これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「シニア世代の移住者の割合が高い自治体」をクローズアップします。併せて、主にシニアを対象とした移住セミナーと現地体験ツアーの開催数の順位も紹介。シニアの移住者が多い地域やシニア歓迎の地域はどういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。

シニア移住のイメージイラスト

 弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。

【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 〜 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。

掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号

【シニア世代の移住者の割合が高いランキング】

シニア世代の移住者の割合が高いランキング
※算出方法:2023年度(2023年4月1日から10月末時点)の60歳以上(子育て中の世帯を除く)の移住者数(2023年10月末時点で移住済み)÷人口
※小数第3位以下を切り捨て

温暖でほぼ雪なしの地域がシニアに人気

 2023年度(4月1日から10月末現在)における人口に対するシニア世代の移住者の割合をランキングしたのがこの表で、東日本に多いという結果が出ています。ただ、海沿いもあれば、雪国もあるので、自然環境などを細かくチェックする必要がありそうです。

第1位:福島県浪江町(なみえまち)

「定年後は温暖な田舎で暮らしたい」と望むシニアは少なくありません。それにピッタリなのが第1位の福島県浪江町。太平洋岸の請戸(うけど)漁港が福島県最東端に位置し、気候温暖でほぼ雪なしの地域です。水揚げされる新鮮なヒラメやシラスなど豊富な海の幸も魅力的。「福島国際研究教育機関(F-REI・エフレイ)」の立地も決まり、将来的には国内外から多くのシニア研究者が移住することになりそうです。

ホーム - 浪江町移住ガイド

福島県浪江町で2023年9月に行われた移住者交流会
2023年9月に開催された移住者交流会。町ではこういう催しが行われ、親睦や情報交換の場にもなっています。

第2位:宮城県七ヶ宿町(しちかしゅくまち)

 江戸時代には街道沿いに7つの宿場があったことから、その名が付いた宮城県七ヶ宿町。昔ながらの自然が色濃く残っています。2021年からは住民交流会を開催して移住者同士の交流、地域住民との交流も盛んです。1年を通して四季の移ろいが感じられる本当の田舎に住みたい、というシニア世代から人気を得ているようです。

七ヶ宿町移住定住ポータルサイト「しちかしゅ暮らし」

宮城県七ヶ宿町への移住を支援する拠点「七ヶ宿くらし研究所」
七ヶ宿への移住を支援する拠点「七ヶ宿くらし研究所」は、築100年の古民家が目印。移住者スタッフが「住まい」も「仕事」も相談者と同じ目線でサポートします。所内のカフェでリラックスしながら相談もできます。

第3位:長野県御代田町(みよたまち)

 新幹線の駅がある軽井沢町と佐久市に接している長野県御代田町は、デザイナーやクリエイターなど芸術に携わる方も多く移り住んでいます。カフェやギャラリーを開業した移住者も多く、第二の人生を自営で切り開きたいシニア世代にとっても魅力的な環境。町内には19の自治組織があり、お互いに助け合いながら暮らしています。

みよたに移住・みよたに引っ越し | 御代田町

群馬県嬬恋村、長野県軽井沢町、小諸市及び御代田町の境にある標高2568mの世界でも有数の活火山である浅間山
群馬県嬬恋村、長野県軽井沢町、小諸市および御代田町の境にある浅間山は、世界でも有数の活火山です。御代田町のどこからも見渡せ、四季折々にその美しい景観を楽しむことができます。

第4位:福島県金山町(かねやままち)

 高齢化率が約58%と全国でもトップクラスの福島県金山町は、2022年に「金山町移住支援センター」をオープンして専任の移住コーディネーターが対応しています。全国有数の豪雪地帯でもありますが、雄大な大自然のなかを大人気のローカル線・只見線が通る姿はまさに絶景。二重カルデラ湖の沼沢湖、珍しい「天然炭酸温泉」などがあり、昔からシニア世代の移住希望者に人気を得ている地域です。

福島県金山町移住情報サイト「じねんと」

福島県金山町では、いつまでも元気に作業するシニアが多い
福島県金山町では、いつまでも元気に作業するシニアが多くいます。

福島県金山町の只見川沿いの集落。日本の原風景のような絶景が広がる

福島県金山町の只見川沿いの集落。日本の原風景のような絶景が広がっています。

【主にシニアを対象とした移住セミナーの開催数が多いランキング】

主にシニアを対象としたセミナーの開催数が多いランキング
※算出方法:2023年度の主にシニアを対象とした移住セミナーを開催、または開催を予定している数(オンライン開催を含む)。

 移住セミナーとは移住希望者が集まり、自治体の担当者から地域の説明を受けたり、先輩移住者の声を聞いたり、個別の移住相談にも対応してくれるもの。コロナ禍以降はオンラインセミナーも各地で開催されるようになりました。上の表はオンラインおよび開催予定を含む移住セミナーの回数をランキングしたもの。東北から四国・九州まで盛んに行われているのがわかります。

第2位:長野県箕輪町(みのわまち)

 シニア向け移住セミナーの開催が15回で第2位になった長野県箕輪町は、昨年度のアンケートでは14回で第1位だったまちです。オンラインを含めてセミナーは毎月開催しており、20代〜70代が参加。シニアも参加可能なセミナーも企画しています。空き家購入後の改修や片付けに関する補助制度には年齢制限がなく、近年は幅広い年代層が移住しています。この町に移住したシニアは畑で野菜やリンゴづくりを楽しんだり、地区のお祭りやサークル活動にも参加しているそうです。

 町では中高年向けの「健康づくり日本一の町」を目指した「みのわ健康アカデミー」という取り組みを行っていて、栄養士や健康運動指導士などのスタッフの指導を受けながら、トレーニングや健康について学んでいます。この十数年の平均値では、卒業生は腹囲マイナス3.5㎝、体重もマイナス3kgの減量に成功。セミナーに参加して、町の取り組みを知るキッカケにするといいでしょう。

みのわ町移住定住応援サイト

長野県箕輪町の移住セミナーには、シニアの方も多く参加している
年齢制限を設けずに開催している長野県箕輪町の移住セミナーにはシニアの方も多く参加しています。

【主にシニアを対象とした現地体験ツアーの開催数が多いランキング】

主にシニア世代を対象とした現地体験ツアーが多いランキング
※算出方法:2023年度の主にシニアを対象とした現地体験ツアーを開催、または開催を予定している数。

 現地体験ツアーとは自治体が日程を設定し、その市町村の暮らしを実際に体験してもらうもの。コロナ禍ではオンラインでプログラムを組むところもありましたが、移住前には現地まで足を運んでもらうのが基本です。それによって地域のよさをじかに知り、病院やスーパーなどの生活環境も知ることができるからです。野菜の収穫や蕎麦打ちといった体験メニューや先輩移住者との交流、物件見学などがツアーに含まれていることも。また、交通費や宿泊費を補助する自治体もあります。上の表は主にシニアを対象とした現地体験ツアーの開催数をランキングしたものですが、年に10回以上も手がけているところは少数。応募に年齢制限を設けていないところは基本的にシニアもウェルカムなので、そのサインを見逃さないようにしましょう。

第1位:長野県飯田市(いいだし)

 南アルプスの美しい眺めがあり、雪が少なくて暮らしやすい長野県飯田市が27回とダントツで第1位でした。飯田市は移住セミナーの開催数でも第4位と、移住希望者への情報発信に力を入れているのがよくわかります。市では、こうした催しには参加年齢を限定していないため、平日の昼間はシニアの参加者のほうが多いそうです。シニア向けの求人も多く、移住者を対象とした支援や移住体験の補助なども年齢に関係なく受けられます

 飯田市では農家の手伝いをするワーキングホリデーが盛んで、それをキッカケに移住して農的暮らしを始めた人が少なくありません。また、自然エネルギーや森林資源の活用を普及しているNPO法人の仲間入りをしたり、山岳会に入ったり、野菜づくりを教えてくれる農家との付き合いを楽しんでいるシニア移住者も多いところです。女性同士の交流も盛んで、ご近所でお茶会を開いて会話を楽しんでいるそうです。

結いターン移住定住推進課 - 飯田市ホームページ

長野県飯田市に、プルーン農家として新規就農した移住者さん
長野県飯田市に、プルーン農家として新規就農した移住者さん。



 人口減少対策から若い世代や子育て世代の移住促進を重視している自治体が多いことは事実ですが、地域社会に貢献しているシニアもたくさんいます。移住の動機や目的を移住相談の担当者に素直に伝えれば、ここで紹介した以外のシニア歓迎の自治体とも巡り会えるはずです。