画像はパリ五輪決定を喜ぶ国立競技場のサポーター


 

サッカー女子・パリ五輪アジア最終予選の第2戦(2月28日午後6時34分キックオフ、東京・国立競技場)

 

 

女子日本代表なでしこジャパンが朝鮮民主主義人民共和国(DPR Korea)を2−1のスコアで振り切り、パリ五輪の出場権を獲得した。

 

 

2月24日にサウジアラビアのジッタで開催された第1戦がスコアレスドローに終わり、この試合に勝った方がパリ行きの切符を手にできるという大一番。日本は前半26分に先制すると後半32分に追加点。その4分後に1点を返されたが逃げ切った。

 

 

DPR KoreaはFIFAランキング9位で同8位の日本にとっては手ごわい相手。DPR Koreaのアスリートたちは、国際試合で大きな成果を挙げることによって、国から様々な恩恵を受けることができる。要するに“命懸け”。2点目を失ってもすぐに反撃してきたのはその証左だろう。

 

 

そのメンタリティをも上回り、終始ゲームを優位に進めた日本。DPR Koreaのホームゲームだった第1戦の試合会場がその2日前に決まるなど、振り回されるだけ振り回されても勝ち切った日本はさらにチーム力を高めてパリで金色のメダルを狙う。

 

試合後の池田太監督

選手がタフに戦ってくれましたし、まず何よりきょうここ国立で応援していただき、背中を押していただいたみなさん、本当にありがとうございます。

(第1戦の4バックから3バックへの変更の狙いについて聞かれ)やはり、きょう勝利することが大事だったので、3バックというか、前線に選手を多く、かかわりを持たせたかったのでそういう形を取りました。

(第1戦で出場機会のなかった北川ひかるのフリーキックから上野真実の折り返しを経て先制ゴールが生まれたことを聞かれて)いろんな選手が持っているものをすべて出してくれたと思っています。間違いなく、このタフな環境で勝ち切ったことはチーム、選手たちを成長させてくれますし、また引き続きパリでも応援よろしくお願いします!パリでは一番いい色のメダルを目指して戦うので、いっしょに戦ってください。

 

 

正午過ぎには気温30度を超えたサウジアラビアでの第1戦。サンフレッチェ広島レジーナ・中嶋淑乃が後半13分、植木理子に代わってピッチに入り左サイドから攻めた。

 

 

後半29分、相手の強烈なシュートがクロスバーを叩き日本は九死に一生…3大会ぶりの五輪出場へDPR Koreaの“圧”にはすさまじいものがあった。第1戦、出番のなかった上野真実はその戦いを目に焼き付けた。

 

 

迎えた第2戦で池田太監督は左サイドのふたりを入れ替える勝負手を打った。FW植木理子から上野真実に、DF古賀塔子から追加招集された北川ひかるにスイッチした。

 

先制点は北川ひかるのフリーキックから。ファーサイドでDF熊谷紗季主将が頭で合わせたボールはゴールと並行にまた逆方向へ飛んでペナルティエリア左に詰めていた上野真実の後方へ…下がりながらの懸命の頭での折り返しはFW田中南へ。ヘディングシュート!はクロスバーに跳ね返されたが、そこに詰めていたDF高橋はなが左足で押し込んだ。

 

 

後半32分には二十歳のFW藤野あおばも頭で2点目を叩き込み、その4分後に相手の長い縦パスからの一瞬のスキを突かれて失点しても慌てることなく逃げ切った。

 

 

ところでこの日の死闘では、得点シーン以外のところで日本サッカーの“本質”とも言えるシーンが生まれた。

 

 

池田太監督はNHKの特別番組「森保一×池田太 日本代表監督に聞く」(2024年1月3日初回放送)で日本サッカーの現状や未来について語り合っていた。

 

森保ジャパン…といえばあの「三苫の1ミリ」。日本人の特性、最後まで諦めない献身さは森保一監督のモットーだが、それはなでしこも同じ。

 

前半45分、DPR KoreaのMFチェ・クンオクのヒールでのシュートは、コロコロと転がりながらポストギリギリのコースを辿り、そのままゴールに吸い込まれそうになった。が、飛び込んだGK山下杏也加が右腕をいっぱいに伸ばして指先で”同点弾“をかきだした。

 

この試合ではVARが採用されておらず、一瞬、両手を挙げて喜んだDPR Koreaの選手たちは、そのままプレー続行。8年前のリオデジャネイロ五輪出場を逃したなでしこメンバーの中で、今回の代表に名を連ねたのは山下杏也加と熊谷紗希だけ。ふたりの強い意思もまた、大いにリスペクトされる90分+5分になった。


パリ五輪にはアジア枠から日本とオーストラリアが出場して開催国のフランスなど計12チーム参加する。1次リーグ初戦は7月25日。



なでしこジャパンメンバー

GK
 1  山下 杏也加 ヤマシタ アヤカ(INAC神戸レオネッサ)
21 平尾 知佳 ヒラオ チカ(アルビレックス新潟レディース)
18 田中 桃子 タナカ モモコ(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)

FP
 4  熊谷 紗希 クマガイ サキ(ASローマ/イタリア)
11 田中 美南 タナカ ミナ(INAC神戸レオネッサ)
 2  清水 梨紗 シミズ リサ(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)
17 清家 貴子 セイケ キコ(三菱重工浦和レッズレディース)
 8  上野 真実 ウエノ マミ(サンフレッチェ広島レジーナ)
14 長谷川 唯 ハセガワ ユイ(マンチェスター・シティ/イングランド)
 6  杉田 妃和 スギタ ヒナ(ポートランド・ソーンズFC/アメリカ)
16 林 穂之香 ハヤシ ホノカ(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)
 3  南 萌華 ミナミ モエカ(ASローマ/イタリア)
10 長野 風花 ナガノ フウカ(リバプールFC/イングランド)
22 千葉 玲海菜 チバ レミナ(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)
 7  中嶋 淑乃 ナカシマ ヨシノ(サンフレッチェ広島レジーナ)
 9  植木 理子 ウエキ リコ(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)
 5  高橋 はな タカハシ ハナ(三菱重工浦和レッズレディース)
   遠藤 純 エンドウ ジュン(エンジェル・シティFC/アメリカ)
12 石川 璃音 イシカワ リオン(三菱重工浦和レッズレディース)
15 藤野 あおば フジノ アオバ(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
19 谷川 萌々子 タニカワ モモコ(FCローゼンゴート/スウェーデン)
20 古賀 塔子 コガ トウコ(フェイエノールト/オランダ)

不参加選手(2/15)

遠藤 純(ENDO Jun/エンドウ ジュン)
FP 所属:エンジェル・シティFC(アメリカ) 理由:怪我のため

追加招集選手(2/16)

北川 ひかる(KITAGAWA Hikaru/キタガワ ヒカル)
FP #13 所属:INAC神戸レオネッサ