国は北海道の日高と十勝の両管内にまたがる「日高山脈襟裳国定公園」を今年の夏に自然保護などを目的に国立公園に格上げします。

周辺のマチでは国立公園化をきっかけに、知名度をあげる動きがはじまっています。

沼も点在する、日高山脈の最高峰「幌尻岳」、かわいらしいハートの形が人気の「豊似湖」。「アポイ岳」は高山植物の宝庫です。

■高知・香川から:

「最高です、きてよかった。」

太平洋へと突き出た襟裳岬。

手つかずの自然をはじめ、雄大な氷河地形が残る山岳地帯や、ここでしか見ることのできない植物もある「日高山脈襟裳国定公園。

国は、今年の夏に国立公園に格上げし、自然保護などの整備を進めることになりました。

国立公園になるのは、現在の「日高山脈襟裳国定公園」よりも2.2倍ほど広い、およそ24万ヘクタールの地域です。国立公園としては日本最大の面積となります。

■ネイチャーホスピタリティ協会小川正人理事長:

「開発とか乱開発とかしにくくなるかもしれませんけども、それはやはりそういうものを守っていこうという皆さんのご意向で制定に動かれたわけですから、保護のほうが大きいんじゃないかと。」

国定公園は都道府県が管轄するのに対し国立公園は国が管轄します。このため国立公園に格上げになると、国の予算で登山道の整備や自然保護が進むことが期待されるほか、地域にもたらす経済効果も大きいといいます。

■小川理事長:

「自然も素晴らしい、食も素晴らしいということで、これをどういうふうに横串を刺しながら、盛り上げていくのかが今後の課題になってくるんじゃないかと思います。」

国立公園となる範囲は日高管内と十勝管内の13市町村にもおよびます。

そのため13の市町村長は共同で国立公園の名前に「十勝」を入れることを国に要望していました。

「十勝」を盛り込むか否かの議論もありましたが、「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることが了承され、今月にも正式に決まる見込みです。

国立公園化を機に「十勝」をPRしようと、6市町村では、有志による活動もおこなわれています。中札内村で生まれ育った須賀裕一さんもそのひとりです。

■中札内村日高山脈国立公園化PR事業実行委員会須賀裕一委員長:

「地元の方がより多くの国立公園について知る、山について知るということをみんなで考えてみようというきっかけになれば。」

須賀さんたちは国立公園になることを知ってもらおうと看板を設置したり、日高山脈の山なみをイメージして並べたアイスキャンドルのイベントなどを通じ国立公園化を盛り上げています。

■須賀裕一委員長:

「十勝は特に食糧の倉庫ともいわれるくらい、いろんなものがいろんな地域で作られています。」

村には、じゃがいも、小麦などの畑も多数あり、十勝晴れの青空に日高山脈が見える美しい景色も、魅力のひとつです。

また、水の透明度の良さから、これまで8回も清流日本一に選ばれたこともある「札内川」も自慢のひとつです。

日高の平取町でも、国立公園化を機に町の知名度をあげようと取り組みがはじまっています。

日高山脈の最高峰、「幌尻岳」。

平取町は、先月、ふるさと納税の返礼品に1泊2日のガイド付きツアーを加えました。

■平取町遠藤桂一町長:

「経験豊富なガイドと一緒に上るので、いろんな魅力を聞きながら登れるのもひとつの大きな魅力になるかと。」

幌尻岳は沢を何度も渡るなど、初心者には容易には登頂できない、上級者向けの山です。

山荘での食事には特別に、自慢の「びらとり牛」のハンバーグやステーキなども用意されます。

寄付額は19万8000円と高めですが、18人の定員に対し、すでに半分以上が埋まったといいます。

■平取町遠藤桂一町長:

「登山をして帰りに温泉に寄っていただくとか/二風谷のアイヌ文化の資料館に寄っていただく/経済効果も、多くの方が(幌尻岳登山に)来ることでさらに増えることも期待しています。」

■本吉智彦記者:

「日高山脈の中でも比較的登山道の整備されたアポイ岳、いまは花の盛りということで登ってみたいと思います。」

太平洋沿岸の様似町にあるのが標高810mの「アポイ岳」です世界的にも珍しいカンラン岩が隆起してできた山で80種類ほどの高山植物があるそうです。

■本吉智彦記者:「登山道のまわりには、たくさんの花を見ることができます。

こちらにも小さくて黄色い花がありました」たくさんの白くて細い花びらが広がる「アポイアズマギク」ピンク色のハートの花びら「サマニユキワリ」など名前が示すようにアポイ岳固有の花もあります。花は、例年だと来月くらいまでが咲いている種類も多いそうで今が盛りです。

アポイ岳の魅力は、花だけではありません。

眼下に広がる太平洋や、広大な山林、日高山脈が連なる雄大な眺めも、登った人へのご褒美です。アポイ岳には、高山植物の鑑賞などを目的に、年間7000人くらいが訪れているといいます。

アポイ岳の自然保護にも携わるのが、山岳ガイドを務める田中正人さんです。

田中さんたちは、植物の保護のため、登山道に立ち入り禁止のロープを張るなどの活動をおこなってきました。

■アポイ岳ファンクラブ田中正人会長:

「人がいっぱい来てもらえることは大変、町にとってもいいことですし、それは期待しているんですけれども/あまり来られても自然を破壊する行為につながらないとも限らないので、パトロールしながら登山客と一緒になって(植物を)守っていければと思っています。」

また様似町には宿泊施設が少ないため、滞在先の確保も心配だといいます。

■田中正人会長:

「将来的には長期の休みとかで、こういう田舎にも結構来てくれる時期が、時代が来るんじゃないかと思います。その時には、宿泊できるような施設もある程度充実しておかないと結構大変かと思っています。

」「日高山脈襟裳国定公園」の国立公園化まで、もうすぐ。

手つかずの自然を守りながら周辺のマチの活性化に、どうつなげていくのか、期待が高まっています。