関学大が、黒原拓未(現広島)を擁した21年春以来、6季ぶり16度目(旧リーグ含む)のリーグ優勝を果たした。2年生左腕・飯田泰成が、5安打1失点完投でリーグ戦初勝利。打線も10安打4得点とかみ合った。昨秋まで3季連続5位と苦しんだチームは9勝3敗で今季全日程を終え、3年ぶり7度目となる全日本大学選手権(6月10〜16日・神宮、東京D=報知新聞社後援)の出場切符を獲得。11日に共栄大(東京新大学)との初戦に臨む。

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 歓喜にあふれた。1点を奪われ、3点差に迫られた9回2死一、二塁、飯田が空振り三振で試合を締め、関学大ナインがマウンド上で喜びを爆発させた。本荘雅章監督(52)は「3年前は無観客で、部員も(スタンドに)入れなかった。みんなで分かち合えたという喜びもある」と、涙を浮かべて見守った。

 開幕節・近大戦で勝ち点を落とし、初戦の先発を担ったエース右腕・中西真三郎(4年)が負傷離脱した。「去年の秋も故障者が出て、チームに『無理だな、このシーズンは』という雰囲気が出てしまった」。指揮官の不安をよそに、選手は躍動。第2節・立命大との初戦にサヨナラ勝ちして勢いに乗ると、3度のサヨナラ勝利を含む7連勝などで、春の頂点へ一気に上り詰めた。

 前チームから「みんなでやろう」と周りを巻き込む姿勢を重視してきた。今年、掲げたスローガンは「Y.A.R.O.」。同じ西宮市を拠点とする阪神が、優勝した昨年に掲げた「A.R.E.」にかけて作ったという。「俺たちはできることをやっている、信じてやろうと。スローガンに思いが詰まっている」と小川将信主将。アクシデントにも、選手はこの言葉に結束を強くしていった。

 2020年5月20日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、戦後初の夏の甲子園中止が発表された。現4年生にとっては、高校最後の夏だった。「悔しいというか、どうしようもなかったんですけど…。でもその分、最終学年で神宮に行くぞという思いで入ってきた人は多い」と小川主将。甲子園の夢が絶たれたあの日から4年、ようやくひらけた全国の舞台で思いをぶつける。(瀬川 楓花)