最近、睡眠の質が落ちている気がする……。そんな時は、入眠準備として「ストレッチ」をしてみませんか? 肩まわりや背中、股関節、お尻をしっかりと伸ばし、疲労と体のむくみを解消! スポーツドクター・整形外科医の中村格子さんにお聞きしました。

「大人のための美からだ学」を教えてくれたのは?

中村格子(なかむら・かくこ)
整形外科医 医学博士 スポーツドクター
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長
「健康であることは美しい」をモットーにトップアスリートから一般まで健康で美しい人生をサポートをすべく自身のクリニックや講演、多数メディアなどで幅広く活動。特別な道具やテクニックは必要なく誰でも取り組みやすい独自のエクササイズを提案。
『大人のラジオ体操』(講談社刊)はシリーズ累計83万部。『究極のストレッチ』(日経BP社刊)は複数の海外翻訳版発行。
Dr.KAKUKOオンラインクラス開講中 https://dr-kakuko.teachable.com/

ストレッチで、その日のうちに疲れをリセット!

1日働いた体は、その日のうちにリセット

次の日に疲れを残さないだけでなく、生活のクセから出る体のゆがみも整えたいですね。適度なストレッチは、体を温め、リラックスさせる効果も。寝る前に行うことで、快眠にもつながります。体内のめぐりをサポートし、むくみをすっきりさせるストレッチで、翌日の美しさにも自信が生まれますよ。

次の日に疲れを残さないためにも睡眠はしっかりととりたいもの。ところが、なかなか寝つけなかったり、朝起きたときに疲れがとれていないと感じることはありませんか。

睡眠は古くなった細胞を修復したり、再生したりする大切な役割を担っています。つまり、睡眠がうまくとれていないと、体を修復する成長ホルモンが分泌されず、老化を加速してしまうのです。

快眠のためにも寝る前のストレッチ習慣がオススメ!

寝る前のストレッチ習慣がオススメ

通常の睡眠リズムは大脳が活動するレム睡眠と休息するノンレム睡眠の2つを合わせて90分の周期で繰り返されます。成長ホルモンは深い睡眠といわれるノンレム睡眠時に分泌され、特に深い眠りに入る寝つきからの3時間が眠りの質にとって重要。また、22時から2時の時間帯にも分泌が活発になるといわれます。

良い睡眠が得られていないと感じるのであれば、ある程度準備をすることが大切。手軽にできる入眠準備としておすすめなのがストレッチです。全身ストレッチで心地よい眠りと健康を手に入れましょう。

筋肉は急に動かさず温めてから伸ばすこと

筋肉は急に動かさず温めてから伸ばす

心地よい睡眠を得るには、寝る前に少し体温を上げておくことが大切。体は熱を発散させながら、徐々に眠りの状態を作り出していきます。そこで適度に体を動かし、全身をリラックスさせてくれるストレッチがおすすめなのです。

今回紹介しているストレッチはどれも布団の上で気軽にできるものです。腕から足先まで全身のストレッチをすることで血行をよくし、むくみの解消も期待できます。ストレッチは無理をせず、程よい張り感や心地よさを感じられる程度にするのがベストですよ。

呼吸を止めず、ゆっくりと息を吐きながら伸ばしていき、自然な呼吸で行ってください。心地よいところで20秒くらい止めて、ゆっくりと元に戻すのもポイント。より筋肉が伸びやすくなるため、伸びている筋肉に意識を向けましょう。

ストレッチ前のお風呂タイムが効果をアップする

ストレッチ前のお風呂タイムが効果をアップ

筋肉は緊張やストレスなどによって収縮していることが多く、急に伸ばそうとするのは危険。そのため、事前に体を十分に温め、筋肉を伸びやすくすることが必要です。

そこでストレッチ前にはお風呂にゆっくり浸かってみるのはいかがでしょう。血液は1分間で体の中を1周するといわれます。そのため、体を内側から温めるには長くお風呂に浸かることが大切です。

体温がおおよそ36度なので、お湯の温度は40度もあれば十分。夏場はもう少し低くても構いません。体表で温められた血液は静脈へと流れ、体を内側から温めてくれます。ただ、ゆっくりとお風呂に入った後は、思ったより発汗しているもの。お風呂上がりには水分補給を忘れないように。

ストレッチ後1時間くらいがちょうどよい入眠タイム。リラックスした状態で布団に入ってくださいね。

【寝る前ストレッチ1】腕伸ばし

腕の筋肉を伸ばすことで、リラックスさせ、血流を向上させます。肩まわりの筋肉もほぐすイメージで。

腕伸ばし

  1. 背中を伸ばし、胸の前で腕を伸ばし、もう片方の手で抱え込む。
  2. 抱え込んだ手 を手前に引く。伸ばす腕側の肩が極端に上がらないように気を付ける。左右換えて行う。

【寝る前ストレッチ2】ころりん背中ほぐし

畳や布団など、柔らかい場所で行うストレッチ。背中がマッサージでき、起き上がるときには適度に腹筋を使うため筋トレにもなります。

ころりん背中ほぐし

背中を伸ばし、三角座りをする(写真右上)。ひざに顔を近づけ、脚を浮かせる(同右下)。背中を丸くしてお尻、腰、背中の順に静かに後ろに倒れ(同左下)、腹筋を使って元に戻る(同左上)。

【寝る前ストレッチ3】股関節ストレッチ

股関節を動かすことで、下肢の血流を整えます。疲れやむくみの解消におすすめ。固まりやすい股関節のエクササイズとしても効果的です。

股関節ストレッチ

  1. 横になり、脚を上げ、股関節を開く(写真右)。開く角度は60度程度でOK。できれば、ひざは伸ばすように。
  2. そのままの状態で足首を回す(同中央)。
  3. 左右の脚を交差させる(同左)。

【寝る前ストレッチ4 】お尻伸ばし

腰からお尻にかけての筋肉を伸ばし、疲れを軽減します。朝起きるときに腰まわりが重い人にもおすすめ。

お尻伸ばし

  1. 仰向けに寝て、両ひざを立てる(写真右下)。
  2. ひざを立てたまま、脚を交差させる(同中央上)。
  3. 交差させて上にきた脚側のお尻が伸びるように倒し、反対側に顔を向ける(同左下)。このとき、肩が上がらないように注意。左右換えて行う。

睡眠中も寝方を意識!背骨をムリなく伸ばせるチャンス

睡眠中も寝方を意識

睡眠中の寝姿勢はいろいろありますが、年齢が上がると増えるのが横向きになる姿勢です。実はこの横向きの姿勢は、骨盤がとても不安定な状態になるため、上の×の写真のように体が倒れ込んで、肩を圧迫してしまいがち。朝起きたときに、肩や腕に痛みがある人は特に注意。

脚にクッションを挟むだけで、骨盤が安定します。横向き寝では骨盤が不安定なため、上側の脚が落ちてしまい、肩が体の下に入ります。痛みを招き、姿勢も崩すことになります。

唯一、仰向け寝が背骨を伸ばせる寝姿勢

仰向け寝が背骨を伸ばせる寝姿勢

横向きに寝る人が多いのは、背骨が変性し、仰向けに寝られなくなる人が増えるから。普段私たちの背骨は立ったり、座ったりといつも重力の影響を受けています。ところが重力の影響を考えずに背骨を伸ばすことができる唯一の時間が、仰向けに寝ているとき。

背中はピンと伸び、筋力や重力のことを何も考えずに背骨がきちんと伸びた状態になります。そのため、今、寝姿勢が横向きだという方も、仰向けに寝ることができる人は、できるだけそうして、寝始めのときだけでも、背骨の位置をリセットする時間をとるようにしてください。

すでに変性して仰向けに寝られなくなっているという方も、無理のない範囲で背骨をリセットするよう仰向けに寝る練習をしてみてください。

正しい枕の選び方

正しい枕の選び方

もう一つ、枕の高さについて。首が引っ張られるほど低いものは絶対にNG。朝起きたときに首にしびれが出る頸椎症が起こりやすく、枕だけで改善することも。少し高いくらいなら問題ありませんが、下の選び方を参考に自分に合った枕を探してみてください。

立った状態で、背筋を伸ばし壁に背中をつけ、頭と壁の隙間にタオルを狭む。首の位置に極端な変化がでないタオルの厚さが適当な枕の厚さです。厚すぎたり、薄すぎると首が引っ張られ、痛みの原因に。

取材・文=中嶋信次(編集部) ヘアメイク=木村三喜(マスキュラン) 撮影=中西裕人(編集部) 衣装協力=チャコット

※この記事は雑誌「ハルメク」2013年7月号に掲載した記事を再編集しています。