとはやっぱりベンチプレスやショルダープレスなどの筋トレでさらに厚くなったのかな。バーベルをかついでスクワットを繰り返したりして、下半身も鍛えてます。

―クレーンゲーム、お手玉が実は得意
意外だと思われますが、手先が器用なほうだと思います(笑)。お手玉を3つでもスムーズに投げられますし、クレーンゲームも中学校の頃から夢中でした。

クレーンゲームは今でもオフにやりに行くことが多いです。いい気分転換にもなりますし、やっぱり景品が取れたときはうれしくなります。

景品を取るコツは、YouTubeなどを見て学んでます。スクラムもそうですけど、気になったことはとことん研究したいタイプなのかも。

中学生の時にディズニーキャラクターのぬいぐるみを何種類か取ったこともありますし、最近は「ブラックサンダー」がたくさん入ってる箱や、「カルパス」50本入りの箱を2回ゲットしました! 過去にはチョコレートのお菓子がたくさん入ってる大きな箱を取りたくて3000円くらい使ったこともあります(笑)。そのときは結局取れなくて諦めました……。

オフの日にラグビーと違うことを楽しむのも、うまくなるためには必要だと思ってます。スクラムの練習などがつらくても「明日はオフだから頑張ろう」って気持ちになれるから。先輩たちともそう言い合って、いつも励まし合ってます(笑)。

庵奥翔太(あんおく・かぶと)1993年4月19日生まれ、兵庫県出身。ポジション:プロップ(PR)、178cm / 108kg。6歳の幼稚園の年長から近所のおじさんに声をかけられラグビーを始め、中学まで尼崎ラグビースクールに通う。その後、常翔啓光学園高校、日本大学に進学。大学卒業後の2016年よりNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに所属。関東学生代表候補に選出経験あり。