【「不登校」「ひきこもり」を考える】#6

 私は、もし今つまづいておられるお子さんが未成年、特に児童・思春期であれば、親御さんには丁寧かつ真摯にお子さんの「感情不全」の問題に向き合っていただきたいと切に願います。

 しかし、成人まで育て上げたわが子のひきこもりや精神障害の問題まで親が支えることが、産み落とした親の責任・義務だ、などというのはやはり言い過ぎだし、違うとも思います。ただ、成人したとはいえ、もしかわいいわが子が抜け出せずにいるその窮地を、親御さんの意識改革こそが最も強力な特効薬だとしたならば、そしてわが子が本当はそのことを心から望んでいるのだとしたら、やはり親御さんの支えが鍵となることを知った上で、どうされるかを判断してほしいのです。

 どんなに素晴らしい支援者でも、親以上に熱心に支えようと思ってくれる人などこの世にはいないでしょうし、親の心からの傾聴・共感ほどパワフルな効果を持つ支援を提供できる治療者も世の中には存在しないのです。

 紹介したのはやや極端な例だったかもしれませんが、正論という「北風」の対応で通用せずに埒が明かないのだとしたら、もうひとつの傾聴・共感という「太陽」でのアプローチを検討されてもよいのではないでしょうか? 大事なのは、親の教育方針や価値観といった初志を徹底的に貫くといった「名」ではなく、お子さんが前を向いて歩けるようになるという「実」なのですから。(つづく)

▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。