●井波の島田木材と山崎工務店 

 南砺市井波地域の島田木材と山崎工務店は今秋、五箇山産のミズナラを使ったウイスキー樽の生産に乗り出す。両社が共同運営する「三四郎樽工房」に新たな機械設備を整え、これまで培ってきた樽修理のノウハウを活用する。ウイスキーブームで全国に蒸留所が増える一方で樽の製造会社はまだ少ない。井波彫刻をはじめ南砺で栄えた木材加工業の技術を生かして全国展開し、新たな産業創出を目指す。

 三四郎樽工房では、2017年にウイスキー樽の再利用事業を開始し、現在では若鶴酒造(砺波市)の三郎丸蒸留所をはじめ、北海道、新潟、山梨県など全国から毎月30個程度の修理依頼がある。

 同工房によると、国内のウイスキー蒸留所はブームを追い風に2015年の9カ所から準備中も含め100カ所以上に増えた。ただ、樽の供給は追い付いておらず、一度使用した樽が再利用されている状況だ。

 現在、国内で流通しているウイスキー樽の9割程度は外国産といい、工房では国産で品質の高い樽のニーズは高いとみている。使用する五箇山産のミズナラは丈夫で傷つきにくい。バニラの香りも特徴で、この樽で熟成させたウイスキーは、より風味が増すという。

 工房では樽を締める箍(たが)の製造機械などを備えた。今後、側面の板を削って曲げる機械を導入し、新樽の生産体制を整える。

  ●熟成庫で利用/若鶴酒造設立の会社

 井波地域では、若鶴酒造(砺波市)などが設立したウイスキーの原酒熟成・販売を手掛ける「T&T TOYAMA」(砺波市)が、原酒を入れた樽の熟成庫を建設した。工房で製造した樽は、この熟成庫での利用が見込まれている。

 山崎工務店の山崎友也専務(50)は「南砺産樽で熟成させたウイスキーが広がってほしい」と話し、島田木材の島田優平社長(46)は「ウイスキー人気で外国産の樽の価格も上がっており、需要が見込める。井波地域に樽事業の集積を図りたい」と意欲をみせた。

 

 ★南砺市の木材加工業 南砺市内の森林面積は富山県内2番目の約5万2500ヘクタールで、製材など木材加工業が盛ん。井波地域では、加賀藩が江戸時代初期に宮大工10人に屋敷を与え、瑞泉寺の復興に関わり、1762(宝暦12)年の大火後の再建で井波彫刻が生まれた。福光地域は大正時代にバット製造が始まり、昭和時代に産業として発展した。