◆JERA セ・リーグ 中日1―4巨人(8日・バンテリンドーム)

 サカチョーで、虎のしっぽを捕まえた! 巨人が中日に連勝し、2カード連続の勝ち越しを決めた。初回1死満塁から坂本勇人内野手(35)の中犠飛で先取点を奪い、今季ビジター17試合目で初めて初回に得点。8回には2死満塁から長野久義外野手(39)が、走者一掃の3点三塁打を放って試合を決めた。今季2度目の先発となった堀田賢慎投手(22)は5回2/3を6安打無失点でまとめ2勝目。貯金を2として首位阪神に0・5差に迫った。

 長野と巨人ナインの思いを乗せた打球が、右中間へ舞い上がった。ダイビングキャッチを試みた中堅・大島のグラブをかすめて抜けると、オレンジに染まった左翼スタンドから大歓声が巻き起こる。生還した吉川、岡本和、坂本が、二塁ベースを蹴った背番号7に笑顔で拍手を送る。長野は「みんながつないでくれたんでね。打ててよかったです」と悠々と三塁に到達し、笑顔でベンチへ両手を突き上げた。

 1―0の8回2死満塁。空振りを誘う外角のスプリットを見極めつつ、6球目の外角高め142キロ直球をはじき返した。走者一掃の3点三塁打。5月は11打数6安打で打率は驚異の5割4分5厘と絶好調を維持しているが、「それより泉口のヒットがみんなうれしいし。なかなか苦労してね。初ヒットは一生の思い出に残るだろうし」とルーキーに優しいまなざしを向けた。

 若手にも気配りを忘れない男の経験値は、チームの財産だ。昨オフ、20学年離れた浅野に「若いうちは長いバットを扱えるようになった方がいい」と助言。浅野は12月に岐阜・養老郡の工場に足を運び、背番号7と同じ34・5インチ(87・63センチ)の長尺バットを導入し、開幕後も使用。昨年譲り受けたスパイクも愛用している浅野は「本当にいろいろ教えていただいて、ありがたいです」と感謝を口にした。

 自らの技術を磨き続けることも怠らない。6日の中日戦(バンテリンD)は試合開始の4時間前に到着したチームバスに先駆けて球場入りし、室内で黙々とバットを振った。「年齢は気のせいだと思っているので」。衰えない向上心が、体を突き動かしている。

 巨人は2カード連続の勝ち越しを決めた。阿部監督も「いやもう、あれで勝てたと思うので」と絶好調を維持する39歳に最敬礼した。6度目のスタメン起用に応えたことについて問われた長野は「いつも応えてないみたいじゃん」と冗談めかしつつ、「しっかり監督の期待に応えられるように(笑い)。頑張ります」。上昇気流に乗りつつある阿部巨人の中心に、頼れる背番号7がいる。(内田 拓希)

 ◆高木豊Point 百戦錬磨の勝負師、若手は見習うべし

 長野は百戦錬磨だねえ…。8回の満塁のチャンスは、インコースの際どい球は投げてこない、だから外の落ちる球で勝負だろう、と読み切っていた。その上でボール球には手を出さず、浮いてきたときにどの方向にどう打つかだけを考えて、バットで表現した。その結果のダメ押し三塁打。まさに貫禄だね。巨人の若手選手は、長野の立ち居振る舞いなんかを見習うのはもちろんなんだけど、プレーに至るまでの考えのプロセスを“取材”しておくのが成長への近道だと思うよ。(スポーツ報知評論家・高木 豊)