札幌市でもキツネによる被害が出ています。そして、病気への感染も心配です。

札幌の住宅街や街中では、人目もはばからずに現れるキツネの姿が増えています。

ニワトリの飼い主
「一時間おきにずっと(小屋を)壊しに来てて、ついにキツネがドアを破って…」

ついにはペットが襲われる被害も!都市部に出没するキツネ、「アーバンフォックス」の対策をもうひとホリします。

札幌市中央区にある公園です。ススキノからも近く、住宅に囲まれた場所にも関わらず、たびたびキツネが目撃されています。

近所の住民
「(キツネを)ちょこちょこ見かける」
「この砂場で子ども達が遊ぶ。(キツネが)おしっこしたりして、それを知らないで(子どもが)砂を触る」

心配なのはキツネに寄生するエキノコックスです。

キツネのフンを介して人の体に入り込み、エキノコックス症にかかると、肝臓などに障害をもたらし、最悪の場合、死に至ります。

近所の住民
「(キツネを)見たらやっぱりかわいいなとは思うが、触れない。怖いですから」

15日の未明。公園近くの住宅の防犯カメラの映像です。

ペットのニワトリの小屋の前を、キツネがうろついています。その1時間半後…防犯カメラにキツネが小屋のドアを壊す様子が。

ニワトリの飼い主
「ニワトリの叫び声がして、すぐ駆けつけたんですけど、キツネがニワトリをくわえて連れ去るところでした。もともと、ドアはあるんですけど壊されてしまって」

ニワトリ1羽がキツネに連れ去られ、もう一羽もけがをしました。4月には、女性自身も…。

ニワトリの飼い主
「キツネに飛びつかれたことがあって、少しけがをした」

公園でキツネに襲われ、腕にけがをしました。

女性は札幌市にキツネの駆除を頼みましたが、札幌市は鳥獣保護の観点から「駆除はできない」として、かわりに、キツネの注意を呼びかける看板を設置しました。

しかし、女性の不安はぬぐえません。

ニワトリの飼い主
「対策してもどっちにしても(キツネが)来るので、油断できない生活を続けるのがどうかなと思う。行政もちゃんと対応すべきだ」

キツネの生態に詳しい北海道大学の特任講師、池田貴子さんとキツネが出没する公園に向かいました。

北海道大学(獣医学) 池田貴子特任講師
「ありました。これすごいカラカラだけど、多分キツネのふんですね。多分これも痕跡。もう溶けちゃってるけど、こういうのもそう。結構ありますね、ここは」

池田さんによりますと、キツネは昔から人里近くに生息していますが、ここ数年は、街中で見かけるケースが増えたといいます。そのワケは…。

北海道大学(獣医学) 池田貴子特任講師
「これを狙っていたとすると歯形がついている。新しい。こういうのはキツネを誘引しちゃいますね。ここを見つけたら、この近辺も多分、ぐるぐるぐるぐる回るようになると思う。野生動物は、ホイホイ捕獲できないのは札幌市だけのことではない。一番は誘引しない、餌になるようなものを放置しないのが大事」

ペットや人がキツネに襲われるのは怖いですが、エキノコックス症も怖い病気です。
エキノコックスの成虫は、キツネに寄生しています。
その卵は、キツネのふんとともに体外へ排出されます。
それを、人の手で触ってしまったり、沢の水を飲むなどして、口から体内に入ると、感染し肝臓に障害をもたらします。
札幌市内で、医療機関から届け出があったエキノコックス症の発生件数は、年間で多い年では15件を数えています。
自覚症状がでるまでに数年から十数年かかり、その間に悪化しているケースが多いんです。

エキノコックスをどう防げばいいんでしょうか?対策を池田特任講師に聞きました。

北海道大学(獣医学) 池田貴子特任講師
「これが駆虫薬入りの『ベイト』と言われるものです」

「ベイト」は駆虫薬=いわゆる虫くだしを混ぜた餌です。
これをキツネが出没する場所にまきます。
キツネが食べるとエキノコックスが体外に排出されます。

ただ、一度エキノコックスを排出しても、再度、感染してしまう可能性があるため、この対策は、継続的に行うことが大事だといいます。

北海道大学(獣医学) 池田貴子特任講師
「(駆虫薬入りの)エサを作る人を確保するとか、あとは月に1回決まった範囲に決まった密度で、もう半永久的にまき続けないと効果がなくなってしまう方法なので、ランニングコストはとてもかかる。公の事業としての位置づけで、北海道は除雪と同じぐらいの必須事業にしてもいい」

札幌市以外の例では、湧き水で有名な北海道後志地方の京極町では、町が年6回、山道などに駆虫薬入りの餌「ベイト」をあわせて計7200個まいています。

また、キツネのふんを回収し検査も行い、効果を確認しています。
ベイトは有効な対策ですが、手間とコストがかかり、また、危険性が低いとはいえ、ペットや子どもが誤って食べるのが心配という声もあります。

まずは一人一人ができる予防策、屋外から帰ったら手をよく洗うことを心がけましょう。