16歳の時にスカウトされたことをきっかけに芸能界に飛び込み、現在若手女優としてめざましい躍進を続ける今田美桜。今年2月には、「アンパンマン」を生んだやなせたかしと妻の小松暢をモデルにした、NHK連続テレビ小説「あんぱん」(2025年度前期放送予定)のヒロイン・朝田のぶ役を射止めたニュースが流れ、ますます活躍の舞台は広がりそうだ。

そんな今田のドラマ初主演作としてプッシュしたいのが、2022年に放送されたお仕事ドラマ「悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜」だ。今もって多くの読者に支持されるロングセラーコミック「悪女(わる)」を原作としていて、1992年にも石田ひかり主演で実写ドラマ化されている。

黒髪のショートボブで大手IT企業の新入社員を演じる今田美桜
黒髪のショートボブで大手IT企業の新入社員を演じる今田美桜

主人公の新入社員・田中麻理鈴がふとしたことから一目惚れした同じ会社の男性社員に近づくため、持ち前の元気と明るさで苦難を乗り越えていく痛快なドラマで、作品ごとに設定や登場人物も変化。令和版とも言える本作では、男女の平等化やリモートワークから生じる問題を取り入れるなど時代に合わせたアレンジが施され、より見応えのある作品となっている。

今田が演じる本作の麻理鈴は大手IT企業「オウミ」に入社するも、お荷物社員が集められた「備品管理課」に配属される。それでも一目惚れした「T・O」というイニシャルの社員を探すため、先輩の峰岸雪(江口のりこ)からアドバイスを受けながらさまざまな部署で奮闘する。
底抜けにポジティブで明るいキャラクターという設定もあって、本作での今田のハジけっぷりは見事というほかない。特に笑顔に関しては、どれだけバリエーションがあるのかと思うほどだ。

「備品管理課」での自己紹介では意欲に輝く瞳をくりくりさせ、部署に慣れた頃には「我が家のような懐かしさを感じてます」と言って親しみ溢れる笑顔を見せる。妄想の中で「T・O」と再会すれば緩みきったデレ顔になり、第1話で先輩社員・大井美加(志田未来)が想いを貫くべく決意を固めた時には、心が開けたような曇りのない笑顔となる。その時々の麻理鈴の心情がしっかり込められているため、必然的に笑顔のバリエーションも豊富になり、見ていて飽きないのだ。

笑顔以外の演技ももちろん絶品だ。棚の備品を誤って落とした時は目が飛び出そうなほど見開き、シュレッダーの切り屑をぶちまけてしまった時のびっくり顔は見ている方がびっくりするレベルの表情だ。「T・O」と出会うきっかけとなったスカイダイビングの機内では素で怯えている様子だし、第2話では人事部課長・夏目聡子(石田ひかり)のために圧倒的な目ヂカラで怒り、かと思うと子供のように泣きじゃくったりもする。

ジェットコースターのように激しく、かつ縦横無尽に変化する麻理鈴の表情には、引き込まれるというより「巻き込まれる」と言ったほうがぴったりくる魅力と圧がある。見ていて時が経つのも忘れてしまうほどだし、今田が本作で第112回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演女優賞を受賞したのも納得の演技と言えるだろう。

物語は麻理鈴の仕事における奮闘と「T・O」への想い、また犬猿の仲の先輩社員・小野忠(鈴木伸之)や真面目な清掃アルバイトの山瀬修(高橋文哉)らとの関係、麻理鈴を出世に導こうとする峰岸の思惑など、さまざまな要素が絡み合いながら展開していく。新入社員・田中麻理鈴を果たしてどんな未来が待っているのか。令和に生まれ変わった麻理鈴の爽快な活躍を、今田の演技とともに心ゆくまで楽しんでほしい。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜 一挙放送
放送日時:2024年3月31日(日)9:05〜
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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