巨人のドラフト1位・西舘勇陽投手(22)=中大=が22日、スポーツ報知の取材に応じ、好調の一因を明かした。ここまで開幕から全9試合連続無失点でリーグ単独トップの9ホールド(H)。田島(中日)が持つ連続試合Hの新人記録に王手をかけ、山口とマシソンの球団記録(12)も射程圏に入れている。「良くも悪くも一定でありたい」と、こだわりを持つのがポーカーフェース。ピンチでも顔色一つ変えない“西舘の流儀”に迫った。(取材・構成=水上 智恵)

 マウンド上より柔和な表情で、西舘は激動の1か月を振り返った。新人ながらセットアッパーに起用され、開幕から9戦連続無失点。リーグトップの9Hを挙げ、昨季救援陣の不調に苦しんだ巨人の救世主となった。常に一定の精神を保とうとする取り組みが、適応力の一因となっている。

 「一番は、波を作りたくない。“良くも悪くも一定でありたい”というの(考え)があって。中日の涌井さんとかもそうですよね。淡々と投げている姿、すごい理想的ですね」

 花巻東時代、中大に入学したての頃は、負けると涙を流して悔しがることもあった。中大での東都大学リーグ戦初登板は1年秋。毎週の公式戦を戦う中で、自分の結果に一喜一憂せずに切り替える重要性を実感し、感情の表現を意図的に控えるようになった。プロ入り後も、ピンチでも好投してもポーカーフェースを貫く新人離れした立ち居振る舞いを見せている。

 「緊張はしている。ただ、悪い時に落ち込んだり、ガッカリするのが嫌。100試合以上ある中で、自分で課題を消化しながら引きずらないためにも、なるべく一定でいたいなと思うようになりました」

 理想に掲げた中日の37歳・涌井は今季3登板で1勝0敗、防御率0・00。15学年下の自身同様、いまだ失点がない。投球そのものだけでなく、マウンドでの空気感もリスペクトする。

 「涌井さんはコントロールがいいし、そういう独特の雰囲気の中に“打者も入れてくる”というか、自分のピッチングを延々と貫いてる感じがある」

 当初は登板までの調整、ルーチンに不慣れな面も多かったが、今では自己流の調整を確立し、自信を持ってマウンドに立てている。

 「先輩たちを見ていると、一連の動きが決まっている。自分は試合前のブルペンは、10〜15球の間と決めて、その日の状態で球種を決めて投げながら試合に入っていく。準備不足にならないようにだけはしています」

 プロへの適応力を示す中、感謝の思いも忘れない。

 「捕手や守ってくれる野手の皆さんがいるから安心感があります。調子が悪くても周りを見れば、最悪打たせれば絶対アウトにしてくれるっていうバックの人たちがいる」

 10試合連続Hの新人記録にあと1。23日からの9連戦に向けて茨城へ移動した右腕は、マシソン、山口という巨人史に残るセットアッパーが持つ12戦連続Hの球団記録も視界に捉える。

 「どこで投げるにしてもプレッシャーは変わらずに感じているんですけど、自分の役割の中で仕事ができれば」

 全ての感情は内に秘め、西舘は淡々と己の仕事をこなしていく。

 ◆涌井「感情出してもいいことない」

 プレー中の感情をしまい込むのが中日・涌井の真骨頂。味方が失策しようが、自分が打たれようが、表情には一切出さない。思考が読めず「やりにくい」という声を他球団の打者から何度も聞いた。本人に問うと「感情を出しても、いいことは一つもないから」とだけ返ってきた。

 母・たつ子さん(64)にもベテランの幼少期の話を聞いたことがある。「昔からあまり感情を表に出さない子でした。(感情の)起伏がないから勝っても喜んだりしないし、負けても悔しがることもなかった」と“鉄仮面”のルーツに触れて妙に納得した。

 マウンド上では誰も助けてくれない。打者と1対1の真剣勝負で動揺する姿を見せれば、隙が生じる。癖を突かれるかもしれない。あらゆるリスク対策の一つの形がポーカーフェースなのだろう。160個もの白星を積み上げてこられた一因でもある。(長井 毅)