激化する暴力団の抗争と、それを阻止しようとする2人の刑事の奮闘をリアルに描いた2018年公開のヒット映画「孤狼の血」。第42回日本アカデミー賞で最多12部門を受賞するなど評価も高く、2021年には続編となる「孤狼の血 LEVEL2」が公開された。

鈴木亮平が出演する「孤狼の血 LEVEL2」
鈴木亮平が出演する「孤狼の血 LEVEL2」

(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

「孤狼の血 LEVEL2」は完全オリジナルストーリーで、キャストも前作同様に名優たちが名を連ねる。主演は松坂桃李で、前作で新米刑事から裏社会を治める存在へと成長した刑事・日岡秀一を演じる。また、暴力団関係者として寺島進や宇梶剛士、斎藤工ら、ヒロインとして乃木坂46の元メンバー・西野七瀬も出演し物語に引き込んでくれた。

特に注目したいのが、本作での"怪演"が話題となった鈴木亮平だ。しっかりした体躯を持ち、笑顔の爽やかな男前として知られるが、本作では猟奇的で凶暴な五十子会上林組組長・上林成浩を演じる。ここでは鈴木の演技について見ていきたい。

舞台は前作から3年後の平成3年、広島県の架空都市・呉原市。主人公の日岡は前作で殉職した刑事・大上章吾に代わって、呉原に勢力を持つ暴力団組織、五十子会と尾谷組のバランスを取るべく奔走している。そこに刑期を終えて出所してきたのが、故・五十子会組長の腹心である上林だ。

(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

刑務所から出る時、刑務官と会話する上林は真摯で大人しく、本当に改心したような印象を受ける。しかし門から出ると、部下を連れ復讐のための行動に出る。服役中に暴行を受けた刑務官の妹・神原千晶を殺しに行くのだ。

上林は女性を襲うことに何の罪悪感もないようで、神原の家に押し込んだ時もごく自然な笑顔を見せる。しかし、殴られて茫然自失となった千晶の虚ろな目つきを見て、様子が変わる。心の底に溜まった何かがじわじわと染み出しているような悲しげな顔となり、千晶の顔を両手で抱え「なんでそがいな目でわしを見よるんじゃ!」と叫ぶ。
その時の上林は、泣きそうな子供のようにも、怒り狂った獣のようにも見える複雑な表情を見せる。上林がそうなる理由は後に明らかになる過去の事件が原因と思われるが、登場して数分で上林という男の恐ろしさを知らしめる鈴木の演技は見事というほかない。

上林はその後、3年前の抗争で五十子会組長を殺害した尾谷組に落とし前をつけさせるべく動き、凶暴さと冷酷さで数々の強烈なシーンを作り出す。

(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

尾谷組に落とし前をつけさせることに反対する広島仁正会理事長・溝口と言い合いになった時は、触れただけで切れそうな殺気を放つ。上林の面倒を見ている広島仁正会会長の綿船さえ、地の底から響くような迫力で圧倒する。

服役中の回想シーンで刑務官に向ける狂気に満ちた眼差し。構成員に指を詰めさせる前の微動だにしない座った目つきと、詰めた後のスポーツでもしているかのような笑顔。上林が浮かべるさまざな表情から異常な人間性と底しれない凶暴性が伝わってくるのは、鈴木の渾身の演技によるものと言っていいだろう。

本作のオファーを受けた時、鈴木は白石和彌監督から「上林を日本映画史に残る悪役にしてほしい」と言われたという。その要望の通り、ネットには鈴木の演技を絶賛する声が溢れ、第45回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞も受賞した。上林は確かに、多くの観客の記憶と日本の映画史に残る悪役となったのだ。

物語が進むと、上林は3年前の抗争を裏で仕切っていた日岡を狙うようになり、日岡も上林を止めるべく奮闘する。圧倒的"悪魔"と呼ばれた上林と、"孤狼の血"を受け継いだ日岡の闘いの結末は?鈴木亮平の"怪演"はもちろん、松坂桃李、西野七瀬らの秀逸な演技とともに、この過酷な物語に胸を震わせてほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

孤狼の血 LEVEL2
放送日時:2024年2月24日(土)23:15〜
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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